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異世界だろうとのんびりと  作者: ダルマ787
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー第四巻ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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第1話 裏から表へ

第一回編集(2022/12/3)

誤字脱字の修正、文章の修正、文章の追加、ふりがなの追加、言い回しなど編集しました。

ナカムラタダシという少年の来訪から大事件が発生し、過去類を見ない緊迫感を聖騎士団国家(セントクロス)は迎えていた。


聖騎士団国家――聖騎士を育成する機関として、とある大国の一部として存在している。国としては属しておらず、並みの小国よりも広大な土地に、戦力でさえ上をいくその機関は中心を学園としその周りに街が存在している。


その街に住む者でさえ元聖騎士団国家の出であり、一人一人が戦力となる。

ただし、聖騎士になれなかった者、もしくは聖騎士団国家の下、暮らしていきたいと思う者達が当時の地位を捨て暮らしている為、基本的に学園の情報は流れてこない。


だから、学園内で何が起きているかまではわからない。


それでも、今回ばかりは少し違っていた。


外からでも分かる防御壁が展開され、中で何かが起こっている。


だから、街の住民は武器を持つ。


その壁に背を向け、万が一でも危機が訪れない為に。


学園の内部のことは意識には置かない。


なぜなら、聖騎士団国家最高責任者とし、学園長の座に着いているクライブ・イェールが張った防御壁だからだ。


中は問題がない。


それに心配したところで中からも外からも出る事は叶わない。


加えて住民はもう生徒ではない。


だから、守られる存在でもない。


守るべき対象は自分たちであり、未来ある生徒であり、わが子なのだから。



学園と外とを遮断したイェールは、突然訪問してきた彼女にいつもの調子で話しかける。


「誰の影響かと問うた方がいいのかしらね?」


彼女が身に着けている防具がカシャリと擦れ合う。


自身に与えられた役割の都合上、音がなるような、ましてや速度を重視した格好とは幾分離れていた。

それゆえに、元とはいえその姿は価値の高さが伺える。


「あなたが【影】として働いてくれたのは本当に助かっていたのだけど、残念ね」


【影】すなわち諜報活動に加えて、元々の性格も相まって口数は多くない彼女は何も言わない。


それでもその真意は確かにイェールには伝わっている。


もしかすると、こうなることも予期していたかのように。


「教員の方々は【内外を遮断する壁(セヴァーオール)】の維持と監視を任せてありますし、今回の事案に関して【影】としての役割がないのだから、別に構わないのだけれど」


イェールは自身の元を離れる者に、やきもちを抱くような口ぶりで頬を膨らませてみせる。


「感謝しております」


【影】であった彼女は口を開き、最初に言葉にしたのは感謝の念。


「ふふ、ま、それはお互い様なのだけどね。それに初めからそういう約束、その時が思っていた形とは違っただけのこと」


イェールは留まらせるようなことは言わない。


ひな鳥は巣立ち、古巣に一時身を寄せていただけだった。


【影】であったナナカミラは腰に掛けていた剣を抜き掲げる。


和やかな表情を真剣なものにし、イェールは宣言する。


「【戦場の戦姫(ワルキューレ)】部隊聖騎士が一人、ウォータリー・ナナカミラ。あなたを【影】の任から解きます。幾久しく時もその覚悟の上、進みなさい」


その言葉を胸に抜いた剣を鞘へと戻す。


背を向け、剣を交えなければならない相手に向かっていく中で、ただの一人として立場を戻したナナカミラは、一つだけ訂正しなければならないことがあった。


「元、です」


「ふふ、いいではありませんか、心はいつまでも、でしょう」


「隊長がそう思っていません」


それはどこか寂しそうでもあった。


それからは、足を止めることもなく学園長室から出ていく姿をイェールは見送る。


二度と戻ってくることはない。


それはいつでもそうだ。


聖騎士団国家か育成機関であるかぎりは。


「さて、次のひな鳥(わが子たち)はどこまで成長してくれるかしらね」



ここから四巻目に突入いたします。


末永くお付き合いください!

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