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異世界だろうとのんびりと  作者: ダルマ787
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー第三巻ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
95/243

第32話 閉幕が開幕

第一回編集(2022/3/24)

誤字脱字の修正、文章の修正、文章の追加、ふりがなの追加、言い回しなど編集しました。

悩むことが馬鹿馬鹿しく感じる盤面展開に、俺はもう虫の息である。


アルに着いていた『封源の輪』を外してやると、イラついた後には、と勝負しろだの吠えられる。


いよいよ俺は感情を殺し、今後の話に反らした。


一応、アルと金髪カールの少女との勝負はついているし、持っていた本も回収し終えている。


意外にもその間、金髪カールの少女(名前を……忘れた。)は大人しくしていた。

『封源の輪』がつけられたアルに負けたのがよっぽど応えたのだろう。


声を掛けるのが躊躇われたのもあったのだけど、アルが気にした様子もなくあっさりと本を奪ったのでタイミングがなかった。

加えて、申し訳ないけど俺にその余裕がなかったのも大きかった。


「くそっ、結局お前の正体どころか何もわからなかった……」


まーだ言ってるよ。


「まー、収穫がなかったわけじゃない。言っとくが俺はまだ強くなるぞ」


お好きにどうぞ。


「これでお前はここの生徒か」


やっぱりアルもそう思うのか。


「まぁ、結果よかったんじゃねぇの?」


「何が?」


「いっちゃなんだが、これで一位だろ。弱すぎる」


「こらこらこら」


おいおいおい、と金髪カールの少女の目の前ではっきり言う事か。

だいたい『封源の輪』で力を制限されていたにしろ、アルは聖騎士だろ。

その見習いでもある生徒なんだから、仕方ないだろうに。


年功序列が通用しないのは承知の上だけど、気遣いは必要だと思うけどな。


そして、言われた当人は、


「何をいっていますの? 一位……?」


脱力しながらも、アルの言っている意味に疑問の顔を浮かべる。


そんな事を気にした様子もなく、アルは金髪カールの少女の目の前に立ち、あたりのギャラリーに聞こえるように言い放つ。


「お前だけじゃない。これだけ騒ぎが大きい中、誰一人として俺の正体に気づいていない。なにより、甘えが過ぎるんじゃないか。学園長であるイェールが動いていないから、学園内は安全だと思っていないか? 俺が侵入者だとは誰も思わないのか?」


言われてみれば、アルの存在は秘匿されている。

だから、俺たちはここの生徒の制服を盗んでまで正体を隠している。


だから気づかれない事自体は俺たちの功績だといっていい。


しかし、ここは、世界が認める聖騎士を育てる機関。

あのレナやアンさんを排出しているにしては、事がうまく進みすぎている気もする。


「これだけ言っても、理解できていねぇ」


ギャラリーから、文句の一つも出てこない。

それはまるで、それを認めているかのような沈黙と、そもそもの意味を理解出来ていないとでも言っているようで、虚しささえ感じる。


たぶん、この中でもっとも理解できていないのは俺だろう。

それでもアルが何を伝え、何を言いたいかは理解できている。


そして、それを教え、育てるのは俺たちの役目ではない。


「いこっか?」


それはアルなりの激励か、自分勝手に巻き込んでしまった少女への礼のつもりなのだろう。


だから、俺は目の前で必死に悔しさに歯を食いしばる少女を目の前に何も言わず、この少女が起点になってくれることを信じ、その場を後にすることしかできない。


きっと、学園長もそのつもりでこの少女に本を預けたはずだからだ。


「ふんっ」


悪者を演じているのか、ただの本心からくるものなのか、最後まで悪態をついたアルの背中を押しながら、俺はこの物語の閉幕を感じていた。


――のだが、


「――ッ⁉」

「――ッ⁉」

「――ッ⁉」


直後に起こった緊急事態のサイレンがうるさく鳴り響き渡る。


終わりの雰囲気に似つかわしくないけたたましいサイレン。


その緊張と緩和と緊張に誰もが呆然と立ち尽くすことになった。


さらに事態は続く。


「なんだあれ?」


訓練場から見える外で、何か大きな膜が空を覆っていく。


「イェール様の防御壁……」


金髪カールの少女が正体を口にした後、ノイズが耳に届く。


そして、


『緊急事態につき、全ての制限を解く! 我が校に侵入者、宝剣『ダモクレス』が持ち出された! 繰り返す――』


ミツナさんの声で何度となく、放送が繰り返される。


「このタイミングで泥棒かよ」


あちこちから、「初代勇者様の剣が……」など聞こえて来るが意味わからんので放っておく。

しかし、この学園って落ち目なんじゃないかと俺は呆れていた。


「どうするアル? この状況じゃ俺たち邪魔になるよ」


「だな。俺達には関係ない」


まるでその発言がフラグかのように、放送が決定的な犯人の名を告げた。


『宝剣を持ち出した者はっ、【大帝国ネルギ=ヌートリションが聖騎士、ドラグニクル部隊隊長、アバレン・アレク】っ』


――――…………。


「ん?」


俺はアルの顔を見る他なかった。


「……、なんであいつが……?」


「うわっー、ないわー」


事情は知らないし、アルの表情からきっとアルは無実なんだろう。

だけど、無関係とはいかなくなったはずだ。


だから、俺はアルの肩に手をやる。


そのタイミングに合わせたように、


『次いで、協力者に同じく【大帝国ネルギ=ヌートリションが聖騎士、ドラグニクル部隊隊員、ハイ・アルフォナインも確認】』


俺は口に手をやり笑いを堪える。


ミツナさん、それはひどいっすよ、ぷぷ。

秘密裏とはいえ二人を客として招く形をとっていたのに、ぷぷ。


よし、ここは、弁解ぐらいはしてやろう。

この子は何も知らなかったようですよと、口添えぐらいは俺にもできる。


俺は静かにアルの仮面に手を伸ばし、外してやる。


アルは抵抗などしない。

事態の収拾が脳で追いついていないからだ。


これで逃げ隠れするなら、余計に弁解の余地がなくなるからな。


アルの顔が明かされると、さっきまでいたギャラリーがざわつき始める。


顔を隠していただけあって、アルも中々有名のようだ。


「一緒に行こう。抵抗は余計な災いを呼ぶ」


この振る舞いが、アルにとっていい方向に流れればいいと本気で思いながら、アルの背中を押すように手を置いたところで、最後のアナウンスが放送された。


『そして、ジャンオル・レナンの名を語り、この学園に妙な噂を流した者、ナカムラタダシなる者も協力者だと判断された! よってこの三名を危険人物とし、捕縛対象とする! 尚、生死は問わない! 聖騎士団国家の名のもとに、力を見せよ!』


次の瞬間、雄叫びと共に、あちこちで源素が溢れかえった。


俺は思いっきり空気を肺へと送り込む。



「なぁんでやねぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっっっっ‼」



雄叫びにも負けない、俺の叫びが天高く響き渡った。


ここまでお付き合いいただきありがとうございます!


これにて『異世界でものんびりと』の三巻が終わりとなります。

相変わらず、詳しいことは活動報告書に書かせていただくとしまして、興味のある方は覗いてみてください。



毎度、同じような文言とはなりますが、

登録、評価、いいね、誤字脱字報告、本当にうれしく、有難い気持ちで書かせていただいております!


そして、残念ながら、この作品はまだまだ続きます! 

末永くお付き合いいただけると幸いでございます!


では、次回は四巻でお会いしましょう!

よろしくお願いしまーす!!


読まなくても平気な活動報告追記しています(2022/3/24)

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