第25話 誰の所為?
第一回編集(2022/3/24)
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アルは幾度とないアピールをしていた。なのに、なぜかすぐに応答がない。
一瞬、タダシの正体がバレ、そっちで戦闘が起きているのかとも思案する。
しかし、戦闘らしき気配がないことに、別の事態がおきていると考えを改めていた。
「(だけど、なんでだ。間違いなく一人は動いた。なのに他の動きが感じ取れない)」
アルはアレクに着けられた腕輪を見る。
源素の放出量を制限させられる腕輪。
しかし、探索や察知の類は苦手とはいえ、最低限の気配は源素に頼らなくてもできる。
「こっちの所為か……」
適当に盗んで着ている制服が侵入者としての認識を植え付けられないでいる。
「そう考えれば……」
そもそも、本当に侵入者がいれば、学園長であるイェールが動かないわけがない。
だから、生徒達も珍事程度の認識が生まれるのは当然である。
であれば、なぜ学園一位は動いたのか。
それは自身に置き換えてみれば簡単なことだった。
「あれだけの索敵に興味が湧いたか」
タダシのけた外れの索敵範囲に実力があればあるほど気にはなる。
「どうするか……」
そこまで考えると、その先は難解だった。
行く末の対象者に、わけのわからないタダシという存在がいる。
その所為で予測ができない。
「…………」
元はといえば、なぜこうなった。
アレクが興味を持ったのはただの少年ではない、あのレナンが推薦人になったからだ。
そして、その少年を一目見ると立場も忘れて勝手な行動をした。
そして、それがすぐには叶わず、帰還後そのお咎めを聖騎士団全員が受けた。
さらに一番下っ端だったアルは【ドラグニクル】の面々にアレクの監視を言いつけられた。
ただ監視を言いつけられたその日には、また脱走計画を聞かされた。
当然、その秘密を公にしてでもアレクの行動を制限するつもりだったのだが、アレクはすでに聖騎士団国家の主でもあるクライブ・イェールと口約束とは言え、約束事を結んできているという。
そうなると、単純に止めるだけでは国際問題になりかねず、事を公にして自他国に国の最強戦力がいないという情報を流すわけにもいかない。
そんな板挟みの葛藤する日々を過ごしていたある日、その日は唐突にやってきた。
悩み多き日々の疲れをとる為に就寝していると、怪しい気配に目を覚ました。
途端、
「一報がきたっ、完璧なタイミングだ!」
目をキラキラさせ、すでに出国する準備を整えたアレクは、口封じのためにアルの寝込みを誘い腹に一発。
そして、目を覚ましたころには、国外に連れ出されていた。
しかも、いつから計画していたのか、礼式に着用する鎧一式をアルの分まで用意し、馬車の中。
そのときアルは悟った、聖騎士クビだなと。
そんな数日前の事を思い出し、怒りが湧いてくる。
これは誰の所為だ?
全部、タダシが悪いのではないかと。
だから、さんざんのアピールにようやく参上した学園一位に、仮面越しから八つ当たりの睨みを利かせる。
「あなたですのね、さっきの索敵は。制服を着ているところ、うちの生徒のようですわね」
「(ちげぇよ、うすのろ!)」
「例え優秀だとしても、先ほどの子供といい、おこちゃまには躾が必要ですわ!」
イライラしている所に、容姿の罵倒が簡単にアルの何かをギレさせた。
「決めた、もうっ、本のことなんぞ知るか! てめぇもぶん殴るっっ!」
もう、アルの瞳には金髪カールの少女アミラの腰にぶら下がった本は映らない。
元凶ともいえる忌々しいタダシの姿だけが、アルの闘志に火をつけた。
そんな逆恨みにも似た感情を向けていられているとも知らず、
「へっぶっしゅん!」
くしゃみと共に急にくる背筋の悪寒に、タダシは首をかしげているのだった。
二月に入れば更新頻度が上がるはずです!
……きっと。。。
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