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異世界だろうとのんびりと  作者: ダルマ787
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー第三巻ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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第22話 説教

第一回編集(2022/3/24)

誤字脱字の修正、文章の修正、文章の追加、ふりがなの追加、言い回しなど編集しました。

金髪縦ロールの少女はすでにアルが逃げた先を見ている。


「違反者……と考えるのが妥当ですわね。気配を隠しきれていない」


呟かれるその言動にきっとアルはわざと見つけやすいようにしているのだろう。


「あなた、逃げた人物の顔を見ました?」


下手なことを言ってバレては、囮になったアルに何を言われるかわからない。

俺は殴られたショックを理由に首を横に振ることで何とか誤魔化す。


「ところで――」


内心ぎくりと心臓が鼓動を早め始めた。


「なぜ殴られているのですの?」


確かにアルとの関連を誤魔化すという理由はあるものの、他にも手段はありそうなものだ。

当然、その理由を素直に話すわけにもいかず、俺は再び首を横に振る。


「理由もなく殴られた……?」


しかし、その安易で妥当な選択が金髪縦ロールの少女に疑問を残させる結果になった。


「(やっべ)」


そこから答えに辿り着けるとは思わないが、真実を知っている分、小心者の俺の心臓は高鳴りを静まることはない。


「まぁ、いいですわ」


そういって難を逃れたが、どこか金髪縦ロールの少女がぴりついた雰囲気を醸し出している。

それが何か、少ない情報を得ようと俺の本能が働き始めた。


一番特徴的な金髪をカールさせ、制服の上からでもわかるスタイルの良さに加え、豊満な胸が自己主張を強めている。

さらに気品漂う(ただよう)佇まい(たたずまい)は、その上流階級の高さを表しているようで、実年齢的には年下だというのに、普通の会話をしてもきっと俺は緊張してしまうだろう。

なぜって、権力者って存在だけで怖いじゃん。


そんな俺の観察は少女の腰あたりまで来たあたりで、停止した。


「さっきからなんですの? 人のことを嘗め回すように見るなんて、子供といえ容赦しません事よ」


「え、あ」


エロい目で見てたんじゃないっ! 

思わずそう言い訳したくなる。

なにより、そういう目で見ていたなら、まず胸で止まっている。

その証拠にそこはすぐに視線を落としました!


って、そんなことどうでもいい。

それよりも、少女の腰部分にひもで括り付けられている本がそこにはある。


「え、あ、その」


ちくしょう、人見知りと脳みその回転の遅さが言葉を出さねぇ!


「な、なんですの……?」 


あ、その反応は気持ち悪いものを見るときの反応ですね、わかります、はい。

子供の姿でも、今の言動は確かに気味が悪いですよね。

挙動不審の反応って年とっても変わらないんだよ。

でも、二十八歳の成人男性の姿でするより、マシでしょ。

だから許してください。


「…………」


悲しいかな、少女の反応のショックを受けたおかげで緊張が緩和されていく。


そこは成長だ。

昔なら、さらなる焦りに挙動不審が度を超える。

しかし、人生経験が俺に新たな対応を学ばせている。


そう、目の前の存在をいったん忘れてしまうのだ!


そんなわけで、いったんゆっくり考えようと思う。


とりあえず、言葉は選ばなければならない。

素直に、本に対して興味を持った反応は命取りになる。

それこそ、学園長がこの少女に依頼したもので、本を守っているとしたら、自らそれを狙っているといっているようなものだ。


そもそも、アルの言っていた本を持つ存在は可能性の話だったはずだ。

だとしたら、この少女が本を持っている理由が他にあるかもしれない。

見た目と違って文学少女の可能性だってある。

だとしたら、俺はこう聞くべきだと答えを得た。


「――あなた話を聞いているのですのっ!」


「へ?」


その前に、純粋な怒りを表しいまだひっくり返っている俺の目の前に少女の顔がある。


「へ? じゃありませんわっ! 急に話さなくなったと思ったら、無視を続けるなんて、どういうつもりですのっ⁉」


しまったこういう状況を極めすぎてトリップしていた。


「す、すいません……」


「ただでさえ、殴られていた相手を追うこともせず、ただ転がっているなんてこの学園の恥以外何物でもありませんのに! あなた、どういうつもりでこの学園の生徒を名乗っているのですの⁉」


名乗ってないですし…………、


「だいたい、この場にワタクシ以外誰も駆けつけていない!」


それは俺の所為では……、


「知っていますのっ、巷では今期の生徒が一番惰弱だといわれているのを」


知らない……、知る必要がない……知りたくない、どうでもいい……。


「だいたいですわね――」


その後も、うっ憤をはらすようにマシンガン説教を喰らわされ続けること数分、俺は色々とどうでもよくなってきた。


そもそもこの子アルを追わなくていのだろうか。きっとアルも足を止めて待っているだろう。


「――だから、」


「あの、さっきの人追わなくていいんですか?」


もう勘弁してほしいと、俺はアルを差し出した。


が、一瞬の静寂の後、


「どうしてあなたがそんなことのんきに言えるのですのっっっ‼!」


びっくりするほど怒鳴られた。


怒られるの苦手だけど、もはや他人事だ。


「文学少女ですか?」


「――っ、何を聞いていたんですのぉっっっ‼」


火に油をとはこのことだ。


「だいたい、あなたには関係のないことですわっ! これは学園長から一日預かってほしいと依頼されただけですわっ!」


「(あー、そういう感じで)」


…………アル君、あなたの予想はびっくりするほど的中しています。

だからこそ、僕にはどうしていいかわかりません。

この心の手紙が届くなら、どうか助けてください。

僕のかわいい脳みそちゃんは幼児退行で現実から目を背ける事をやめることができないようです。

だから、僕は逃げようと思いました。

そんな僕をお許し下さい。


――ドガァアアアアアアアアアアアッッッ‼


まるで、その悲痛な心の手紙が届いたかのように、アルが逃げた方向から破壊音が響き渡る。


「――なんですのっ⁉」


ようやく、少女の意識が俺から外れて、破壊音が聞こえた方向へ視線を向けた。


「まさかっ、さっきのは違反者⁉ 舐められたものですわ。こので勝手が聖騎士団国家(セントクロス)で勝手が許されると思って! 見せてあげますわ。いくら他の方々が惰弱だと思われようとも、(わたくし)、グラインド・リキュール・アミラがいれば、現在の聖騎士団国家がどれほど優れているか知らしめて見せますわっ! そうですわ、あなたもついてきなさいっ、その根性も直して差しあげ――」


数秒の隙は、逃げるのに十分な時間を稼いでいる。


「――っ、どこに行きましたのぉおおおおおっっっ‼!」


そんな少女の怒りが木霊する中、二度目の破壊音が響き渡ったのだった。


時間がかかっておりますが、まだまだ続きます。


よろしくお願いいたします。



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