第20話 『封源の輪』
第一回編集(2022/3/24)
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中央訓練場。
正式名称は知らないが、生徒達が戦闘訓練で使用する一番大きい施設。
その三階の吹き抜けから俺とアルは今まさに訓練をしている生徒たちを眺めていた。
「思っていたより、質が悪いな」
「質?」
どういう意味かと尋ねるとアル……、敬称をそう呼べと言われ親しみを込めてそう呼ぶようになったのは数時間前。
呼びやすくなって俺は気軽に呼び方を変えた。
「まぁいい、色々確認しておこう」
「無視⁉」
大人びたアルは存外冷たい。
何かと俺に対して敵対心を表すことがある。
まぁ、一度ドリアスにいいようにやられているから仕方がないのかもしれないけど。
「そうだな、この制服どこから盗んできた?」
「どうでもいいことにっ、気を取られるな!」
「いやいやいや、どう考えても気になるでしょ」
昨日の晩、突如俺の部屋に現れて渡されたこの学生の制服を手渡された。
俺の今とアルの体格にちょうどいいサイズこの学園の制服から、生徒の年齢層の厚さが伺える。
「ここの生徒達に俺たちの姿は気づかれていない。だったら、まずは見た目を変える必要があるだろ!」
「それ、盗んでいい理由にならないんだけど」
「あ? じゃあ、あのおんぼろの服で歩き回りてぇのかよ!」
く、一応少ないお金で購入した立派な服なのにっ。
確かにシルクのように肌触りが良くて、着ているだけで上流階級にレベルアップしてしまうのは認めるけど、だからといって人様の服を着るなんて、それに盗まれた子は困っているぞ!
「どうせ支給品だ、大半はボンボンだろ」
なるほどと俺は手をポンと叩く。
気になることがなくなれば、本題に話は進む。
「試験の内容……、この手枷を外すおさらいだ」
三階の廊下はあまり人の通りが多くない。
戦闘訓練の練習を見るにしても近くで見る生徒が多いせいだろう。
おかげで秘密の話はしやすい。
「誰かが持っている歴史書を手に入れるだっけ?」
「そう考えるのが妥当だろうな」
そう言って一枚の紙を取り出した。
見せてもらったその紙にはこの学園の一部の施設が描かれていた。
「一つは書物館、もう一つはここだ」
それだけ聞けば書物館が妥当に感じるが、アル曰く本を借りてくるような簡単な試験内容ではないこと、そして、訓練場が描かれているのがおかしいということだった。
そうなると、
「でも、これだけの生徒の中から探すのってムリゲーなのでは? 本を持ってるって言っても常に手元に置いとかないだろ?」
「む、むりげー?」
あ、久々に通じない単語だった。
「無理難題ってこと」
適当に意味を説明し、脱線を防ぐ。
「し、知ってるしっ!」
それは無理があるだろ……。
「まあいい、それに関しては順当に考えれば心当たりはある」
「マジで?」
「ま、まじ、まじで……?」
「本当にって意味」
「知ってるっ!」
いや、もうそれはいいっての。
「歴史書って貴重なもんなのかな」
「いや、ありふれたもんだ。価値で言えば、相当低いし、手に入れるならその辺でも買えるだろ。いや、誰でも知ってるものだし、買うやついないから逆に手に入りづらいか?」
それは需要と供給の話。
「本そのものには意味はなしか」
「だから、おのずと誰が持っているかが明確になる」
俺にはさっぱりわからないけどな。
「現状、俺たちの存在を知っているのはわかるよな。だとしたら、その人間は省かれる。ついでに教員関係もおそらくないだろう」
俺は黙って話を聞く。
「おそらく、事情を知っている可能性が高いし、なにより、タダシの能力値からそれだと難易度が高すぎる」
「俺を入れたくないとか?」
「だとしたら、二度も試験をする必要がないだろ」
「あー、確かに」
「そうなると該当するのは一人」
「有名な人?」
アルが深いため息をついて、俺を哀れんだ目で見る。
さらに、何も言わずに答えを言った。
「きっと、現生徒最強に持たせている」
つまり学園一位。
「どっちにしたって難易度高くない?」
「だからこそ、俺まで巻き込まれたんだよ!」
恨めしそうに手枷をアルが睨みつけるが、それはきっと俺のせいじゃないと思う。
だってアルはそのことに関して怒りを露わにしても、この場にいない誰かを思い浮かべている素振りをしているからだ。
「でもこの手枷ってそんなすごい機能があるとは思えないけど」
鎖がついているわけでもない手枷は、ブレスレットと言われても不思議ではない。
一応、その説明も昨晩聞かされているのだけど。
「むしろ、気を抜くと源素がなくなるお前の方が変なんだよ!」
むむ、一応練習して無意識化でも普通の人のように源素を垂れ流しにしている。
「せっかくだし、試してみろよ。ここなら怪しまれることもないだろうからな」
そう言われれば俺は言うとおりにする。
いつものように身体能力を向上させてみる。
「あらら」
一応向上はした。
でも、これではレベル2までの身体向上はしていない。
せいぜい山で暮らしていた程度の生活レベルだろう。
「正式名『封源の輪』。源素の使用を制限する効果を持つ。一般的には牢獄されるような奴に使われる代物だ」
「厄介は厄介か」
これじゃあ、いざというときに逃げ足が速くならない。
文章が長くなったので、中途半端かもしれませんが、区切ります。
続きはできるかぎり早くUPします。




