第17話 物思い
アイミは与えられた部屋に感情が追いついていなかった。きっとタダシの件がなければ純粋に新たな一歩に胸を躍らせていただろう。
今までにない綺麗なベッドに倒れ込むように、体を預ける。
脳裏で考えられることは、医務室での後日談のさらなる話。
タダシには新たな試験が与えられていた。
「私はどうしたらいいんだろう……」
その試験にアイミは関わることができない。
できる事ならタダシの助けになりたい。
でもと思う。
そもそもタダシはこの学園に入りたいとは思っていないだろう。
じゃあ、なぜかと言われれば、理由は思いつく。
「私の為……」
それはタダシによる純粋なる善意。
「でも、それだけじゃない」
タダシは異世界ではアイミよりも年上だ。そのうえで、過保護のような振る舞いは決してしようとしなかった。それはアイミの自立の為に他ならない。
「この世界の知識」
アイミ自身、常識が足りない部分はある。
しかし、この世界の人間というだけあって、当たり前の事は当たり前として知っている。
しかし、タダシはそうじゃない。それを学びの舎で得ようとしていた。
全てを理解してアイミの感情に葛藤が起きる。
「やだ……」
だが、タダシにとってその知識はこの学園でしか得られないものではない。
「やだっ」
枕に顔を伏せ、その時が来る事を想像する。
「やだっ!」
それでも理解している。
きっとこのままではいけない。
タダシと離れていた数か月、目指すものは芽生え始めている。
「待っててくれるかな……」
決別の時は近かった。
本日12時にもう一話Upします。
活動報告も更新しました。




