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異世界だろうとのんびりと  作者: ダルマ787
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー第三巻ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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第5話 新たな道

第一回編集(2022/3/23)

誤字脱字の修正、文章の修正、文章の追加、ふりがなの追加、言い回しなど編集しました。



聖騎士団国家(セントクロス)親日国家、『十字国家団(クロス)』の通称ベルの塔に三人の冒険者がいた。


六角形で出来た塔には六つの窓がある。


「まぁ、仕切り直すならここからだよな」

「僕たちにとっての始まりの街」

「振りだしに戻るなら、都合がいいね」


ジオラル、カルバン、テトラ、各々思うところはある。


聖騎士団国家という世界屈指の騎士育成機関に入園し、三年という優秀な卒業記録をもち、それでも騎士にはならず、ならず者と呼ばれる冒険者の道を選んだ。


「実際の所、俺は自信があった。上がいるのは分かってたし、それでもそいつらにもいずれは辿り着くと疑いもしなかった」


塔から見える、二度と足を踏み入れる事が出来なくなった地。


「トントン拍子にBランクに上がって、ルーキーの中では頭一つ出た結果も出した」


街を眺望(ちょうぼう)できる塔には強い風が吹き流れる。

カルバンはハットを外し、テトラの修道服の帽子が風によって波を打つ。


「だから、原種であるアイミさんと戦うことにもなった」


結果は、何もできないという現実を叩きつけられた。


「冒険者になったあの時、いや、聖騎士団国家に入った時点で命は賭けてきた」


おそらく、それは『新しい波』でなくとも、一つの道を志した者が賭けてきたものだ。


「思い知ったよ。それだけでは足りないどころか価値がない」


同じようにカルバンが続ける。


「賭けてきたものが、こんない小さく見えるなんてね」


塔に吹き荒れる風がカルバンの手のひらに集まってくる。


「僕は、立場上必要以上の努力をしてきたつもりだった。でも、その努力はあくまで準備でしかなかった」


高等技術、誰もが簡単に習得できるわけでもないもの物も、ちっぽけなものに変えられた。


「すぐには超えられない……。だけど、必要なものは見えた」


手のひらの風が握りつぶされ霧散する。


「過信は……うん、していなかった」


テトラの脳裏に思い出されるタダシとの追いかけっこ。


「受け入れるなら、多い方がいい。きっと、今の私たちが三人がかりでもタダシにすら、追いつけない」


目に見えていたのは、仲間の二人の補助。


「どこかで、神の奇跡がある限り大抵の困難は乗り越えられると思ってた」


その困難は想定内、予定通りであった場合。


「運がよかった」


テトラの最後の言葉に三人そろって笑みを零す。


「ああ、そんな俺たちが話に入れない経験なんてそうなかったからな」


全世界の英雄の一人、ジャンオル・レナン、そしてその相棒であるアン・クラナディア。

その気まぐれで出会い、戦い、敗北し、土俵から降ろされた。


その土俵に立っていたのは、珍妙な少年。


「五年だ」


「例え異世界人で、おとぎ話の存在でも、聖騎士団国家を卒業できたとしても、タダシが卒業できるまでその時間は掛かる」


タダシの卒業は疑わない。


「だったら、その時間で私たちができること」


同じ位置から見えていた景色を背中にし、それぞれの窓辺に背中合わせに立つ。


「お互いに補っているだけじゃ足りない」


「お互いの命を守りあっていても足りない」


「お互いを高め合っても足りない」


それほど、頂きは遥か先。


「上の世界に入るぞ」


一つの壁はもう超えた、目指すはもう一つの壁のさらに向こう。


「五年後、また会おう」


その先で、同じ土俵に立つ。


「会わない代わりに、名前だけは聞かせてよね」


その土俵に立った時、自然と名は世界へと広がる。


窓辺の石垣に同時に足を掛ける。


「三」


「二」


「一」


カウントダウンと共に三人の冒険者は、一人の冒険者となって塔の天辺から飛び出した。


彼らは常識を捨て、新たな道をゆく。



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