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異世界だろうとのんびりと  作者: ダルマ787
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー第三巻ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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第4話 タダシ心の俳句

第一回編集(2022/3/23)

誤字脱字の修正、文章の修正、文章の追加、ふりがなの追加、言い回しなど編集しました。



砂埃の逃走事件が裏で噂になっている頃、恥ずかしながら戻ってきた俺は、アイミと横並びに案内人であるウォータリー・ナナカミラこと、カミラさんの後ろを歩いていた。


スタイルが良くスーツでの後ろ姿は、表現に困るほどぐっとくるものがあった。


「ふ~ん、ずっと聖騎士領域に入らないで、外で暮らしてたんだ」


俺の邪な思考に気づかれることなく、久しぶりの再会はもっぱら近況報告になる。


「うん、私がわかっている範囲で説明するとね。セントクロスは、中心を生徒の生活区、それを囲うように育成区画、さらにその周りに聖騎士区画、そして、今私たちがいる住民区って分かれていて、」


確かに外から見える聖騎士団国家(セントクロス)は全貌を見渡すことなどできなかった。

それも、今までに立ち寄ってきた町などが小規模だったと思い知らされる。


「住民区を超えちゃうと、卒業まで出てこられなくなるってことで」


「なるほど、それで待っててくれたわけか」

「うん」


「しかしあれだな、中に入っちゃえば他の街とそんな差はなさそうで安心した。もっとこう、厳重警備みたいな重い街かと思ってた」


あははは、と悪い想像が杞憂で終わったことを口にすると、アイミは少し表情を落とす。

それに疑問を浮かべると、察したようにカミラさんの説明が入る。


「住民区は元生徒たちだ」


登場以来の発言に思わず構えてしまう。

案内人という説明意外に素性がわからないが、アイミがこの都市に来てから、身の回りの世話はこの人がしてくれていたらしい。


口下手なのかと思いつつも、会話に参加してくれるなら人見知りとて会話はできる。


「ん? 卒業したら騎士じゃないんですか?」


「卒業出来たらな」

「え?」


俺は顎に手を置き考え込む。


よくよく考えてみたら、俺は元の世界の知識で考えていた。

単位をとり、ある程度の成績を取れれば卒業になる。

厳しい所でもそれのベースは基本変わらない。

しかし、聖騎士となるために学びに来ていたとしても、その水準を超えられなければなれるわけではない。


それは元の世界でもあったことだ。

たとえば、ボートレーサーや、騎手などの専門の生徒も全員が全員その道に行けるわけではない。


そうなってくると、


「俺たちなにしにここにきたの?」


そう俺たち……、少なくとも俺は聖騎士希望ではない。


「聖騎士団国家といえ、卒業した者が全員聖騎士になるわけではない。しかし、聖騎士団国家の出というだけで、道の幅は数多(あまた)になる」


つまりは就職候補が格段に上がるわけだ。


「ふ~ん」


とまぁ、ご存じのようにそれも俺には必要がない。

なにせ、俺は山に引きこもりたいからだ。

なので必要なのは、この世界での一般常識であり、かつ生活の水準を上げるための知識だったり、道具の確保方法だったり。

さらにいえば、この数か月で一般常識は多少なりと身につけたつもりだ。

なので正直、帰りたい。


そんな興味がないのを悟られたのか、アイミが誤魔化すように慌てて割って入る。


「そ、そういえばテトラちゃんとかはどうしたの?」


こういう部分も含めてアイミは成長したと思う。

だけどなアイミ、あいつらもセントクロスからしたら問題児なわけで、セントクロスの関係者であるカミラさんの前で話すには中々の地雷案件だぞ。


しかし、カミラさんは特に気にした様子もなく、黙々と歩き続ける。


「とりあえず、近くまではきて、旅立った」


「え、旅立ったの?」


「まぁ、正確には冒険者に戻るってさ。ついでに、住む山も探してくれるって感じ」


「そうなんだ。会えないかもとは思ってたけど、会いたかったな。一般的には早くても五年は掛かるらしいし」


「はい? 五年?」


聞き捨てならない単語が飛び出した。


「うん、平均卒業年数」


この世界での年数計算は元の世界と大して変わらなかったはず。

つまりは五年は五年ということだ。


「聞いてないぞ」


言ってはみたものの、そこまで驚きはない。

なぜなら、レナとの義理を果たし、必要なことが終われば、退学OKです。


「ふっ、そこまでもてばな」


ぼそっと、こぼれ出たその言葉を俺は聞き逃さなかった。


なんとなく、この人が俺たちをどういう目で見ているのかを察する。


しかし、歩くにつれ思うのだが、どんどん人の影が減っていく。


「これ、今どこに向かっているんですか?」


この都市に入ってから、ずっと心がざわついている。


「学園長室」


この都市の主ともいえる最高権力者のいる場所。

しかし、その肩書から校長室的な部屋に連れて行かれると思っていただのが、どう考えても裏道だよな。


「どう感じているのか知らないが、お前たちはあのジャンオル・レナンが推薦人だ。その事実を知っている者たちの目に留まれば、想像するまでもない」


それって……、


「面倒事は避けたい」


レナとアンさんの存在がすごいのは聞いてはいたが、急にそんなことを言われたら胃がきりきりと痛み出す。


しかし、恥ずかしながら遅刻しているわけで、いつ来たかなんて誰も知らないはずだ。


「あれだけ、目立つ入り方をしているからな。もう到着したことは誰でも知っている」

「目立つ……」


思い起こされる裏門での一人芝居。


「馬鹿、俺の大馬鹿野郎……」


近くの壁に手を着き反省した。


だが、希望はまだある。


「顔は誰も知らないですよね」


「時間の問題だ」


ですよねー。


「アイミ、今ならまだ引き返せると思うんだ」

「無理だよ」


「でっすよねぇえええええええええええええええええええ!」


ここで一句。


「『事なかれ 主義を持てしても 逃げ切れず』 字余り」


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