第2話 到着
第一回編集(2022/3/23)
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これまでと比べられるほどの門前でただただ立ち尽くし、見上げるばかり。
豪華と言える強固で馬鹿でかい門は人が押したところでびくともしないだろう。
「押す気にもなれないけどな……」
一人愚痴るように零した俺は、今までとは違う都市への入門方法に絶望を感じていた。
どうして誰も教えてくれなかったのだろう。
門兵はおろか、受付の窓口もありそうにない。
「もう諦めてもいい気がする……」
当初の予定より圧倒的に遅れて、セントクロスとやらに到着した。
現状どうなっているかはわからないけど、学園に入園する許可をもらっていたとしたら、大目玉をくらって当然の大遅刻。
「怒られたくない」
いきなり顔も知らん人に怒られるくらいなら、バックれてしまいたい。
それでもまだ悩み続ける理由は、一人の大人としての常識と、例え逃げた所で結局レナに追いかけ回されるに決まっているからだ。
だから、もう何も考えずに行き当たりばったりの勢いで嫌な事を済ませたいと覚悟を決めたのに、入り方がわからないってないじゃない。
門に手を当てため息一つ項垂れる。
「こんにちはースーパー遅刻しました中村です」
誰に言うまでもなく棒読みで独り言を漏らす。
当然反応はない。
「うぉおおおおおおお!」
もうやけくそだった。
押してダメなら引く取っ手もない。
中指の背を使ってノックなんて使用もんなら怪我をする。
だったら拳の外側を、両手を使って「開いてぇええ!」と滅びの呪文の前にやっていた少女のように叩きまくる。
鈍い音が数回で、鈍痛のみが空しく拳に降りかかる。
「いいんだなっ、もう諦めるぞ! 俺が悪いんじゃない! 町に入るのに空でも飛べってのか! なんの為にこんなドデカイ扉門つけてんだ! 巨人なのかっ、巨人が暮らしてるんですか! それとも、暗殺一家の観光名所なんていう気ですか!」
どんなに叫んでもその後に沈黙がやってくる。
もうこうなっては仕方がない。
かれこれ、一時間は頑張った。
中村正の冒険、学園編はここで終わったのだ。
こうして俺は、本気で踵を返してセントクロスに別れを告げた。
ところが、
『そこは裏門です、表に回ってください』
ノイズ混じりの声で、突如どこからか聞こえてきた。
俺はプルプルと震える。
「……もっとはやく応答しろよ」
今更俺の知らない方法に文句を言う気は無い。
だが、気づいてたんならもっと早く対応してくれたっていいじゃないか!
俺はここに来て、身体能力をレベル2にまで上げて、全力で表とやらまで走る。
「文句を言ってやる! 絶対に文句を言ってやる!」
固い決意を胸にようやく事態は進展したのだった。
2話、3話は連続投稿になります




