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異世界だろうとのんびりと  作者: ダルマ787
ーーーーーーーーーーーーーーーーー 第二巻 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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第10話 絶世の美少女

2021/5/27 軽度な(台詞の言い回し、誤字脱字)編集をしました。

アイミと一緒に不審者から逃げ、裏路地の片隅に息を潜めた。


辺りを探ってみてもどうやら追いかけてはいないようだ。


「やっと終わった……」


知らない町で一人になりたくないとは思ったが、あんな不審者のわけのわからないのと一緒にいたいとは思っていない。


そんな俺の心情など知る由もないアイミは、


「あれは誰ですか?」


なぜか怒りを露わにしながら、俺を問い詰めようとする。


「俺が知るわけないだろ。いや、強いて言うなら、変人だな」


不気味な仮面に素性を隠すような恰好。

もはや何一つ間違っていないと断言できる。


「女の子ならなんでもいいのかと思いました」

「声だけで女と判断したのか、まだまだ甘いな」


なぜ妙なとこで突っかかる?


「抱きしめられていた時に分かってたんじゃないですか?」

「知ってるか? 人って柔らかいんだぜ」


あれは装備に鉄板か何か入れている。

鎧か何か、じゃなければ、あの固さは人間の物ではなかった。


「って、そんなことより、早くジオラル達と合流しよう。んで、さっさとこの町から出るぞ」


それでも尚、訝しんだ目で俺を睨み見つけていた。


「なんなんだ一体……」

「ふんっ」


ふん、じゃねぇよ!


「言いかよく聞け」


こんな事でいがみ合っている場合じゃない。

あの不審者の動きは普通ではなかった。

できるだけ早く、この町を離れるべきだ。


その為にも、


「いいか、俺たちの引っ越しにジオラル達がいる。その理由は分かってるよな」

「一応……」


引っ越しを決めた際、いくつか話したことがある。


一つは、元いた山のような場所を探すということ。

そして、その拠点を探す前にこの世界で一番発展している土地を案内するということだった。


それは、生活の水準に関わってくる。


元々、アイミとジオラル、テトラにカルバンに出会わなければ、今も同じ暮らしをしていただろう。それはこの世界での俺の普通があの暮らしだったからだ。


しかし、宿での布団の一件もそうだが、この世界にも便利な道具が存在している。

どこまでかは分からない。

それでも、引っ越しをするとなり、新しい生活をするとなったら、知らなかった要素を埋め、さらなる快適を求める事にした。


そのために、


「俺たちの新しい生活に道案内がいる!」

「おれ、たち……?」


「こんなとこで、変態に関わっていられるかっ」

「うん……うん、うん! そうだよ、一緒に暮らすんだもんね!」


どうやら、俺の気持ちが伝わったようで、アイミの怒りが静まっていくのを感じる。


「そうだっ、ログハウスは目前だ!」

「おっー!」


これで、ログハウスの為に心が一つになった。


「でだ、」

「うんっ」


「良くわかないが、あの変態は俺を捕まえようとしてくる。だから、ジオラル達を探すのは任せたい」

「一緒に探したらいいんじゃないの?」


「いや、どうやらあの変態そこそこヤバイ」

「ヤバイ?」


最初の逃走を思い出しながら、危険性を新たにする。


「次捕まったら逃げられるか分からない」

「そう、なんだ……」


「だから、ジオラル達と合流して、町をでる準備ができるまで俺はどこかに隠れる。そのタイミングで俺を迎えに来てくれ」

「わかった。でも、その間見つからない?」


俺はアイミの一言に笑みを浮かべて見せる。


「我に秘策あり」




そう調子に乗ったのをとても後悔しています。


建物の隙間に挟まるように隠れながら、二度と調子には乗らないと決めた。


しかし、再び裏路地に身体能力を上げ距離をあけたものの、どうしてすぐみつかるんだ!


「くそっ」


距離をあけることはできる。

おそらくそれは、あの変質者が手加減しているからだ。

なぜ分かるかといわれれば、みつかったとしてもすぐには捕まえず俺がこうして逃げ続けられているからだ。


一定の距離まで近づくと、変質者は移動を歩行に切り替え辺りをきょろきょろと見渡して、俺を探している。


しかし、疑問もある。

距離を詰めてくるのであれば、そのまま捕まえてもいいはずだ。

そもそも、近づいてくるということはある程度俺の居場所を把握できているとも言いかえることができる。


じゃあ、なぜ変質者は俺を探すのか?


「あれ?」


ふいに、テトラに言われた事を思い出す。


『これほど近づいても気配がない人に会ったことがない』


「そうだ……」


俺はあの変質者を目視でしか見つけることができないが、テトラやジオラル、カルバン、そしてあの変質者は気配を察知することができる。

それがどれほどの物かはわからないけど、そもそも俺の気配はないとテトラはそう言っていた。


じゃあ、とさらなる疑問に結びつく。


テトラとの鬼ごっこの時もテトラの視界から逃れることは何度もできていた。

それなのに、テトラは俺を追いかけて来ていた。


それはなぜ?


考えてみればそれは簡単な事だった。


「テトラの奴、隠してたな」


身体能力向上の能力は当然、源素を使う。

そして、それは消費している。

だから、俺は動きを止める時に、能力も自然に使うのを止めていた。


つまり、能力を使っている間、俺の気配は存在しているということだ。


だから、一定の距離まで詰められると変質者は俺の気配を察知できなくなっていたんだ。


「それがわかれば……、いや無理じゃね?」


そもそも距離を開ける為に身体能力を向上させていたのだ。

通常状態の俺の足の速さで撒くのはもちろん、振りきることすらできない。


「隠れながらは……」


俺は俺の性格を恨む羽目になった。


逃げ場所に選んだ町はずれは加工場が立ち並んだ、人通りの少ない地域だ。

これなら人の目に着きにくいと選んだのだが、仕事をしている人間以外、道を歩いてはいない。

しかも、建物は整備された道を基準に並んでいる。


そんな中、移動するために道に出ればすぐに見つかるだろう。


「にしてもなぁ、」


すぐに見つからないだけで、建物の隙間を順に不審者が見ていけば再び見つかってしまう。


能力を使えば察知され、使わなければ逃げ切れない。

八歩塞がりここに極まり。


「これは参った」

「何が?」


「なにがっ――てぇええええええええええええええええええええええええええええっっっ!」


さらに、勘まで優れて(すぐれて)いるようで、こんな所に人はいないだろうと思われる隙間にいる俺を簡単に見つけだした。


「ちくしょう――」


すぐに能力を使い逃げ出そうとしたが、


「……あれっ、おいおいおいまじかよっ」


隙間は思いのほか狭く、動けない。


「うっ、くっ、このっ、……やばい」


血の気が引いていく。


「抜けない……」


捕まる以前に隙間から抜け出すことができなくなった。


「ふんっ、ふんっ、ほいやぁあああああああ」


その様子をじぃっと変質者が眺めている。


「ぅう」


まさかこんな情けない姿で終わりが来るとは思わず、泣きそうになる。


「そうだっ」


石化から抜け出した要領で建物を壊せば……いや、無理だ。


思い出される職人による激。


怒られたくない!


だとしたら、俺ができる手段は一つ。


合っているのかわからない変質者に目を合わせる。


「助けてください!」


正々堂々懇願した。


「うん」


なんだかんだ、追いかけてくる事以外では優しい変質者の手が伸ばされ俺の腕を掴むと、強く引っ張られた。


「あだだだだ」


雑ではあったが、意外にもレスキュー隊が出動するような事態ではなかったようで、体は簡単に隙間から抜け出すことができた。


大事にならなくてよかったと心の底から何度して俺は目の前に変質者に言わなければいけない。


「ありがとうございます」


丁寧なお辞儀をしつつ、元は変質者が原因だけどなと心にしまう。


「うん」


どう思っているのかわからない淡白な返事に続かない会話。


俺も気の利いた会話術を持ち合わせていないし、再び逃げようにも助けてもらった所為でそれも気まずい。


それが妙な間を生んだ。


それを埋めるように、どこからかけたたましい鳴動が響き渡った。


「お、おお、な、なんだ?」


びりびりと微振動が体に伝わる。


「事故か?」


車がない世界にそれはないかと思うと同時、居場所は加工場が多い。

なんらかの爆発事故を想像にした。


だが、不審者が妙な動きを見せた。


仮面に手をやり、同時にかぶっていたフードを外した。


「――っ⁉」


変質者がその正体を現すと、一瞬で緊張が走った。


絹糸のような長い金髪と、美しいまでの整った顔立ち、それでいて儚げな表情に心を奪われる。


俺は生涯でこれほどの美少女にあったことがない。


これがいわいる絶世の美少女という奴なのだと初めて知ることになった。


「アン……?」

「餡?」


だが、和菓子が脳裏に描いた美少女に上書きされる。


「行かないと」

「あ、はい」


それはご自由に、とまでは口に出さない。

それでいて絶世の美少女だからといって一緒にいたいとは思わない。


伊達にはこじらせていないのだ。


「ごめんね」


それは聞いたことある奴。


「お俺、関係ないはず――」


有無を言わせなかった。


そして、その数秒後遥か上空から俺の悲鳴が響き渡った。


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