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異世界だろうとのんびりと  作者: ダルマ787
ーーーーーーーーーーーーーーーーー 第一巻 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
4/237

第4話 二度あることは……

2021/1/23 読み直し(一回目)編集しました。

2021/3/17 誤字脱字、ルビ振り追加、文章追加、台詞の言い回し変更など、編集しました。

視界が固定されてどれほどの時間が経ったか、色々な意味で俺は固まっていた。


先ほどの少女対冒険者の戦いが嘘のように優しい風が木々を揺らし、木々の隙間から零れる木漏れ日がなんと穏やかな日常を映し出す。


そして、目の前には泣きじゃくる少女の姿。


考える事数秒……。


自分に置かれている状況を把握はできない。ただこの状況で理解できたものがあった。


「泣きたいのはこっちこっちじゃわぁああああああああああああああああああいっっっ!!」

「いやぁあああああああああああああああああああああああああああああああっっっっ⁉⁉⁉」


泣きながら少女は悲鳴を上げた。


「せ、せせ石像がしゃべった…………」


その一言で俺は石化していることを知る。


とりあえず、こうなる前の記憶を遡りつつ、新たな局面に俺は目の前の少女に言い放つ。


「とりあえず、敵と見た」

「ちち違います!」


速攻で否定されたが、俺の敵、すなわち平和を破壊する者である。


それからは、一方的な言い訳が始まった。


彼女の素性。

彼女の置かれている状況。

冒険者に追われた経緯。

俺が石化した理由。

その他諸々を含めマシンガン言い訳を聞かされながら、俺が思うことはたったの一つ。


「戻してください」

「ごめんなさいっ」


「ごめんなさいじゃねぇええええええええええええよ!」


俺の口調の訓練が一瞬で崩壊していった。


「ごごごめんなさいっ!」


ひたすらに頭を下げる少女だったが、進展しない状況に冷静さを取り戻す他ない。


さんざんな言い訳を整理するとこういうことだ。


少女の名は、アイミケ・ゴースキー、十六歳、女性。

種族はゴーゴンであるらしいが、力のコントロールが生まれ付きできず、目を合わせた者を強制的に石化してしまうらしい。

その所為もあり、フードを深くかぶり目を合わせないよう生きていた。


しかし、彼女自身知らない禍々しい気配とやらのせいで偶然にも冒険者に追われることになったとのことだ。


「んで、力の制御ができなくて、さらには石化を解くこともできないと」

「はい」


きっと石化してなければ俺の米神はひきつけが止まらなかっただろう。


「細かいことはどうでもいいとして、どうにかして抜け出さないと」

「……抜け出す?」


「どうしたものか……」

「あの……」


「はっ、とりあえず、さっきの岩を持ち上げた力で割ってくれ」

「ええッ⁉ だ、ダメですっ、そんなことしたら、死んじゃいます!」


どの口が言うのやら、


「ただね、この外殻さえ壊れれば出れると思うんですよ」

「あの、さっきから抜け出すとか、外殻とかなんでしょうか?」


「ん?」


一瞬、石化したことがないからこの状況がわからないのかと思ったが、話を聞いてみるとどうやら俺と少女のあいだで石化に関しての認識が違うことが判明した。


「――なのでゴーゴンの眼で石化した者は心と体両方が石になってしまうんです」


だから、俺が話したことで少女は驚いたようだ。


再び考えるが、どうやら俺は少女のいう状態での石化はしてないように思う。

なぜなら、話すたびに俺の唇は石に擦れ、そのうち爛れる(ただれる)痛みを負うからだ。


つまり俺の場合、体の芯から石化したわけではなく、表面上、それも体をコーティングするような形で石化したようだ。


理由は正確には分からないが、自動防御みたいなものが働き、そうなったのなら運が良かった。


「あー、アケミさんや」

「あ、アイミケです。お母さんからはアイミって呼ばれていました」


この娘の頬に平手を食らわしても許される気がする。


「…………じゃあ、アイミさん」

「はい」


「意見はとりあえず置いといて割ってください」

「…………、分かりました。でも、私にそんな力はないと思います」


ぷつんっ。


「てめぇっさっき岩持ち上げてぶん投げただろうがっっっ!」

ろうがっ………………。

……うがっ…………。

…………がっ……。


怒りがやまびこになって反響する。


石化すると叫ぶのが一番唇を痛める。


「ふー、ふー。オーケー、オーケーです」


唇の隙間から怒りを放出する。


「ゴーゴンの種族の基本パワーが高いのは分かりました。でも現状動けるのはアイミさんしかいないので」

「あ、ゴーゴン族の力は人族よりも少し弱いくらいです」


怒怒怒!


「そそそ、そうですかっ、アイミさん固有のものということは置いといてっ、おおお願いします」


そっとアイミは自分の拳をみた。


「無理だと思います」

「痛いからかっっっ!」


「ひっ、ちち違いますっ、ひひ皮膚、皮膚、というより体のつくりは人族と変わらないのでっ」

「なななるほど、骨が砕けた所で石には勝てないですね」


怒りで震えた声でもなんとか答えには辿り着いた。

そうなると、例え、アイミの力で空高く投げてもらっても、ここは土の上、衝撃は吸収されてしまう。

じゃあ、どこか固い地面まで運んでもらって、とそこまで考え付いたが止めた。


自分で何とかしよう。


なんだかんだ言って、この世界に来てからずっとそうしてきたのだ。目の前に原因の相手がいるとはいえ、あまり期待できる相手ででもない。

しかし、そうなると、あまり手立てがないのも事実。


「う~ん」

「あの?」


「ん?」

「人族の冒険者の中には、石化に関しての道具(アイテム)があるそうなんです」


「なっ、それを早くいってほし――いやいやいや、ダメですね」


それだけでアイミは俯いた。

彼女自身それは分かっていたつもりなのだろう。


「そもそも、僕が動けない」


偶然見つかった冒険者に追われたアイミでは、ギルドがある街に入れたところで大騒ぎになる可能性の方が高い。

その後問題になるのが、アイミがその道具を入手できるのかどうか。

入手できたとして、街から抜け出せるかどうか。

そして、一番の問題が、追われた結果、俺の家が見つかる危険性。


最後の一点の不安材料がある時点で却下である。


悩みはじめ、数ある異世界の主人公にアイディアの選出を願い始めた頃。


「力づくでいくか」


ものは試して今できる事を試してみることにした。


「とりあえず、一番強度が弱そうなところから始めるとして……」


ぶつぶつと確認するべきことを確認し独り言を零しながら、真剣に思案していく。


「あの……、人族の法術……例えば先ほどの冒険者の中にいた、神の祝福を与えられた人の中には石化を解く方がいらっしゃるという話を聞いたことがあります」


なので、アイミの声は聴いていなかった。


「だいたいは間接部分から初めてみよう……ぶつぶつ」


まずは身体能力向上で体の頑強さを上げ、力そのものも上げていく。

腕を振ったりする助走をつけることができない分、純粋なパワーがいる。

石化したタイミングでは拳を握っていなかった分、力を加える感覚が少しやり辛いけど、腕を曲げるよう力を加える。


やはりというべきか、肉が石に潰され肘のあたりに空間が開く。


傷みはない。

だが、石を破壊できるほどの強化には足りない。


「……もう少し強化を加えて」


過去、能力を慎重に使う機会はあったけど、だいたいは勢いで使うことの方が多い。

その所為もあって、身体強化もどこまで強くなるという基準がない。


何度が強化を繰り返し、ある瞬間変化が起きた。


パキ。


「あ」


アイミが思わず声を上げた。


「ふぅ」


いける。

そう確信してからは早かった。


腕に集中していた魔力を全身に漲らせる。

ひとまず腕だけで試してみてもよかったけど、腕だけ脱出しても結局やることが変わらないのだから、こっちの方が手っ取り早い。


「ふんっ!」


全身が強化された瞬間に勢いで体を回転させた。


石垣が崩れるような鈍い音と共に、足首から下以外の石化が崩れ去る瞬間だった。


「よかった~」


究極の安堵で気が緩む。

あとは足を持ち上げて最後の石化からも脱出すれば元通り。


「すごいですっ! おめでとうございます」


他人事のように最大の賛辞をアイミがくれる。


ただ全てを許そう、何事もなく無事だったのだから。


「ありがとうございます」


そう言ってアイミと視線が交わった。


「あ」

「あ」


ピキッ。


怒怒怒!


「フードかぶっとけやぁああああああああああああああああああっっっ!」

「ごめんなさぁあああああああああああああああああああああいっっっ!」


そうして二度目の石化から脱出を試みるのだった。


更新した際、ツイッターで呟いています。

@daruma787


編集時は呟いていません。

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