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異世界だろうとのんびりと  作者: ダルマ787
ーーーーーーーーーーーーーーーーー 第一巻 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
29/243

第29話 各々の決断

2021/1/23 読み直し(一回目)編集しました。

2021/3/18 誤字脱字、ルビ振り追加、文章追加、台詞の言い回し変更など、編集しました。

「くそっ!」


そう地面を叩いて悔しがったのはジオラルだった。

石化させられたこともそうだったが、それよりも守るべき対象を目の前で石化されてしまったことに無力さを噛み締める。


しかし、悔いが残っても現状は何も好転していない。


「現状できることは一つだ」


カルバンは正しい判断に悩んだ結果、一つの答えを出す。


「テトラ、君は街へ降りてギルドに報告してくれ」


もとよりその考えは初めからあった。

ではなぜ最初からしなかったのかと言えば、ギルドでの騒ぎの発端である信用性と憶測の域が出なかったためだ。


そして、現状、ゴーゴンであることが確定し暴走も確認できた。

そうなれば冒険者として、やるべきことをしなければならない。


「僕たちだけでは勝てない」


これはもうSランク案件にまで跳ね上がっている。


「わかった。でも……」


テトラは続きを言葉にできなかった。


「時間稼ぎがどこまで持つかはわからねぇ。アレも力を使いこなし始めてる。ただ、それでも俺たちはやるしかない」


テトラは静かに頷いた。


「それに石化されたとしても――」


カルバンが唯一の救いを言葉にしようとした時だった。


まるでそれを無にするかのようにゴーゴンが石化したタダシへと歩みを寄せていた。


「あいつまさかっ……」

「まずいっ、破壊されたらもうっ!」


しかし、そうはならないことが起きた。


ゴーゴンは少年の石像を前に膝から崩れ落ちた。


「いったいなにが……」


不測の事態に冒険者である三人は様子を伺うことしかできず、成り行きを見守る。


そして、その意味はすぐに分かることになった。


「…………どうして」


その声はゴーゴンである少女の口から零れ出たものだった。


「っ⁉ 元に戻った……」

「あぁ? じゃあ、もう――」


「いや、あれは一時的なものでしかない。過去の事例の中には暴走した原種が、さらに強い衝撃を与えられたことによって、一時的に正気に戻ったという話がある。でも、そこから再び暴走したともあるんだ」


「でも、今回はってことは――」


テトラは誰もが望む形を想像した。


「……おそらく、今回も、になってしまう。仮に今回暴走を食い止められたとしても、その根幹である、原種の力がなくなることはない」


静かな沈黙。


「どうしてっどうしてっどうしてぇええっ!」


そこに何度も悲痛の叫びが木霊する。


「……ぅう、ごめんなさい」


「――――っ」

「――――っ」

「――――っ」


冒険者の心臓が締め付けられた。


史実では同様の案件を知識としては知っている。

だが、実際この状況を目の当たりにし、人一人の人生を前に初めて気づかされた。


そこに悪はない。


少なくとも、ここには悪はいなかった。


あるのは、ただ一つ。


泣きじゃくる優しい心を持った少女。


ただ生れ持った力の所為で大切なものを失い、その罪に攻められる。


「…………ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


なんど謝ってももう帰ってこない。


ジオラルが立ち上がった。


「カルバン、壁を消せ。テトラは、念のため街まで行ってくれ」


言われた通り、カルバンは三人を隠していた土壁を土へと崩す。


そして、泣きじゃくる少女に向かってジオラルはただまっすぐ歩いて近づいていく。


隠れもせずに近づいてきた足音に気が付き、泣きじゃくる少女はぐしゃぐしゃの顔で振り返えった。


「お願い……殺して」


その言葉にテトラは顔を歪め、唇を噛み締めて溢れ出そうになった感情を押し殺す。

カルバンもまた一瞬目を瞑り、深く考えた後まっすぐ少女と仲間をみた。


この罪は三人で背負う。


「ああ、任せろ」


ジオラルは【炎で出来た大剣(エレメンタルソード)】を精霊の力を使って作りあげた。


「ちょっとまって」


そこにテトラが駆け寄ってくる。


「安心して、彼は元に戻せるから」


アイミは笑顔を零して、静かに目を閉じた。


「最後に一つだけ教えてくれ、あんたの名前は?」


少女は最後に名乗った。


「……アイミケ・ゴースキー」


ジオラルは剣を振り上げる。


炎で出来た大剣がより一層強く燃え上がる。


「アンタの名前一生忘れない」


そうして、振り上げられた剣は下ろされた――はずだった。


しかし、振り上げた剣はまだ空で止まり、想像だにしない事態にジオラルの表情が破綻していた。


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