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異世界だろうとのんびりと  作者: ダルマ787
ーーーーーーーーーーーーーーーーー 第七巻 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
239/243

第27話 兆し?

結論から言おう。


見つかった。


商人である、エーティさんは見つかった。

それと同時、俺もナイカに見つかった。


それはほぼ同時だった。


宿屋から出てくるエーティさんを見つけ喜んで飛び出し声をかけると、そこに少女はあたかも当然のようにいたのだ。


「あの……、どうして彼は魂が抜けたような状態なのでしょうか?」


脱力しきった俺に疑問を呈す。


「ふふ、気にしなくて大丈夫なのっ」


ナイカのその一言はとても怖かった。


色々諦めているうちに話は俺そっちのけで進んでいる。


そんな中で、カレンの妹だけあると感じていた。


「うん、こないだの話の続きでこの子は源素が使えないの。昨日は色々あったから、そんなに試せなかったでしょ。だから、あなたの商品を色々試させてほしくて探していたの」


ナイカは俺たちの事情を知らないはずだ。

それなのに、ナイカはまるで事情を知っているかのようにエーティさんに事情を説明する。


それが単に俺が源素を使いたいと思っていると、勝手に解釈しての行動の可能性もある。

それにしてもナイカに淀みがない。


「しかしですね。私はすでに退国命令が下っています。いくら妹君様の願いとはいえ、勝手な真似はできないのです。それに加えて、昨夜、国外の者の退去命令も発令しております」


「退去命令?」


俺の知らない事情に、ナイカに尋ねてしまった。


「あー、定期的にメンテナンスの為に、滞在許可、入国許可の制限を行っているの。入ってきたときに説明されているはずだけど」


そう言って、ナイカは「ふふん」と鼻息荒く答えてくれる。

まるで私がいないと何も知らないでしょ。

だからついてきて来てあげているのと言わんばかりだ。


実際、知らなかった。

入国の際は旅商人にすべて任せていた。

だから、話はほとんど聞いていない。


そうなってくると、カレンは俺にどんな試練を与えようとしているんだ。


「でもね、大丈夫。お姉さまに許可をもらっているから。移動制限とか色々あるけどね」


「え、あ、そうなの?」


そんな事実があったなんて、と俺は純粋に驚いたが。

冷静に考えてみたら、そんなはずはない。

ナイカには説明しないと決まったはずだ。


つまり、これは完全なる嘘。

この子、末恐ろしい。


「そ、そうなのですか……? 私の方には何も連絡が来ていないのですが……」


んぐっ、確かにいくらこの国の王が決めたといっても伝令がこなければ本人がそれを守ることもできない。それも国外の人間なら猶更だ。


どうにか胡麻化さないといけない。


「あー、あれじゃないですかね――」


「門兵に先に話が言っているの」


俺が言うまでもなくそれらしく、納得できる理由はあった。


なにより、何も知らないと反応した俺が何を言っても信用もなければ、説得力もない。

余計な事言わなくてよかった。


「そうですか、確認はしたいのですが、行動制限がかかっているということは、宿屋付近から離れない方がいいでしょうね」


うまく話が進んでいるのならば、俺は口を塞ぐ。

だって、それは大の得意なのだから。


「では、さっそくですが、お試しなされますか? 実のところ、私もめったにないチャンスと思っておりましてね」


そういえば、源素が使えない存在では研究できていないみたいな事を言っていたっけ。


「うん! あ、でもまた壊しちゃうかも」


「その心配はいりません。研究には失敗はつきもの、思う存分お試しください」


それなら俺も気兼ねなく、目的を果たせそうだ。


「それではここではなんなので、一度宿を取り直しますので、中でお話ししましょう」


そういって俺たちが話していた宿屋の前だったことを思いだしたのだった。



エーティさんが借りている宿屋の部屋に入ると、俺は素朴な感想を抱いた。


どうやらこの国は長期滞在するような意識を持っていない。

部屋は、まるでビジネスホテルのような簡素な作りでお世辞にも広いとは言えない。

俺はともかくとして王族の一人であるナイカとエーティさんの距離が近く感じる。


ナイカもエーティさんも気にした様子はない。

俺もそれなりの従者としての意識が出てきたということだろうか。そのくせ何もしないのだけど。


そんな中、並べられたいくつかのケース。

その中に王宮では並べれらなかったものまである。


「多いですね」


素朴な質問にもエーティさんは丁寧に答えてくれる。


「ええ、あの時ご覧いただいたのは、現段階での完成品。ですが……、ええと」


今更になって、俺の呼び方に困ったようだ。


「タダシです」


エーティさんはちらりとナイカを覗く。

腐っていても俺も王族の関係者、許可が必要なのだろうか。


「なんでもいいの」


同意見だけど、扱い雑だな俺って。


「では、タダシ……君、もしくは――」


「あ、それでいいです」


呼び方なんてこの際なんだっていい。


「それではタダシ君。今あるものの説明をさせていただきますね」


そういわれ、王宮の時とは違い、未完成品を含めての説明がされた。


大きく分けると、三つのグループに分けられた。


現段階での完成品。

つまり、すでに指輪の原石に属性の源素が貯められたもの。

風、土、水、光、闇の五つ。

すでに俺が壊してしまった火の指輪も一応ある。


もう一グループは指輪としては完成しているが、源素が内在していないものが一つ。


そして、その他に分類される指輪としても未完成品、原石のままのモノだった。


「意外だな……」


その並べた指輪にふと言葉が零れた。


「……何がでしょうか?」


「あ、いや、あー」


特に考えてでた言葉ではなかったから、動揺する。

でも、大した話でもないから素直に答えた。


「なんとなく、この指輪に源素を溜めるの大変みたいな話だったじゃないですか? だから、旅先でも源素を溜めてもらえるように、空きの指輪がいくつかあるもんかなって」


「なるほど。説明させていただくと、今回は目的が明確でしたので、事前に準備をしてきました。加えて、案外私も秘密主義なのですよ。誰でも、というわけにはいかないのです」


俺の見た目が子供だからなのだろう。

最後は誤魔化した言い方をしたが、結局の所、完成品を独占したいということだろう。

まぁ、当然か……。


雑談もそこそこに一つの指輪を手に取る。

なんだかんだいって、もしこれで源素が戻るかと思うと期待で気持ちがはやる。

源素が戻れば、元の山生活に戻ることができる。そう考えるとはやるなという方が無理だ。


それをどう感じたのか、エーティさんは優しいほほえみをしている。

返って、ナイカはにやにやとしている。


なんとなく、この二人が俺をどういった目で見ているのか理解した。


まぁ、間違っているし、どうでもいいかと改めて否定はせず。

気持ちのままに、水属性の指輪を取った。


逸る気持ちと裏腹に心配事もあった。

それは王宮での出来事。

失敗は指輪の破壊だ。

エーティさんは構わないというが、壊す側からするとやっぱり罪悪感が拭えない。


「水属性ならば、なにがあってもこの部屋が濡れる程度です。指輪の行方は気にせず、思うままに試してください。これも研究の一つです」


俺の気持ちを察したのか、そこまで言ってくれるならば、さっそく指輪を嵌めて力を使う。

結果はどうあれ、結論はでる。


「…………」


「…………」


「…………?」


「まだ…………?」


違う。


俺たち三人が予想していた結末以外のことが起きただけだ。


指輪は壊れも、発動もしなかったのだ。俺がやり方を間違えたわけでもない。


「起動しないのですか?」


俺は無言で頷く。


「ほんとに?」


疑いたくなる気持ちもわかる。

俺自身、やり方が違ったかと思った。

でも、指輪から何も感じないというよりも、壁みたいなものを感じる。

つまりは、指輪との間で拒絶しているような感じなのだ。


「ほかのでもお試しください」


そういわれ、完成品の手当たり次第に試していった。


けど、結果はどれ一つとして変わらなかった……。


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