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異世界だろうとのんびりと  作者: ダルマ787
ーーーーーーーーーーーーーーーーー 第七巻 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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第26話 目的の探し人

「ずいぶん静かね?」


食卓に一人腰掛けながら、普段うるさい原因となる存在がいないことを不思議に思い、レンナは問いかける。


「二人とも早朝より外出しております」


本来であれば王であるカレンに付いているアージュが、食後の食器を片付けている。


それもまた不思議で再び尋ねた。


「どうして、あなたが?」


アージュよどみなく答えた。


「カレン様は現在ある調べ物をしております。それのお手伝いをと申し出ましたが、レンナ様に変化がないかを命じられました」


これに、レンナは疑問を抱かない。

なぜならあの日(・・・)から、過保護にも姉であるカレンは、レンナの体調を定期的に調べるからだ。


源素はもちろん、普段との差異を細かくチェックさせる。


元は本人が行っていたが、あまりにも過保護すぎて、レンナ、アージュの二人によってその任を解雇させられた形だ。


久しぶりに来たかと昔のことを思い出し、一人レンナは微笑む。


「そ、じゃあ今日は大人しくしているわ」


「そうしていただけると助かります」


そういうと二人は微笑みあった。




そんな平和のひと時と同じ時間、俺は全力で街中を走り回っていた。


理由は二つ。


昨夜の話で結論だされた答えは、俺の中に眠っている源素を呼び起こす事。

それだけ言えば、願ったり叶ったりの話ではあるが、問題はその方法だ。


それも結論から言えば、クノにもわからないとのこと。


当然、どうするかって話になる。


そのうえで悩みに悩みだされた結論は、何でもするという大分アバウトな答えだった。

だからとはいえ、無暗やたらに試すにしては、無駄が多い。

無駄だといえる理由が、シンとの日々だ。

なんだかんだいって、クノはシンが試そうとしていた事を、細かく俺から聞き出すと試す必要がない事を切り分けた。


その中に答えがあるとは思えないとクノは呟いていたが、正解が分からないならばと出した答えなのだ。


その一旦として選ばれたのが、偶然にもこの街にきた特殊な研究結果。

源素を指輪に宿す珍しい商品。

本来では決められた源素しか使えない理を、少しだけ手助けするソレは、体内の源素にも少なからず影響を及ぼす。


それは破壊していしまったとはいえ、俺も懐かしい感覚という実体験で得ている。


もしかしたら、その影響が眠ってしまった俺の源素になにかしらの影響を与えるかもしれない。


そのためには、カレンの指示によって追い出される予定の商人を見つけ出さなければならなかった。


そして、もう一つの理由が、


「おばちゃんどっち⁉」


二人の指示により、早朝より行動に移した俺の姿を、これまたなぜか起きていたナイカに見つかったのだ。


やましいことはしていないのに、ナイカは何かを感じ取ったように俺を怪しんだのだ。


俺の行動を決めるに辺り、姉であるカレンとクノの二人はある共通の意見を提示した。

それが、一番の当事者であるレンナとナイカにはこの事実を話さないということだ。


まぁ、それに関しては俺も納得している。


カレンとクノは家族としての意見だったけど、俺としては異世界人やらなにやら説明がややっこしく、俺から話すことはあまりに億劫であり、話す気になれなかったことが大きい。

逆に言えば、二人から話すのであれば、別に気にしないともいえた。


そんなこんなで俺は、ナイカから逃げ回りながら可能性の一つの為に走り回っているのである。


ナイカから質問をされた雑貨屋の店先に出ていたおばちゃんは、遊んでいるとでも思ったのか、目の前を通過した俺の居場所は簡単には教えない。


すっ呆け(すっとぼけ)ながら、少しのヒントだけを出している。


俺はその間に、さらに奥の細道へと逃げ込んでいった。


逃げ隠れながら昨夜クノの言っていた言葉を思い出す。


『あの子には十分に気を付けることだな。あの子は勘が鋭い。実際、お前がこの国に入ってきた時、私よりも早くなんとなくって理由だけで、お前を受け入れた』


『んな、あほな』


そんな言葉を返した俺に言ってやりたい。


「こっちにいるような気がするっ!」


「(ひぃいいいいいいいいいいいいっっっ!)」


バケモンやでっ、あの子っ! レンナとは一味違ったバケモノやで‼


「何をしている?」


行き絶え絶えで兵舎らしき建物の壁に座り込んで休んでいた俺に、今は懐かしくなった門番に訝しんだ目で見られた。


一区切りと言いたいところだけど、休んでいる暇はない。


「ここを商人の見た目若いのに結構年齢のいった男性来ませんでしたか?」


「なぜ、君が王宮に仕えているのか不思議だが、それは王族の決めることだから構わない」


暇なのか世間話が始まってしまった。


「王宮に仕える以上、もう少しこの国の事を知った方がいいのではないか?」


これはお説教なのだろうか。


「この国は元々人の往来が盛んな国ではない」


まぁ、この国のシステム上決められた人間以外はここに常駐することはないのだろう。

だから、普段とは違う人が来れば日々の刺激として退屈しのぎをしたいのかもしれない。


「つまりだ。ここ数日誰の通過していない」


鎖国的な国であるため限られた人の出入りは門番で記憶できる程度。


「さらにいえば、君みたいな特殊な存在を除けば、他国の人間はほとんど残っていない」


おそらく俺が入国した商人なんかもすでに出立していて、いないのだそうだ。

確かに、あれから結構な日が過ぎた。


「そうですか……」


そうなると探している人間はどこへ行ったのだろう。

俺はナイカに追われながら町中を走り回った。

人に尋ねることまではしていないけど、目的の商人は見かけていない。

この国の特性上、人の往来ができる場所は限られている。

だから、すぐに見つけられると思っていた。


カレンである王から退国命令が出ているとは言え、即退場というわけでもなかったから、明朝にかけての出立だと予測していた。


最悪、唯一この国に出入るこの場所に来ればと思っていた。


さて、どうするか。


「このままここで待ち伏せするか、手あたり次第探し続けるか」


悩む理由は一つ、ナイカだ。

このままここにいても彼女がくる可能性が高い。

だからといって、町中の探索を続けていてもそれは同じ。

なにより一番起きてはならないのが、あの商人であるエーティさんがいなくなることだ。


ここは一つ門番の手を借りるしかない。例えカレンの名前を使ってもだ。


「あのっ、」


人見知り、人に物を頼るのが大の苦手。


そんな事知る由もない門番は、


「君な、人を探しているようだが一つだけいいか」


俺の決死の覚悟を遮る。


「他国の人間なら宿にいるだろ」


「…………」


よくよく考えてもみれば、住人と違い部外者の宿はこの国にも存在している。


「盲点!」


「アホなのか君は、それにだ――」


門番の次の言葉を待つ前に、俺はその気に乗じた。


「すいません! もし商人らしき、見た目若いのに結構年齢がいっている人が来たら引き留めてくださいっ!」


矢継ぎ早に頼み事をして、俺はその場から逃げ……走り出した。


必殺、断ることを断る!


俺の奥義の一つを繰り出し、宿屋へと向かう。


「って、おい! 最後まで…………、行ってしまった」


呼び止める俺にはそのことは届かない。


しかし、


「もう、カレン様からその命令が下ってるぞ……」


その事実を知ることはなかった。


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