第23話 賭けの勝敗
書き直しで話数を追加しました。
2021/1/23 読み直し(一回目)編集しました。
2021/3/18 誤字脱字、ルビ振り追加、文章追加、台詞の言い回し変更など、編集しました。
――――ただ泣き叫びながら恐怖から助けを求めていた。
雨でぐちゃぐちゃになりながら時折転んでは立ち上がる。
なぜ大切な母親が、大切な村の人たちが、家や畑が石化していたのか六つのアイミには分からなかった。
小さな体で必死に走り、舗装された道に出るまで、見えない影から逃げ続けた。
転がりこむような形で道に出ると、そこには荷馬車がいた。
突然飛び出してきたため、驚いた馬の前足がアイミの小さな体に迫る。
馬の驚きと同様に荷馬車を操車していたおじさんが手綱を引いて落ち着かせた。
商人のおじさんは泥だらけになったアイミの姿にすぐに駆け寄ってくる。
「大丈夫かいっお嬢ちゃん!」
人の声にアイミはすぐに助けを求めていた。
「助けてっお母さんがっ!」
だが、その瞬間、アイミは見えない影が誰だったのかを知ることになった。
しがみ付いた商人は固くなり動かなくなった。
「あ、ああっ……」
ゴーゴン族の石化。
「やだ……やだ……やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだっぁああああああああああああああああああああああああ!」
我儘に叫び、そのままアイミの意識は途絶えた――。
目が覚めた時、そこには絶望が現実として蘇る。
皮肉にも晴天の中、手を差し出してくれた商人が石化し、荷を引いていた馬までもが石化していた。
「うそだ、うそだっ」
遠くの方で人の気配が近づいてくる。
「たす――」
再び助けを求めようとした声は、目の前の石化した商人の姿が止めさせた。
「……っ!!」
その時の幼いアイミは逃げる事しかできなかった。
――――それから長い年月、アイミは闇雲に生き続けていたわけじゃない。
ただ、必死に自分がしてしまった過ちの罪を背負い。
助けを求めようとしていた。
しかし、暴走を恐れ助けを求めることはできなかった。
それでも、きっと広い世界にはアイミの願いを叶えてくれる存在がいると信じ、歩き続けた。
そして、偶然出会った少年はその一旦を叶えてくれた。
それなのに、
「……私が奪ってしまった」
少年の居場所を……。
……憎い。
「私は……また大事なものを奪っちゃうんだ」
……憎い。
「……私は産まれてきちゃいけなかったんだ」
……憎い。
「ごめんなさい……」
燃え続ける少年の小さな家が視界に入る。
「ごめんなさい――」
その瞬間、濁った感情に包まれ、アイミの意識が途絶えた。
怯えていた少女はそこにはもういない。
「賭けは負けだね」
「結局こうなるのかよっ、胸糞悪いっ」
最年少Bランク冒険者、『新しい波』。
人に妬まれながらも冒険者として、人々の暮らしを守るのも一つの役割だ。
だから、火柱を前に誓う。
「これは俺が背負う」
「違うよ、僕たちだ」
一つの冒険者としての戦いが始まる。




