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異世界だろうとのんびりと  作者: ダルマ787
ーーーーーーーーーーーーーーーーー 第七巻 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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第17話 クノとレンナ

「本当にそれでいいのか?」


『サハラド』では珍しく雨がしとしと降る中、クノは王宮の玉座のある部屋にいた。


先代の王が亡くなり、その座を引き継いだのは、まだ年端(としは)もいかない長女であるカレンだった。

その決意は一人で決めたものではない。

なぜなら、カレンがその座を継いだのは肩書だけだったからだ。


先代の王であり、三姉妹の父であるサハラド・プルームは世界でも指折りの源素の持ち主。

しかし、その源素を多く引き継げたのは次女であるレンナであった。


砂の国『サハラド』は、ダンジョンである。

それも世にも珍しい、意思を持つダンジョン。

本来では、ダンジョンとの共存は中と外で別であった。

しかし、一人の人間が、ダンジョンの意思と契約することになり、『サハラド』が生まれた。


それ以降、サハラドの王達は代々ダンジョンの意思『クノ』と契約を結び、受け継いできた。


誰もができるわけではない。


クノが拒否すれば契約は終わる。


クノが見捨てれば契約は終わる。


クノが興味を失えば契約は終わる。


クノが約束を違えば終わる。


クノが別の者に引かれれば契約は終わる。


だが、どれも起きたことはない。


しかし、長い年月の中で契約の危機はある。


選ばれればいいわけではない。


選ばれ、認められ、必要なモノを持っていなければならない。


「おそらく、源素を使用できない生活になる」


優しい言い方だった。


レンナが三姉妹の中で、一番多くの源素を引き継いだ。

それは紛れもない事実。

しかし、先代の王の源素はそれを遥かに超えていた。


クノは明らかにレンナの源素が足りていない事に気が付いている。

クノは人間の源素の質、量ともに視ることができる。

それが契約を行う事ができるということなのだから。


「はい」


幼い少女とは思えない、レンナの強い眼差しがクノの瞳をじっと見つめている。


両親がなくなり、この国を守ろうとする強い意志。


その隣に立つ、カレンを見た。


こちらはこちらで、強い意志と覚悟をその胸に秘めている。


姉として、次期王として。


クノは死んでいったプルームを恨む。


「(どうにかしてやりたいが……)」


想う心はある。


契約が結べなければ、ダンジョンはダンジョンに戻り、国は国でなくなる。


「レンナ、お前はいくつになった」


「九つです」


あまりにも幼い。

せめてあと五年、もしくはカレンが源素を引き継いでいればとさえ思う。


「クノ、何が足りませんか?」


カレンが険しい顔つきで訊ねてくる。


その表情に「ふっ」とクノは笑みを零した。


「余裕」


「え?」


クノは『サハラド』を嫌いではない。

先代の王も過去の王達も民に至るまで、長い付き合いだ。

情だってある。


「三年」


できる限りはしたい。


「三年……?」


これは賭けだ。


「三年やる。その三年間でできる限りのことをしろ」


その時、必要な源素まで達していなければ、契約はおろか、レンナそのものを吞み込んでしまう。


「王になるには器だけでは足りない」


少しでも可能性を上げる。


「学べ、鍛えろ」


『サハラド』を生かし、終わらせない為に。


「はい!」


「はいっ!」


後は見守ることしかできない。


「その間は暇だから、一番幼子は私が見といてやるよ」


その時が来るまでは――。



俺の知らない歴史がぽつぽつと語られ、レンナが厳しい中でも条件を達成したのを理解した。

そして、その影響によって源素を使うことができないということも。


でも、と思う。


「俺にできる事なくない?」


手伝えと言われて、何も思いつかない俺の顔面に二度目の蹴りがやってくるのに時間はかからなかった。



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