第16話 自信を持って言えること
答え合わせをしてみれば、全ての辻褄は揃うことになっている。
「なんだ、あの姉妹に一目会っただけで好かれていると思ったのか?」
なにが、『弟のような存在』、『似たような境遇』、『同世代の友人』だ。
どれもこれも俺の勘違いで思い上がりな想像。糸を引いていたのは、ダンジョンそのものの存在クノだった。
ある意味では、この国の王であるカレン以上の主。
それが面白半分に俺を受け入れた。
だから、何があっても対処できるクノが口添えをしている。
初めて俺はあの三姉妹に嫌悪に似た感情を芽生えさせた。
だからといって、文句を言うつもりも憎悪を抱くこともない。
なにせ、どれが嘘で何が真実だったとしても、俺に選ぶ権限はなかった。
結局の所、こうなってよかったと思えるってだけの事だ。
唯一、言えることは。
「恥ずかしい……」
勘違いが思い上がっていたことにただただ赤面する。
そんな俺を見下すように、いや完全に見下していた。
「そうだろうな。いくら子供とはいえ、突然現れた奴に心を許すなどありえん。それを親類の位置まで自身を格付けして、信頼までされていると勘違いしておったのだからなぁ」
「ぬぐぅうう」
辛辣過ぎる!
心のえぐり方がナイフを通り過ぎて、出刃包丁だ!
「しかも、この世界では子供の姿をしているからと言って、見た目のままの存在かも怪しまれるというのになぁ」
「まだ言うかぁあああ!」
泣きっ面に蜂の上に剣山まで押し付けてくるな!
「もういいだろっ――、…………?」
ふと、違和感が怒りの感情を不思議に上回る。
クノの言葉の一つ一つを思い出し、今までなかった不思議を探す。
深く考えたわけではない、なのにその答えにはすぐに辿り着いた。
「……この世界?」
その言い草はあまりにも正しくて、違和感があった。
俺の感情のない不思議な表情にクノは怪しく微笑む。
「気づいていないと思ったか、異界人」
言葉は違え、同じ意味を持った言葉。
「どうして……」
正体を見破られたことに驚いた。
似たような事はあったけど、あの時はすでに俺の正体を知っている人との接点が以前にあったから自然に受け入れられた。
でも今回は違う?
いや、まてよ。
それも勘違いだったとすると……。
この国の方角へ指示したのは誰か。
思い起こしてみれば全ての点は繋がった。
「なんだ」
「??」
いる。俺の行動を誘導している存在が。
「シンの差し金か」
その名を出した途端、幼い姿をしたクノの目じりがピクリと吊り上がる。
「誰だと?」
怒気を含んだ言葉に、俺は一瞬たじろぐ。
だけど、今更そんな誤魔化しになんの意味があるのか、どうせまた俺をからかおうとしているのだろうと言い返す。
「ゴブリン族の生き残りだよ」
あまり好まれる言い方ではないけど、そう俺は言い放った。
ところが、俺が予想していたものとは違う反応が返ってくる。
「あのじじい、まだ生きていたか」
親指の爪を齧る姿は忌々しいものを思い出している。
二人が知り合いなのは確定したが、友人というわけではないのだろうか。
騙されていたポジションの俺がなぜ下出に出なければいけないのか。
それが俺とういう存在だからに他ならない。
相手をこれ以上不機嫌にさせないように気を付けながら言葉を選ぶ。
「ええと、友人とかでは……」
ふん、と俺の態度に気まずそうにしながらもクノは答えた。
「ただの知人だ」
「そ、そう……」
これ以上、感情を見せたくないのか、クノは後ろを振り返る。
そして、どこか諦めた様子で語り始めた。
「お前を……、可能性のある存在であるナカムラタダシを、この国に入れ、あの三姉妹に近づかせた理由だ」
なんの話だと思いながら、不機嫌になったクノを刺激しないようにただ聞いて待つ。
「タダシ、お前をこの国に招き入れたのは、理由が存在している」
今更ながら、そうなのだろう。
出なければ、意味がない。
ただ、思うところが俺にもある。
「タダシ、これから起こる問題に、協力してもらうぞ」
自信を持って言おう。
「たぶん、無理」
思いっきり頭を蹴られた。
今回から実験的に、画像を入れています。
残念なことに作者は絵は描けません。
よって、相関図やらそんな画像のみになると思います。
出来は期待しないでください。
そして、まだ実験です。
詳しくは活動報告に記しておきます。
では、引き続きよろしくお願いいたします。




