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異世界だろうとのんびりと  作者: ダルマ787
ーーーーーーーーーーーーーーーーー 第七巻 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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第14話 『ダンジョン ⅠN ダンジョン』

驚いたのはいいものの、最終着地地点は「そうなんだ~」で収まった。

存外、俺はこの世界というよりも、世界そのものにそこまで興味がないようだ。


元の世界の事を考えても、自身の興味があること以外に関して、反応が薄い傾向にある。


「……反応と言葉が釣り合ってない」


それがどうやら気に入らなかったようで、ナイカは目を細めて俺をじっとした視線を送っていた。


「それで今はどこに向かってる感じ?」


対大人だったのなら、もう少し気を使った言い回しをしていたのだろうが、子供であるナイカにはその辺気を抜くと雑になってしまうのは反省するところだろう。

口に出してからでは引っ込めないので、後ろに続いていた双子騎士の反応だけ気にしつつ、用事をさっさと済ませたい。


それを感じ取ったのか、すぐには答えてくれないナイカに、「しくじったか」と内心でも思うもそこまで器用ではない俺は、気になることを尋ねる。


「そういえば、ここがダンジョンなのと独立国家ってどう繋がるの?」


決して敬語で話すのを忘れているわけではない。機嫌の悪いところで相手が気に入らない手段を避けるために元に戻したに過ぎない。

その証拠に双子姉妹からは睨みが来ない事に加えて、純粋な質問にナイカも期限を直した様子だった。


ふふ~ん、と胸を反らし、


「それももうすぐ着けば分かるの!」


そう言いつつ、離れない手は再び引かれ始めたのだった。


目的地はそう遠くはなかった。

むしろ国土を考えれば、当然と言えば当然ではあるけど、街の中心から離れた場所は、整備はされているものの何もない。

辺りも雑木林で、砂の国という名前を考えれば、緑が豊かな方だろう。

まるで、小さな農村に見えなくもない。小屋が一つあるだけだけど。


小さな鳥居のような門を潜ると、そこには兵の数名が配備されていた。


ナイカが頭を下げる兵達と簡単に挨拶を終えると、辿り着いた先に見えたのは小さな入り口の洞窟。


「なんだここ?」


「さっきの質問の答え」


素朴な質問はスルーされたようなものだ。

俺にはわからん。


ちらりと俺の顔をみたナイカはすぐにそれを察したようだ。


「ここはね、キープダンジョンの入り口」


「へー、……ん?」


どういうことだ? と俺の脳にハテナが浮かぶ。


この国はダンジョンそのものだと、言われたはずだが。

その中にさらなるダンジョン? 

はい? 


「ダンジョン ⅠN ダンジョンって事?」


伝わらない言葉の羅列にハテナを浮かべたもののナイカは気にした様子もなく説明に入った。


「この国はあまり外の国と関りを持っていないの。それは、まぁ色々あるんだけど。だから、この国は冒険者もだけど、商人って職業もあまりいない。その影響もあって、外からの物が入ってこないのね。だから自国での食糧供給は全てキープダンジョンで行われているの」


徐に俺は三人の傍から少し離れ、ダンジョンの入り口まで歩を進めた。


小さな入り口に頭だけを突っ込み中の様子を興味本位で覗く。


その行動の中で、ナイカの説明に色々と納得した部分や理解したことがある。


外交をあまりしていないということから、冒険者がいないのは理解していた。

加えて、商人がこの国にとって、貴重な存在になりうる。

だから、初めに会った商人の家族もこの国に立ち寄ったのだろう。


それに防衛の為にいた兵達も、目的はそれだけではなくこのダンジョンの為に存在しているのも理解できた。


「自給自足が国そのものでできる国か」


思い起こしてみれば、農業や家畜を育てている雰囲気は見て取れなかったのも今なら納得できる。

まぁ、そもそもそこまで考えてすらいなかったけどね。


しかし、生きるうえで必要な食料がある種の無限供給ができるというのは、それだけで、この国の価値というのが高いのが分かる。

逆に言うと、俺の世界で考えてみてもこの国は周りの国の標的にはならなかったのだろうか。


俺の可愛い脳みそちゃんでも思いつく辺り、きっと長い歴史の中には争いがあったに違いない。

鎖国という俺の生まれ育った元の世界での共通点に、不思議なものを感じつつも、そのことに関して俺は触れようとはしなかった。


一つはこの世界の争いごとの知識だけでも関りを持ちたくなった事。

もう一つは、それを聞くことはこの国の防衛事情を知ることはいけないと本能的に悟ったからだった。


興味だけで聞くには俺の立場にリスクを生じさせる。


外交を持たない国。


偶然とはいえ、この国に旅人として入り、国に大きく関わる存在達と接点を持っている。

そんな怪しいと言わざる存在が、軽い気持ちで「防衛ってどうやってしているの?」なんて質問でもしようものなら、スパイ活動をしている奴にしか見えないのは言うまでもない。


全くそんな一欠けらも思っていない事に、そんな疑いの扱いされても困るし、敵のいない捕虜にされるなんてまっぴらごめんである。


ひとまず、俺がするべきことは、旅を続けるための資金を集める事。

そして、その間に、次の目的地へ歩を進める事。

その目的の真意を見つけ出すことだった。


少し前に関わることになったダンジョン。


ダンジョンの中でも人々の生活の為に維持されている不思議な存在『キープダンジョン』。

教えてもらったことがあるそのダンジョンの見た目は俺が知っているダンジョンとそう変わらない。


入り口が今の俺の背丈くらいで大人が入るには腰を曲げなくてはいけないだろう。

それでも中を覗けば、奥に進むにつれ広くなっているようだ。

土壁に繋げられた綱に光源が一定間隔で付けられていることからも、整備もっているのが分かる。


ここに連れてこられた理由があるのかないのか、俺はダンジョンの様子を見るのを止め、連れてきたナイカの方を振り向いた。


何気ない動作だった。


特に何も考えていない。


それはナイカも変わらないはずだった。


「少しはこの国の事―—」


だけど、ナイカの言葉が変わり、表情も驚いたものに変化した。


「え?」


思わず声が出る。


傍にいた双子騎士の表情を自然と追う。


この二人の表情がここまで変わるのを見たことがあっただろうか、ナイカ同様、何かに驚いた様子だった。


三人の視線の先に、俺は勢いよく振り向いた。


「………………」


俺の後ろには変わらない風景がある。


――ドッキリ。


三人の息の合った悪ふざけに騙されただけなのだ。


「なんだよ……」


そう言っても再び視線を三人に戻すと、まだ続けるのか、さっきよりも見開いた瞳。


「いや……、さすがに怖いって」


騙されているだけならいいと、ダンジョンの方を振り向く。


やっぱりそこには何もなかった。


「いやいやいや、なにもいないか、ら――」


――とんっ、と優しく背中が押された。


ナイカを含めた三人との距離は腕を伸ばしただけでは届かない距離があった。


じゃあ、誰が?


そんなことを思う暇もなく。


俺は前のめりになり、ダンジョンに片足を突っ込む。


おかしなことに片足は地面につかなかった。


着くはずの地面がなくそのまま吸い込まれるように俺はダンジョンに引き込まれていく。

すぐにやってくる浮遊感。


「へ? は? なんで?」


ばたばたと飛行できないまでも自然に起こるじたばた。


掴むところはない。


体が半分ほど倒れた頃に俺は諦めた。


だって、これは経験済みだもの。


『でも慣れない 股間がヒュンって なるのはね』


俳句って難しいよね(笑)




「――――――いぃ、やああああああああsdfghjklッッッッッッッ‼」




叫び声と共に俺は久しぶりに落下による浮遊感を味わうことになった。


その落下途中、




「――――クノっっっ!!」




ナイカが誰かを呼ぶ叫び声だけが遠ざかっていった。


年内最後の更新になると思います。

今年一年、本当にありがとうございました。

そして、引く続きよろしくお願いいたします。

それではよいお年を。

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