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異世界だろうとのんびりと  作者: ダルマ787
ーーーーーーーーーーーーーーーーー 第七巻 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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第13話 『サハラド』の秘密

気が気じゃない。

目の前の王族であるナイカと両側の後方を歩く双子の女性騎士。

どうして俺は買い物を頼まれただけなのに、こんな緊張感を強いられるのだろう。


そんなことを思うこと追従する形で付いて行っていた足が止まる。


当然、先頭を歩くナイカが止まったからだ。


続いて後ろを振り返り、何かあるのかと俺も振り返る。


「さっきからどうして後ろを歩いているのよ」


どうやら俺にそれを言うために振り返ったようだ。


どこか不貞腐れたように頬を膨らませ、年相応の可愛らしさでそう言われた。


もちろん俺は異世界人だが、立場の違いくらい理解できている。

それ相応の態度はさすがに難しい事もあって、完ぺきではないにしろ俺なりにやってきたつもりだ。


「いや、俺、使用人、あなた王族の一人」


さらに付け加えるなら、一応アージュさんに教育をされている部分もあるし、双子騎士の睨みもある。

ほぼ睨みが大部分だけど、やれるかぎり波風は立てないようにする。


だけど、まだ幼いといえるナイカにはそれがご不満のようだ。


「なら、わたしが許可するわ! となりを歩きなさい」


俺はにこっと笑う。


「お断りします」


「っ、なんでよ!」


「俺、使用人、あなた王族の一人」


同じ文言であしらうと、王族とは思えない獣のようなガルルと鳴き声を上げた。


本当に王族かよと思う俺は、それでも自身の対応を褒めてやりたい。

そんな思いで、双子騎士を見た。


ナイカに何をさせていると言いたげな圧のある睨みがそこにあった。


これ、正解なくない?


そもそも、一つの国の王族が気軽に街へ散歩なんてしていいのだろうか。

いや、普通に考えてダメだろ。

誰か止めないと。

って、止められないから、こうなっているんだけどね。

アージュさんのあの諦めたような表情を見れば、全てを察したけども。


それでもと思うところはあるが、許されている理由もナイカと街を歩くにつれ、理解できた部分もある。


この国は平和なのだ。


犯罪がない国などないのだろうが、少なくともナイカの国の住民の関係は、まるで近所の大人と子供の関係。

口調はさすがに王族に対する対応だとしても、軽返事や対応は普段から慣れ親しんだものだった。


だからこそ、ナイカのわがままとも言える、住民との交流は繋がれている。


「平和だね~」


王族とその騎士が闊歩しているにも関わらず、普段通りの生活を送る住人、当たり前に過ぎていることが不思議なくらいに、平穏だった。


「うん。う~ん、あ」


納得した返事をしたかと思えば、何か疑問のうち何かを思いついたようだ。

それに、俺は一気に不安になる。


「ねぇ、タダシ?」


怪しく光る瞳に少し甘えたような口調。


逃げる道は、なさそうだ。


「……はい」


「どうして平和だと思う?」


平和に理由?


色々考えてはみるが、正解はそういうことではないのだろう。


「どうしてですか?」


若干の棒読みになりつつも俺はそう答えた。


はい、正解。


むふん、と満面のしたり顔とない胸板を張りナイカは俺の手を取った。


これは予想していなかった。

しかし、女性経験がないとは言え、俺にそういった趣味はない。

だから、拘束されたのかと勘違いしたくらいだ。

いきなりだった分、驚きはしたが、引かれる手を振りほどかず、そのまま導かれるままに走り出す。


年齢が年齢ならとても素敵な光景なのだが、あたりの住民からは仲良く遊びに行く子供の図そのものだろう。


「この国はね、他の国とはあまり外交はしていないの」


走ったままでも続く話に興味がないまでも、返事はしっかり返す。


「だから、外の物は大体が旅商人から入ってくる」


息を弾ませながら説明されるこの国の事情に、入国前の商人を思い出す。

確かに、あの商人は通り道としてこの国を選んだ。


「でも、この国は他の国へ行くための通り道にはなりにくい」


この世界地図はわからないが、目的がない限りは近づかないといことなのだろうか。

でもあの商人は引っ越しの最中に……、そこまで考えて、商人の家族を思い出す。


「観光?」


あははと、ナイカが小さく笑う。


何が面白いのか分からなかったが、話は質問形式に変わっていく。


「じゃあ、この国の何を見に来ると思う?」


「そりゃあ――」


外から見たこの国の光景が一番に思い出される。空に浮かぶ国、それだけで見る価値はあるのではないのだろうか。

それに加えて、あたりに町が何のであれば、宿くらいとるだろう。

そう思い俺は答えた。


「浮かぶ?」


少しの疑問をまた口にし、


「タダシは、ほーんとに何も知らないね」


今更そんな事、わかり切りすぎて、何も感じないね。


「この国が独立国家で成り立っている理由、それはねー」


ふと、俺たちの後ろを付いてくる双子騎士を振り返り確認した。

今からナイカが話す内容は俺が聞いていいものなのか不安になったからだ。


ここ数日で気が付いたことだが、ナイカが俺に寄せる信用は、俺が源素を使えないと云う事。

そして、それが三姉妹に脅威にならない事実であり、そこに付いてくる副産物が多少の魅力となり実現している。


『弟のような存在』、『似たような境遇』、『同世代の友人』、それにどれほどの価値があるのか、俺にはわからないし、それに応える気もない。

だから、俺はあくまでただの一般労働者としての価値しかないと思っている。


だから、あまりこの国の内部を知ってはいけない気がした。


だが、双子姉妹はただナイカの護衛として、俺の視線に気が付いても何も言わないし、何も言ってこない。

まぁ、脅し以外で話したことないけど。


「それはね――」


ふと、気が付く。


旅商人が目的としてくる理由ならば、俺が知っていいというより、誰もが承知のことだ。


あ、はい。思い上がりました。


顔が急激に熱くなるのを隠しながら、その大したことのない情報を待った。


そして、その情報は俺が全くと言っていいほど予想していないものだった。



「この国はダンジョンそのものなの」



思わず、俺は足を止めた。


「驚いた?」


思い出される俺の中でのヘビーな物語。狼やら冒険者やら日常から離れた濃い時間……。


「タダシ……?」


だんじょん……、ダンジョン……、ダンジョン⁉



「はいぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいッッッ‼」



俺の中での世界観が久しぶり崩壊していったのだった。



大変遅くなりました。。。

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