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異世界だろうとのんびりと  作者: ダルマ787
ーーーーーーーーーーーーーーーーー 第七巻 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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第11話 国王カレン

「……研究者?」


定例会議が終わり、会議室のような部屋で後処理をしていた、カレン、レンナはアージュの言葉に動きを止めた。


「はい。先日、訪問してきた者の中にそういう者がおりまして。少し気になる発言をしていたのです」


アージュは少し言いづらそうにした後発言する。


「研究者であり、開発者でもある商人だと……」


レンナは考える仕草で顎に指を置き、天井を眺める。そして出した答えが、


「それって、つまり、何か特定のモノを自分たちで見つけ、調べ、作ったものを売っているってこと?」


それにアージュは静かに頷く。


「それだけでってことはないのよね? それに気になる発言って部分が気になるわ」


カレンは止まっていた手を再開し、報告書を片付けながら聴いている。


「それが源石を利用しての源素流用」


レンナの肩がぴくッと反応する。


「もちろん、私も耳を疑いました。それに対して特別な反応をするような真似もしておりません。世間一般的な返しもしました」


今更アージュが余計な失態などするはずもないと、余計な詮索はしない。

口元を覆い、レンナは訊くべきことだけを尋ねる。


「そもそも源石は貴重な資材、それを簡単に入手できるとも思えない。それを無名な商人崩れのような者が無名なままいる方がないと思うけど」


「はい。レンナ様の言う通り。ですので、質問はこう返しました。『源石の入手方法は? 次いで、その入手先はと?』」


それだけ聞くと、まるでそれを欲しているようにも思えるが、真意は違うと忍ばせている。


カレンは報告書を束ね一仕事終えたと息を吐く。

その上で、


「相手は、きっとこう思うよね。その二つが真実であれば、信用を勝ち取る為の資金を得ることができる。研究者であり、開発者なら当然、お金がかかる。その為の、支援先がいる」


「私もそう思ったのですが――」


「答えは『答えられない』」


「――っ、はい。そう答えました」


レンナが疑問に思う。

資金調達の為が理由でこの国に来たのではない?


「『ですが、源石の使用は真実―—』みたいな言い回しをされた?」


「え、あ、はい。そうです。源石が貴重なものだと言っても、それは大きさや貴重価値の高い質が良いものだけとは限らないと」


レンナ、自身の姉の姿を見る。

どうしてそれがわかるのかと。


「それじゃあ、その方を招き入れて」


そして、すぐにその答えを出す姉であるカレンに慌てる。

早計ではないかと。


「大丈夫、ちゃんと考えてるよ」


「しかし、よろしいのですか?」


「でも、アージュちゃんはその方を滞在させているんだよね?」


「それは……、一応意見を確認した方がいいかと思いまして」


「たぶんね、その商人は嘘をついていない」


「どうして?」


「うーんとね。そもそも、源石の生活使用はある種族では普通に行われているの。もちろん、簡単なことではないし、世界的に見ても広がってはいない」


「では、その者がその種族であると?」


「んー、おそらく違うんじゃないかな? ちなみにどこの国から来たか尋ねたりした?」


「いえ、確認は可能ですが、その場では確認しておりませんでした」


「じゃあ、あとで確認しておいてほしいかな」


「畏まりました」


「それで、続きになるけど。源石の使用は一般的に二つ。一つは、ダンジョン形成による自然発生によるもの。これは間接的な使いまわしだから、認識的にはダンジョン探索って言った方がいいかな。そしてもう一つが、源石によるエネルギー空間維持」


「精霊契約時に入るアレですね」


「そ」


言いながら、カレンは飲み物を一口飲んで、喉を潤す。


「今度は、種族の話。源石を使用していると言っても、それは器としてって話でね。源石ってとても不思議なもので、見た目は源素をため込んだ石ころなんだけど、その辺の石ころに源素を詰め込んでも維持するのは難しいの」


「自然に放出されてしまいますもんね」


「そ、でもその種族は、源石の器である石をうまく利用して。生活の一部として利用している」


「それはどういったものでしょうか?」


「そうだねー。例えば、料理をする時火を使う。でも、普通は油と火種を生み出す尖った石などを使うでしょ?」


「契約している精霊が火ならば、源素も使いますね」


レンナの意見に、カレンが「あはは」と笑う。


「そうだね。その職に就いている人ならそうすると思う。けど、そうじゃない人はやっぱり、道具を使うんだよ」


今度はアージュが顎に手を置き、答えを探る。


「話から推測するに、器である源石に属性の源素を溜めておくということでしょうか?」


「そ、かまどなら火の属性を、水場なら水の属性をってね。本来、源石の源素の属性は無属性だしね」


「でも、それって物に源素を付与するのと違うのかしら? もちろん、付与自体が難しいことだけど」


「この場合、難しいのは維持って部分。一時的な付与は戦闘においては多いだろうし、広く使われている。そもそも、源石が貴重といわれているのは、その質。内在している源素の量だもん」


「では、あの者はやはり、その種族の可能性が高いのでは?」


「可能性はないとは思うけど、あの種族の方たちって内向的な性格だし、世界的に見ても広がっていないでしょう」


「確かに……」


「そこで、研究と開発」


「あー」


「なるほど」


「おそらくだけど、小さい源石を元に属性の付与を施す」


レンナはそろそろ頭を抱え始める。


「大抵の人間は源素の属性は一つだけ、だとしたら、大多数の存在がそれを付与している?」


カレンは優しく微笑む。


「それだと、あまり商売には向いていないかな。きっとその属性付きの源石は使い捨てだろうし、火を起こすのに、毎回お金払いたくないでしょ? それに戦闘に使うにしても量が足りないだろうし」


「では、開発、研究とは?」


「目的はなんだろうね」


やはりそこは謎なんだと、少しだけレンナは胸を撫でおろす。


「だからね。その方に訪問を促す時、こう付け足してほしいの」


「どういったことでしょうか?」


面白そうだから(・・・・・・・)


その瞬間、


レンナとアージュは、カレンが先代の王から引き継がれた理由を思い知らされた。


これは興味ではなく、好奇心からくる一興の戯れなのだと。


そう理由は書き換えられた。



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