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異世界だろうとのんびりと  作者: ダルマ787
ーーーーーーーーーーーーーーーーー 第七巻 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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第4話 厳しいひと時

「さてと」と俺は本腰を入れる。


俺の旅の終着点が解からないまでも、ここに辿り着いた事への意味は見出している。

どうにかしてお金を稼ぐことだ。


働き口を探すにしても、この世界で労働をしたことが無い俺は、どうゆう職種があるかもわかっていない。

当然、履歴書なんてものはないだろうから、準備もできない。

とにかく俺が言いたいのは、ただただ面接がこの世界にない事を願うばかりなのだった。


しかし、そんな不安も杞憂に終わる。


とりあえず、街の様子を調べに行こうと新天地へと足を踏み出だした時だった。


「待ちなさい」


どこかで誰かを止める声が聞こえた。


俺は振り返ったりはしない。

だって、俺には関係ないから。

それで巻き込まれるなんて御免だ。

俺は面倒ごとに巻き込まれないようにそそくさと移動してしまおう。


「あ、こら、まちなさいって言っているでしょう!」


俺は足を止める。でもまだ振り返らない。


「それでいいの。ひとまず、こっちへ――」


俺は再び進行を開始する。


「ああっ、まてまて、まちなさーい!」


俺だ、俺だよ! 俺が呼び止められてるよ!


まさか知り合いもいない俺が呼び止められているとは思わなかった。

何かしてしまったかと俺は勢いよく振り返った。


「わっ、びっくりした。なんなの、いきなり振り向かないでよ……」


俺が声を無視して先へ行こうと勘違いして、どうやら俺の傍まで近づいていたらしい。

ぶつかりこそしなかったが、案外声の主との距離が近い。


俺は頭を少し下げ、その声の主を見つける。

と、冷や汗が止まらなくなった。


振り返った先には小さな女の子がいる。

見た目から今の俺よりも年下だろう。

でも、この際そんなことはどうでもいい。

なぜ女の子が俺を呼び止めたのかは分からないけど、なによりも、その女の子の後ろ両サイドに、軽装備ながら甲冑に身を包み見るからに女性聖騎士と判る存在がいた。


剣の柄に手を当てている様子からいつでも剣を抜くとでも言いたいのだろうか。


唾を一飲みし、俺は必死に声を出す。


「な、なにかしました? 俺……?」


じぃっと俺を眺める女の子。


「斬ってみて」


「へ?」


チャキンと右に居た女性騎士の腰にぶら下がった剣が抜かれた。


「いやいやいやいやっ」


後ろにたじろいだ俺は、何が何だかわからないけど、逃げる思考一色になる。

ただ走り出す前に抜かれた剣を避けなければならない。


「嘘でしょぉおおおお!」


さも辺り前と剣は俺に頭上を通過した。


当然、俺がしゃがんで避けたからその結果になったわけで、避けなかった時の事を考えるとゾッとする。


もう余計な事は考えない。

俺はすぐさまこの得体のしれない存在達から脱兎の如く逃げ出さなければならない。


しゃがんだ勢いで、反転。


彼女たちから逃げ出そうとして、転んだ。


決してドジっ子だからではない。

剣を抜かなかったもう左に居た女性聖騎士が足を引っかけてきたのだ。


「どう思う?」


女の子が女性騎士に尋ねる。


右に居た一人は、


「悪手かと」


左に居た一人は、


「害はないかと」


「じゃあ、いいわね」


目の前で繰り広げられる不可解な会話。


さらに不可解は先へと進む。


右に居た女性騎士が困った表情で、


「私からは同意いたしかねます」


左に居た女性騎士が困った表情で、


「私からも同意いたしかねます」


何、双子なん? 置いてけぼりにされ混乱している俺を尻目に、女の子が女性騎士の前に立つ。


「あなた名前は?」


答えなければ殺される。


「タダシ……」


フルネームで答えなかったのは、出来る限り情報を与えてはいけないという本能。


「そうなのね。じゃあ、タダシ――」


何を企んでいるのか分からないこの女の子。


「――貴方を雇ってあげる」


最後の最後まで意味不明だった。


だから。


だからね。


言っちゃうよね。


「え、馬鹿なの?」


色々な意味を含めて思わず俺の口から零れ落ちた。


その瞬間、俺はどちらかわからない拳によってぶん殴られた。


それが、俺とサハラド・ナイカとの出会いとなったのだった。



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