第44話 新たなる希望
2024/5/4
誤字脱字、文章編集、ルビ振りを行いました。
二人の冒険者が立ち去ってから、続いた話は世界が隠す存在、兵器と扱われその人生を人として扱われてこなかった魔王の原種であるリンドとシナになった。
「さて、次はお前さんの番だ」
全てを捨てようとしてから勢いよく蚊帳の外に放り出された二人で一人の少女は、言葉を発せない。
タダシの正体を聞き、信じられない気持ちと、妙に納得するタダシという存在。
加えて、自分たちがこの世界でどうしようとしていたのか、色々な感情が目まぐるしく変わり、ついていけないのが本音であり、生きていることが混乱の原因となっている。
それでもこの先の事を考えなくてはならない。
「もう……わからないんだ」
必死に絞り出したのはリンド。
シナは心の中で弱弱しく弱音を吐いた初めて見せるリンドの姿に声を掛ける事を躊躇った。
何を言ってもそれは、自分にも当てはまる。慰めは何の意味も持たない。
「まぁ、そうだろうな。私からもこれといった提案があるわけではない」
「え、ないの? 最後までなんとかしてほしいけど」
「簡単に言ってくれるなタダシよ。お前さんの処理だけで大変なんだ」
そう言ったシンはちらりとナナさんを見た。
すると、ため息一つ吐き、
「私は一度聖騎士団国家へ戻る。お前がその気なら付いて来い」
「あ、もしかして――」
「理由は二つある。一つは、私の立ち位置を明確に切り分ける為、もう一つはアイミケ・ゴ―スキーに会わせるためだ」
リンドの顔は下を向いたままだった。
「誰だっていうんだ……」
「ほら、前に話した俺の知り合いの原種持ち(スピーシー)」
「――ッ、本当に居るのか?」
どうやら以前の話しを信じていなかったようで、驚いてようやく顔を上げた。
「今更嘘吐く必要もないでしょ」
「でも、どうして原種なのに――」
「身の上話は、当人たちでしろ。実際会えるかどうかはイェール様が決める事だ」
そう言ったナナさんだったが、リンドも思うところがあるのだろう。何かを考える事数分の後、
「どちらにしろ、拾った命だ。成り行きに従うしか方法がない」
そう言ったリンドは確かに前を向いていた。
そうして、このお話のエピローグへと移り変わっていく。
第6巻は次で最終話です。




