第21話 悪いこと
(古)21話『冒険者として』→(新)21話「悪いこと」
2021/1/23 読み直し(一回目)編集しました。
2021/3/18 誤字脱字、ルビ振り追加、文章追加、台詞の言い回し変更など、編集しました。
「まぁ、いいか。それでアイミを捕まえるっていうのは」
本題はそっちだ。俺が何者かであろうと、異世界人ってことでもはやどうだっていい。
「先祖がえりは知っている?」
言葉としての意味は分かる。
「世代を飛ばして起こる遺伝現象」
俺が話すたびに驚く少女、俺の挙動に注意を払い正体でも暴こうとしているのか、一言一句、行動の隅々まで見逃さないという視線を向ける。
だが、詰めが甘い。
人見知り、コミュニュケーション能力が低い分、少女より俺の方が人間観察に関しては長けている。
人が不快に思わないように気を遣い、悪い事からとばっちりを受けないようにする危機管理能力。
残念ながら、その程度の年季で俺を見破ることなど不可能に近い。
もはや、これは呼吸をするのと同等の勢いで自然にこなす。
むしろコントロールできない。
「その中でも魔王配下にいたとする種族、その原種の先祖がえりは暴走した時の被害が世界を滅ぼすほど凶悪なの」
覚えはある、アイミから溢れ出ていた黒い気配だ。
「君が感じ取れるかどうかは分からないけど、とてつもなくそれは禍々しいもの」
これが冒険者なのだろう。説明しながらも警戒が一瞬たりとも消えない。それでも俺にその意思はないわけで、俺は無視するように率直に答えた。
「まぁ、黒い気配は見たけど――」
「――見たっ⁉」
驚愕っぷりにこちらの方が驚く。
「君は気配が見えるの⁉」
詰め寄ってくる少女に、常識のズレがまた生じたんだろうと俺は手で適当に払う。
「その手の話はいいや。面倒臭い」
面倒臭いって……と呟かれる声を無視し、俺は確信を突いた。
「それで、どうして俺の方に一人で来た?」
「……いったい君はどこまで知ってるの?」
今までの経緯から監視していたのは、俺とアイミがあの街に行った後の話だろう。
そうなると、それまでの事を冒険者達は知らない。
「とりあえず、君達がアイミの敵だということ」
「――っ、ちょっと待って、それは違うっ!」
初めて少女は声を荒げた。
それでも俺は感情的にはならない。
「アイミと君達が争っているのを俺は見てるよ」
見た目一〇歳の子供の淡々とした口ぶりに少女は深呼吸をした。
感情を前に話してはいけないと気付いたのだろう。
「そうだね、あの時の罠は君だったんだもんね」
落とし穴の事を言っているのだろうが、少しだけ認識が違うようで俺はそれを修正する。
「ちなみに、俺とアイミが初めて会ったのは、その後だよ」
「えっ⁉」
「どこまで勘違いしているか分からないけど、あのトラップカー……罠は獣用でアイミを守るために作動したものじゃない。さらに言えば、俺の家を中心にあちこちに存在してる。さらにのさらに言えば、作りすぎて俺も場所を把握していない」
「じゃあ、君とあの子は…………?」
そう言い、ぶんぶんと首を振る。
あらやだ可愛い、と思えたのは、この少女がアイミに対しての表現を変えたからだろう。
悪い子ではないと考えてしまうのは、年齢の所為か、元々の俺の性格の所為か、この世界にはきっと合わない。
「あくまでそれは君の話を信じた場合の話だっ」
「どっちでもいいけど、君らが来なければ俺とアイミは会わなかった。むしろ、俺を巻き込んだ一端は君達だからな」
「な、どうして私たちが――」
「いきなり山で爆音響き渡らせれば、近くに住んでた俺は確認するしかないでしょ。その上で、アイミの地獄耳で変な出会いが生まれるわけで……そう考えたら全部君らが悪いんじゃないか?」
「だってそれはっ!」
「罪を認めたな」
「ちがっ――」
散々、いじって重くなりそうな空気を誤魔化してきたが、このままというわけにはいかないだろう。
「それで、本題に戻そうか?」
余計な脱線で俺への信用は落ちたようだ。先ほどよりも錫杖を握る手に力が込められている。
「彼女を捕まえる」
「捕まえる? 討伐じゃなく?」
「信じてもらえるかはわからないけど、この数日間で私たちにも戸惑いが生じているの? あなた達の生活は私たちが思っていたものではなかったから。笑われるかもしれないけど、最初は君があの子に捕まって奴隷のように強要されてこんな山の中に生活をしていると思ってた。でも」
実際は俺が主導を持ってアイミに家を建てさせ、それどころか二人で協力している姿がそこにはあった。
「だから、あの子には暴走をしても安全な環境に移動してもらいたい」
正直に話していると思う。
ただ、そこに違和感が生まれる。どこか自信がなく、説得力に欠ける。
そもそも、そんなことが最初からできるなら、冒険者たちはアイミの話を聞いていたはずだ。
「ただ、今まで原種の暴走者の調査なんて前例がない。少なくとも私たちは知らない。そうなるとね、まずはもっと大きな都に行って」
「ダウト」
ビクッと少女の肩が小さく跳ねた。
「さすがに誤魔化しがあると分かるな」
少女を責めるつもりも、その権利も俺にはない。
「前例がないのに、いきなり場所を変える理由がない。むしろ、ここにいた方がいいくらいだ。それにそんな交渉してくるなら、事前にその旨を整理しておくべきだ」
俺にサラリーマンのような商談経験はない。
それでも、行き当たりばったりの仕事はしたことも聞いたこともない。
つまり、それ以外に目的がある?
「うまいけば、君に説得してもらいたい。ううん、もう違うね、君の事も調べさせてほしい」
そう最後に告げた少女の言葉は全てを終えたように、力を持ち合わせていた。
何かを見落とした?
分からない。
だけど、不穏はすぐそこまで来ている。
俺は家の方に視線を向けた。
「何かが起きる?」
その瞬間、家の方で爆発音が響き渡った。
修道服の少女をみた。
「なに、が……?」
「都に行くというのは確かに方便だね。私たちが彼女の事を誤解していたのは確か、でもそれは私たちに限ったことではない。だとしたら、何も確認せず彼女を人々が住む土地に連れて行く事はできない」
強く決意し秘められた瞳は冒険者の物だった。
「君に聞くよ。彼女が町へ入るためには何が必要?」
そんなこと話の流れで――、
「――まさかッ⁉」
「そう、彼女が簡単に暴走しないか確認すること」
「なるほど、俺は最初から時間稼ぎを……」
こくんと少女は頷いた。
「まったく……光栄だね、俺なんかにそこまでしてもらって」
冒険者たちが思う俺の価値なんてものは、本当はない。
だから――。
それは俺が一番わかっている。
だから――。
戦闘になれば俺はまず逃げる事しか頭に浮かばない。
だから――。
「つまり、俺はアイミの味方をしてもいいわけだ!」
「それをさせないために私がここに来た!」
遅れて風に乗ってきた、焦げ臭い匂いが漂う。
シャリーン。
甲高い錫杖の鈴が鳴る。
「動かないで君には何もしない」
静かに、そして優しい声色で攻撃の準備が整った。
「これは忠告です。私たちは災害をここで食い止めるため、そしてあの子にとって最良だと考えた行動をします」
そんなこと、
「相手の事を思って? 誰かの事を思って? はは、そこに本人の意思が加わってないだろ。後付けでいいように説得して本人に納得してもらえば、傷つけてもいいなんて」
そんなこと――、
「嫌いだねぇ」
そんなこと――、
「悪い事してんのとかわんねぇよ」
俺は水のたまった桶と小さな桶で、相対する少女の突破を心みる。
大変申し訳けないのですが、20話目以降書き直すことにしたので、
分かり辛いのですが。
いったんUpした話数(25話まで)は消させていただこうと思ったのですが、負荷がかかるようなので、サブタイトルの前に(古)と書いてあるものは書き直し前の物になります。




