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異世界だろうとのんびりと  作者: ダルマ787
ーーーーーーーーーーーーーーーーー 第六巻 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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第39話 質問

2024/5/4

誤字脱字、文章編集、ルビ振りを行いました。

目前で起こっている現実にシンが本当に見せたかったものが何なのか、俺は理解し始めていた。

最初は修行の延長、自然源素の応用的なモノを見せ、どこかで役に立たせようとしていたのだと思っていた。

しかし、目の当たりにする光景はそんな優しいモノではなかった。


Sランク冒険者、世界でもそこまで多くない存在は、俺がどんな手段を用いても倒せないであろう。

そんな存在である二人の冒険者は元勇者パーティーの一員であり、俺の知らないこの世界での悪い事の琴線に触れた犯罪者であるシンに抵抗すらできず蹂躙され始めた。


源素が見えなくなった俺には、何が起きているのか全然理解できない。

ただ、ラークが吹き飛んだと思えば、マリージュカと呼ばれていた女性が闇の地面に叩きつけられる。


加えて、シンの姿など俺の目で追うことなどできない。

それでもその光景が繰り広げられていると理解できたのは、少しずつ削られていく二人の姿が、殴られたのか、蹴られたのか、はたまた源素を用いた攻撃を受けたのか、闇の世界で幾度となく倒れ込む姿を何度も見て取れたからに他ならない。


始めの内は、そこまでしなくてもという同情心にも似た感想だけだったのだが、次第に何度も立ち上がる二人の姿は絶望と、どう足掻いても逆転の兆しを削られていく心の消耗を見せられる。


先ほどまでの勝ち気が……、どこかで暗躍を成功させようとする企みが、目の前で消えていく。


冒険者である以上、どこかで死を決意し立ち向かうのであろう。

しかし、もうそれすら許されていないだろうに思う。

立ち上がる意思は倒れた先で無理やりに起こされ、本人の意思が行動に移される前に、立たされるのだ。


始めはいい、それが何度も繰り返されれば、立ち向かう者の意思は? 決意は? 戦う意味は? 全てを否定していた。


俺は同情なんてものはできなくなった。

その代わり、シンに懇願するように叫ぶ。


「もう……いいっ! そこまでする必要ないだろ!」


ただ、俺は理解してしまっている。


これは相手に対する断罪や意味のある蹂躙でもない。


シンは俺に、これがこの世界で起こるべきして起こる現実なのだと教えている。

俺の甘さが、いずれ、俺の身、もしくは身近な人で起こる可能性があるのだと。


そして、それを止める為にも、強さが必要なのだと。


「くそったれ!」


俺は闇雲に戦場へと足を踏み入れる。


しかし、それを止めたのは、


「じゃ……ま……すんな……、」


「…………これが……弱者の……末路、」


全てを奪い取られた二人だった。


「……殺せ……」


「…………命乞い……、なんてしないわ」


これが意志ある者の決断。


冒険者としての依頼失敗の一つの結末。


抵抗ができるのは、もう俺しかいない。


きっとシンに立ち向かったところで何もできやしないだろう。

それでもここで何もしないという選択は、俺にはない。


なんでもいい。何か起これ!


俺は唯一できる自然源素を集め始めた。


その瞬間だった。


目の前から覚悟を決めた冒険者の姿が消える。


それだけじゃない。


どこからか聞こえるシンの声が耳に届く。


「考えろ」


何を?


「まだ、お前さんでは何もできん」


だから、何を?


「お前さんに一つ問いかけをする。それに応えろ」


なんのために?


「その解答次第で、未来を変えてやろう」


俺の思考がぐちゃぐちゃになる。


俺の回答次第で二人の命が決まる。


そんな重大なこと背負えるわけがない。


「少し、時間をやる」


俺はない頭を使って考え始めた。



第六巻が終わるまでもう少しお付き合いください。

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