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異世界だろうとのんびりと  作者: ダルマ787
ーーーーーーーーーーーーーーーーー 第六巻 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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第26話 原種再臨

2024/5/4

誤字脱字、文章編集、ルビ振りを行いました。

短い日々だったとしても、そこにはリンドとシナが望む世界が存在していた。


当初の話し通り、リンドは腹が突き出た貴族と仕事の契約を済ませた。


ただし、貴族も馬鹿ではない。

そのままリンドとシナに仕事をさせるには、あまりにリンドは源素を使いこなせているとは言えなかった。


初期投資。

貴族はそう思う事にして、まず、精霊の契約と戦闘などの基礎を学ばせるための訓練をリンドとシナに施した。


結果、月日が小悪党の思考を変えてしまう。


小悪党は完全な悪ではなかった。


自身が結婚し家庭を持つ中で子を授からなかったことで、幼きリンドとシナを見ていくうちに一つの心が芽生え始めていた。


親心である。


戦闘訓練に時間を掛けて成長していく姿は、楽しい日々と感じ実践に送り込む事をしなかった。

そこを別の貴族の悪の手によって、元小悪党だった貴族は狙らわれる。


金というたったそれだけの欲による――暗殺。


静かな夜だった。


深い夜の内、元小悪党貴族は命を狙われた。


リンドとシナの平穏な日々は唐突にその瞬間奪われた。


屋敷の中に屍となって転がる、時には叱り褒めてくれるメイドや執事たち。

最初何が起きているのかリンドは理解できなかった。


心のもう一人の「見るな」という声が通り過ぎていく。


リンドは元小悪党の夫婦の部屋へと走り出した。


まだ屋敷の中に暗殺者がいるかもわからないまま、夫婦の部屋の扉を勢いよく開き、部屋の中へと入る。


明かりはない。


窓から入る月明かりの光だけが差し、明かりに照らされる腹から血を流し転がっている元小悪党の貴族夫婦。


リンドの呼吸が徐々に荒くなっていき、三年という月日の思い出が走馬灯のように脳裏を掛ける。


シナには常々言われ続けていたことがある。


『この家にい続ける限り、気を抜くな』


その言葉も今となっては懐かしい。


その言葉も二年という月日が過ぎる頃には、


『いつまでもこの時が続くことを祈っているわ』


に変わっていた。


心臓の鼓動がどんどん現実へと引き戻そうとしている。


『変わりなさい!』


心の中でシナが、その光景に入れ替わりを強い口調で言い放つ。


「誰がやった?」


それを無視し、心臓の鼓動が徐々に静かに収まっていく。


代わりに、憎しみの感情がリンドを支配していくのにシナは気が付いていた。


『リンッ!』


「シナ、オレは強くなったよな」


『ダメよっ、そんな事で強さを証明してはいけない!』


憎しみがリンドを飲み込もうとしている。


『ッ!』


常に心にいるシナの声が届かない。

きっとリンドはシナも同じ気持ちでいると思っているから。

届く声が同調しているように勝手に変換されてしまう。


止められない……。


そうシナが思った矢先だった――。


「…………リン、……シナ……」


リンドの思考を止めたのはまだ息があった小悪党の貴族の声だった。


「旦那さんっ!」


雇い主、最初はそれだけの関係だった三人の繋がり、


「……約束を…………最後まで…………」


「話さなくていいっ、今医者を連れてくる!」


弱弱しい手がリンドの腕を掴む。


「………すまなかった。………私は……本当は…………利用しようとしていた……」


「だからっ――」


『リン、訊いてあげて』


シナは分かっている。いやリンドも気が付いている。


もう間に合わない。


すでに小悪党だった貴族の視点は何を捉えているのか空を彷徨っている。


「…………だが、い……まは…………」


何を伝えようとしているのか、大切な部分が聞き取れない。


だが、最後の言葉だけははっきりと聞こえた。


「…………逃げなさい。……幸せに……なりなさい」


それを最後、再びリンドとシナは二人になった。


憎しみは消えた。


代わりに虚無感が襲ってくる。


しかし、それも束の間、


『……そこまでするのね』


シナの声でリンドの耳にもパチパチと木々が燃える音と、焦げ臭い匂いが漂っている事に気がついた。


「……全部、燃やす気かよ。オレ達の日々をっ!」


リンドが今度は怒りで立ち上がる。


「もう、止めるなよっ」


『変わりなさい』


「シナっ!」


『大丈夫、今度は止めないわ。私も耐えられそうにないから』


その瞬間、シナが表に現れた。


「リン、分かってる? これからやることは、私たちのこれからを大きく変える」


『笑わせんな、どうせいつまでも二人だ』


「……そうね。これからは、実践が増えるわよ」


『上等っ!』


――その数日後。


ある一つの町が原種の力によって大きな被害を受け、少なくとも町から貴族という肩書の存在は消滅した。


それは魔王原種の再臨として大きな事件となった。


世界は魔王の原種に対して討伐命令を指示し、各国から名を連ねる猛者がそれに参戦。


討伐には数か月という時間を要し、最終的に功績を得たのはとあるSSランク冒険だった。



お待たせしておりました。

色々ありましたが、再開せていただきます。


興味がある方は活動報告に書いておきますので、覗いてみてください。


それでは引き続きよろしくお願いいたします。



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