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異世界だろうとのんびりと  作者: ダルマ787
ーーーーーーーーーーーーーーーーー 第六巻 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
179/243

第12話 不明確な感情

2024/5/4

誤字脱字、文章編集、ルビ振りを行いました。

どうしてこうなった。


話し合いなど一切ない。


リンドが俺とナナさんの姿を見るなり、


「ま、そう都合よく行くはずねぇか」


そう呟いた。


目の前の敵を排除すべく敵意を持って攻撃を仕掛け、それをナナさんがいなす。


俺は慌てて、


「ちょちょちょ、ちょっと待て! なんでそうなる⁉」


「言っただろ、少年。オレ達はそこそこ追い込まれてるんだよ。危険だと感じたら、一切の躊躇は命取りになりかねない。少年のような不思議な存在に会えた事に一類の希望に縋ったが、世の中甘くねぇってことだ」


「いや、だから――」


「理由なら、出会って早々殺気だってるそっちにしな!」


話しを振られたナナさんだったが、返答はない。

ナナさんの視線はすでに、リンドへと向けられ、同じく攻撃を仕掛けていた。


黒い影がリンドを一直線へ伸びていく。


それをリンドが植物の壁で防ぐ。


「タダシ、シンの所へ行け。邪魔だ」


端的な指示だけを出して、俺を追い払おうとする。


「違う! 俺はあの子たちを――」


「原種の力は世界を滅ぼせるほど危険なものだ。加えて目の前の原種持ち(スピーシー)は別人格として存在できる稀有な危険分子、放置などできるはずがない」


冷静にただ仕事をこなすように冷たく言い放たれる。


「だったらどうしてっ、アイミの時は――」


「イェール様の指示だ」


だったら、俺はナナさんのいう事を聞く理由がない。


「なら、俺は二人を止めるよう動くしかなくなった」


そう言い放った瞬間だった。


今まで感じた事のないナナさんの怒りが俺に向けられる。


「ふざけるなよ。今までみたいに甘い考えで物事が綺麗に進むとでも思っているのか。何もできないお前がっ、得られる選択など存在していない!」


源素を感じる事が出来ない俺でも、ナナさんに近づいてはいけないと本能で悟る。


それでも源素を感じる事が出来ないおかげで、鈍感さが俺を突き進める。


「ナナさんには悪いけど、後悔が残る選択だけはしない」


不意にナナさんの表情が温和に変わる。


「言っただろ、お前に選択肢はない」


「――ッ⁉」


影が急激に闇へと広がり、俺の足元へと広がった。

まるで沼にはまったように、俺の身体が徐々に沈んでいく。


「な、なんだこれ⁉」


俺はそれがナナさんの能力である事よりも、沈んでいく恐怖に声を出す。


そんな中で、


「ふーん。なんとなくだが、悟ったぜ。あんたみたいな存在がこんな辺鄙な町にいる理由。さらに、そんなあんたが一緒にいる妙な少年の存在……」


ニヤリとリンドが笑う。


「どうやら、同じ穴の貉のようだな」


リンドは植物を操る。


「くっ」


ナナさんがリンドの行動の意味を悟るが、その判断は遅かった。


数々の蔓が集まった植物があろうことに、俺を闇から救出するために体に巻き付くとそのまま引っ張り上げる。


「うわっ!」


急な浮遊感に悲鳴を上げる中で、地面に広がっていた闇がうねうねと形を変える。


「えっ⁉」


蔓を狙って闇の棘が無数に襲い掛かってきた。


「ちょちょちょちょちょちょ!」


俺はじたばたと暴れまわり、どうにかその棘を避けようと悪あがきをした。


「暴れるなよ、余計に危ないぜ」


棘が当たる寸前、蔓は太く巻き付き、俺を卵の殻の中に閉じ込めるように包み込む。


次に解放された時には、リンドの横で尻餅をついていた。


状況の整理が追い付かない。

この場に敵はいないはずだ。

それなのに、攻撃してきた相手がナナさんの方。

もちろん、俺に危害が及ぶような攻撃ではなかったと信じたい。


「自動防御があるとはいえっ、やりすぎだ!」


なにより、自動防御の発動条件は不明だ。

万が一発動しなかったら俺は串刺しになる。


「さっさと逃げろ」


冷たく言われるそれは、俺がしてきた事だ。

だが、そこに優しさは感じられない。

含まれている感情は、俺がこの場にいることが邪魔だと言っている。


「……分かんねぇな、お前らの関係」


全くだ。


「だけど、妙案を思いついた」


そう言ったリンドは俺の方を見た。


「旅は道連れ、なんとやらっていうよな」


巻き込まれ体質なんてもの俺にはないと思っている。

事実、山で一人過ごして感覚で一年近くは、厳しくも一人で過ごしてきたからだ。

いつからか外の世界に出るようになってから、災いが降りかかりやすい。


「他をあたってください」


平凡な人間なら他にも大勢いるだろう。

そういった人たちと俺の違いは、異世界という部分だけだ。

それを知らないのならば俺である必要がない。


「いや、オレの勘がいってる。お前にはナニかある」


俺はなんて言ったらいいのかわからず、言葉を発せない。


「勝手な事ばかりほざいていろ」


それを聞いていたナナさんは、それが冗談にしろ、本気にしろ、関係ないと言わんばかりに攻撃を仕掛け続ける。


「どっちにしろ、お前は邪魔なのは変わりない。少し、退場してな」


「いやいやいや、俺は君たちが逃げる時間を――」


リンドはそう言い残し俺を蔓の牢獄へと閉じ込める。


隙間なく閉じられたその空間に、俺は成す術がない。

だが、それは閉じ込められただけで、今までと違い、その先はできることがある。


すぐさま、俺は自然源素をかき集めて暴発を試みる。


もちろん、狭い空間であまり集めすぎるのは怖かったから、そこそこの量で留めたつもりだ。

そして、それは想像の中の悪い部分が当たってしまった。


蔓の牢獄の狭い空間で暴発した自然源素は、小さな風船の破裂くらいの衝撃を俺に与えた。

とびきりの量の自然源素を集めれば、蔓の牢獄を破れるかもしれないが、反動も大きくあることは確実。

そして、自動防御に賭けるという手段もあまりに不透明で行動に移すにはリスクしかなかった。


リスクという言葉に、俺は思わず現実を思い出す。


何を行動するにも失敗するビジョンをまず思い浮かべる。

その結果、行動力は失われ消極的になった。


それが悪いとは思わなくなったのは、ある程度歳を重ねてからだ。

そして、それを欠点と認め受け入れた事も、悩み続けるたびに浮かび上がってくることも。


閉じ込められている空間で、小さな身体を体育座りで抱え込む。


「俺は……変わったのかな」


あまりに忙しい日々で忘れていたことを思い出し、今置かれている状況も忘れて、心に引っかかるナニかをぼんやりと抱え込んでしまった。



サブタイトルが変更しました。

「手探り」→「不明確な感情」

それと同時、文章を追加しました。

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