第4話 ポジティブな行動
2024/5/4
誤字脱字、文章編集、ルビ振りを行いました。
心にもやもやを残しながら、俺は町から少しだけ離れた森の中にいた。
そうこれは反旗である。
地獄の訓練後、町から離れた。
もちろん、俺の置かれている状況から遠出をしようなんて勇気はない。
それでも、ちょっとの反抗。一人の時間を作る為の場所を求めて行動に移したのだ。
だが、勘違いしてはならない、訓練から逃げ出す勇気もないのだ。
だから、大それたことは考えもしない。せめて一人に慣れる空間を求める。
ところが、現実問題、
「そう簡単にはいかんのよなぁ」
小さな希望をもって、行動に移したのはいいものの。
懐かしの山生活に必要な能力がなくなって途方に暮れていた。
源素が使えないせいで、身体能力向上ができない。
だから、丸太なんて持てないし、移動も時間が掛かる。
種の急速成長&強化もできないから、ちょっとした土いじりもできない。
そうなってくると、俺はこの森の中で何をしたらいいのか分からなくなった。
ぺたんと座り込みながら、作成物を眺める。
草を集めただけの枕。
風が吹けばすぐにでも落ち葉へと早変わりし、枝と多少の伸縮性を持った蔓で組み合わせた、小屋になる前の小さな屋根。
地面に置けば頭部だけ雨風を防げるだろう。
見れば見るほど悲しくなってきた。
源素を使えればと思わなくもない。
ただ、俺がやろうとしていることは、知識と経験でどうにかなることだったりする。
そもそも、源素で俺ができる事を簡単に言えば、移動と力がメインだった。
技術面を補填してくれない源素があったところで、現状とそう変わりはない。
そう考えた所で、俺は立ち上がった。
言い訳は意味のない事を知っている。
だから、こつこつと出来る事からやっていこうと前向きになれた。
何も源素が使えなくなって出来なくなったことだけではない。
訓練後といっても自然源素のコントロールによる回復は、少なからず俺の物理的な原動力の助けにはなっている。
ひとまず、俺は作るという部分を変え、整地に力を入れる事にした。
大きな石から、小さな石まで、邪魔になっているものを移動させていく。
空間的には四畳半くらいあればいい。時には足で蹴とばして退かし、休憩ついでにどういう形にしていくか考える。
そんな時間を楽しみながら、久しぶりに一人の空間を満喫したのだった。




