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異世界だろうとのんびりと  作者: ダルマ787
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー第五巻ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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第37話 あれから数日後

2023/4/19

誤字脱字、文章編集、ルビ振りを行いました。

数日ぶりの訓練に、冒険者の二人は、大の字になって横に倒れこみ胸を大きく上下させながら敗北を喫していた。


「ぜぇ、ぜぇ……、歯が立たねぇ……」


「……はぁ、……はぁ、死ぬ……」


そんな仲間を見守りながら、病み上がりのルピネスは木陰で苦笑いを浮かべながら二人を見守り続ける。


そして、俺はというと、


「よっと」


メイド服のナナさんの拳を華麗に避けていた。


「ぜぇ、ぜぇ……、タダシに何があったんだよ!」


「……はぁ、……はぁ、死ぬ……」


「ぜぇ、ぜぇ……、使えねぇリーダーだな!」


あれからの事を少し――。


あれから目が覚めた俺は、全てが夢だったんじゃないかと思った。


目の前に広がる天井は見慣れた風景。その所為で俺の妄想での出来事だったんじゃないかと、疑いたくなる。


でも、それが現実だと知ったのは、色々な変化に気が付かされたからだった。


俺が目覚めてから、カルトア達が安堵と共に、気を失った俺をダンジョンから家まで運んでくれたと説明を受けた。


あのダンジョンは、今は封鎖されているらしい。


理由は、二つ。


A級生物ディアが出没したダンジョンという事で、ギルドで本格的に調査を請け負うとのこと。

それは外部の上位ランカーを呼び寄せるらしく、この町の冒険者では依頼そのものを受けられないように手配された。


ギルドにディアの消滅は報告されたが、一ギルドの証言だけでは、A級生物ディアの消滅は信用されなかった。

そして、事実が確認されたとしてもCランクの冒険者がA級生物を討伐したことの報酬は、ないことも決定した。


それは、冒険者達が皆口を揃えて拒否したこと、加えて、どう討伐したかを詳しく説明できなかった為だった。


それを初めて聞いた時、黒い棘の事を思い出した。


あの時のあれは冒険者が放ったものではない。

だから、ダンジョンコアが最後に力を振り絞ったのではないかと俺は密かに睨んでいる。


結果として、誰も説明ができない事象だからこそ、全ての報酬を拒否したらしかった。


後から聞いた話では、ギルドの指示を無視して俺を助けに来たことで、罰則があってもおかしくなかったらしい。

だけど、被害が最小限であった事、ディアの消滅という事実がプラスマイナスに働いたようだった。


どちらにせよ、最後の最後まで面倒を掛けてしまった。


そして、封鎖されている理由のもう一つは、キープダンジョンとしての力が限りなく消滅仕掛けていることだった。


冒険者の皆は、ディアに食われたのだろうと言っていたが、俺は事実を知っている。

繰り返し、ディアと対抗していた狼型の魔獣を繰り出したことで力を使い果たしてしまったのだ。


どちらでも理由としては、同じなので俺は説明しなかった。


このままあのダンジョンがなくなると、『風の行方』のメンバー達ともお別れかと思ったが、コアそのものが消滅していないようなので、次第にまた元の力を取り戻すだろうと説明を受けた。


それを聞いて、まだこの町で冒険者の付き人を続けられるようだ。


そうそう、冒険者ギルドでの俺の対応も少し変わっている。


入るたびに白い目で見られていたのに、今は気軽に話しかけられるようになった。

そこには以前あったような、侮蔑な視線や言動はない。

まぁ、たまに小馬鹿にされることは合っても、冗談交じりで、からかってくる程度なものだ。


少しだけ、冒険者ギルドへ行くのが億劫ではなくなった――。


「やった、避けれた!」


高速で動き回っていたディアで目が慣れた為が、ナナさんの動きが見える。


「無駄じゃなかったー」


子供の成長は早いというが、それが俺に当てはまるとは思っていなかった。

あの恐怖体験が目に見えて生かされる事が、考え深い。


「よっしゃっ、来い!」


今ぐらい調子に乗ってもいいだろう。


「――ふるべぁっ」


ダメだった。


手加減をしていたナナさんの拳は、成長した俺に合わせ速度と威力を簡単に増してきた。

俺の頬を貫かれた俺は人身事故よろしく、大回転をお披露目しながら地面に転がっていく。


「タダシっ!」


唯一心配してくれたルピネスの声は届かない。


「いっでぇえええええええええええええええええええええ」


だって、それどころではなかった。

右の頬が鈍痛で骨までイッったんじゃないかと、ゴロゴロと転がることで痛みを誤魔化さなければいけない。


「おかしいですね、源素の守りが起こると思ったのですが?」


なぜ、それをナナさんが知っているのか知らないけれど、あれは俺の意思でどうこうできるわけではない。


自動防御は、源素切れを起こしてから一度も発動する素振りはなかったのだ。

訓練の時にカルトアに負わされた傷はルピネスが治してくれたし、なにより、よくよく考えてみたら、源素切れを起こす前も、俺は小さな傷やケガは自己回復していた。


あれは、謎の能力なのだ。


「意味が分からないですね」


いや、いきなりぶん殴られたこちらのセリフだ。


「手加減!」


ぎろりとナナさんの睨みが来る。


「来いと言ったのはあなただったはずですが」


ぐうの音も出ねぇ。


「すいません」


相変わらずの早朝の訓練を済ませると、『風の行方』は帰っていく。


朝食の時間に、『風の行方』の参加は許されていないのは変わっていない。

その度にメダが泣きついていたけど、ナナさんは冷たくスルー。


ある時俺は気が付いた。


金銭的な理由で、ご馳走できないのではないかと。

でも、そんなことメダに教えて、お金を払うなんて言い出しそうで、違った時が怖いから教えない。


なにより、一番の変化に、今はまだ誰かをお誘いするのは何となく躊躇われた。


その一番の変化とは、


「いただきます」


「いただきます」


今まで一人でした食事をナナさんも一緒に取るようになったのだ。


理由は全くと言いいほどわからない。


でも、監視状態よりは圧倒的に良い。


会話とはいえないかもしれない、ただの報告。


「今日の……、いえ、ダンジョンでの成果は?」


いつもの日常、それが戻ってきたのだった。



今回の物語で第五巻完結になります。

最後の方は大分急ぎ足になってしまいました。

詳しくは活動報告に書いておきます、興味のある方は立ち寄ってみてください。


そして、

ここまでお付き合いいただきありがとうございます!


『異世界でものんびりと』はまだ続きます、以降もお付き合頂けると助かります!

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