第34話 覚醒?
2023/4/19
誤字脱字、文章編集、ルビ振りを行いました。
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それから俺の叫びにも限界がやってきた。
何秒、何分、何時間、何日、時間の感覚はとっくになくなっている。
それなのに、続いていたのだ。
ディアの猛攻と、予想に反して持続力がある自動防御が、ひたすらに続いていた。
「(殺すなら殺せ。俺の無駄なかっこつけが、とても恥ずかしいことになってるじゃないか)」
しくしくと心で泣いた。
だってさ、思うじゃん。
タイミング的に助けが来るとか、ディアが耐えられずに敗走するとか、なにかしらの変化がやってくると思うじゃん。
ねぇ、飽きない?
人の身体を右へ左へ殴り飛ばして何が楽しいの?
そういえば、途中から気配を消すように狼型の魔獣を出さなくなったダンジョンコアさん、どういうつもりで照らし続けるの? この惨劇を。
なんか、さすがにイライラしてきた。
右に飛んだから、次は左からぶん殴るんでしょ。
ほうら、正解だ。
もうタイミングまで完璧に把握してきたよ。
さすがにね。
「俺が飽きたわっ!」
これまでにない完璧なタイミング、いくら速いと言っても同じタイミングに同じ行動、挙句に無抵抗を続けた人間の突然の強襲、そこに拳を合わせただけのカウンターが華麗に決まる。
始めての俺の攻撃がディアを捉えた。
速度と相まってディアの身体が地面に転がっていく。
それでもダメージは微々たるもの、玩具が牙を剥いたことで、ディアの視線に久しぶりに殺意が戻る。
「いーや、さすがに恐怖は無理よ」
冷静とかそういう次元ではなくなっている。
「しかし、気持ちがいいもんだな、これだけきれいにカウンターが決まると……、」
そして、俺はあることに気が付いた。
「はっ――」
帰ったらきっとナナさんに必ず聞かれる。
『今日の成果は?』
毎日聞かれるその言葉。
もしかして、俺は初めてその成果を胸張って答える事が出来る。
「きた、」
ゼロに等しいかもしれないが、褒められる可能性が生まれた?
「きたきたきたっぁああああああああああああ!」
襲い掛かってきたディアを今度はフックで逸らして殴り飛ばす。
「帰ろう、ナナさんに会いたい!」




