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異世界だろうとのんびりと  作者: ダルマ787
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー第五巻ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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第17話 共同訓練

2023/4/18

誤字脱字、文章編集、ルビ振りを行いました。

冒険者『風の行方』がたった一人のメイドに完全敗北を喫してから数日が過ぎた。


俺の身を案じて噂が広がることを恐れたが、負けた者がそれを広げるようなこともなく、日常は細やかな変化が起きただけだった。


「なぁ、姉さん頼むよぉ」


まさかのメダがナナさんに惚れ込み、ダンジョン探索に行く日まで毎日のように訪ねてくるようになった。

冒険者として伸び悩みの時期だったのか、リーダーに関しては菓子折り持参で尋ねてくるほどだ。


それで、俺の訓練が少しでも緩和されればと思っていたのだが、ナナさんは『風の行方』を完全無視という暴挙に出た。


その度に苦労するのは俺なわけで、


「おい、お前からも頼め」


頼んで聞き入られるのなら、俺の生活はもっと穏やかになっている。


「無理ですよ」


同じことの繰り返しの中でも、訓練に変化はあった。


俺のペースで行われていたはずの訓練に、『風の行方』のメンバーが勝手に参加しているのだ。

こうなると、訓練はスパルタに移行した。


攻防のどちらかの対応は、同時に行われ考えている暇がない。


どこから飛んでくる矢を警戒すれば、拳が俺目掛けて飛んでくる。

メダは計算して放っているから気にするなといい、一応それを信じて拳を突き出せば、リーダーの剣が俺の拳を掠める。


「大丈夫、大丈夫、当てないように気を付けてるよ」


そう言われたが、一度薄皮を持っていかれて、ルピネスに回復してもらった。


新しくできた訓練仲間に訝しんだ眼差しを向けていると、


「休んでいる暇はないですよ」


集中しろと俺だけに向けられた言葉。

それが、こんなにも恐ろしいものに感じるとは思わなかった。


朝から昼にかけては体術の訓練、夜はシンの所で源素の訓練と忙しい毎日を送る。


「しんど……」


これだけのハードスケジュールを送るのは、幼少期以来だ。週に休みがなく習い事を暇なくこなしていた。

別にスパルタな家系というわけでもなかったのだが、流れでそんな感じだっただけだろう。

なにより、俺の親はそういうの面倒くさがっていたし、若かりし頃の俺は活動的だったのかもしれない。


「その所為で面倒くさがりになったのか」


もう思い出せない思い出を振り替えりながら、大の字で倒れこみ広がる広い空。


それも四人だ。


前衛のリーダーはもちろん、後衛のメダも、ルピネスも、たった一人のメイドの攻撃に息も絶え絶えで転がり込んでいる。


ナナさんは無視すると言っても、訓練は四人の冒険者として相手をしている。

それは、俺を強くするという過程で、連携が取れるようにするものらしい。


現状の俺では拳の一つも繰り出せないが、陽動や回避、観察の訓練には丁度いいとのこと。


『風の行方』が来る前の訓練では先が長すぎると、どうせなら利用できるものを利用すると説明を受けた。


それがナナさんなりの優しさなのか、純粋に道具としてしか『風の行方』を見ていないのかは分からないが、優しさだと俺は願うばかりだ。


そんなことを考えていてナナさんと目が合う。


「立ちなさい」


余裕があると思われたのか、再び始まる訓練に悲鳴が漏れる。


「ひぃ」


ところが、


「食事の準備をします、身なりを綺麗にしてきなさい」


早朝の訓練が終わりの時間を迎えていた。


ほっと息を付きながら、俺は次の注意を受ける前に立ち上がる。


「食後に訓練の続きを行います」


「はーい」


いつも通りの指示に軽い返事を返し、しかしながら、ナナさんのメイド口調はさすがだと思う。

俺の前だと本来の口調を隠すこともないけど、誰か一人でも人がいるとメイド口調へと早変わり、俺も似たような事をしていたけど、結局人との関りが増える毎に子供口調の維持ができなくなってしまった。

人見知りの影響と性格もあって一定の距離感がある人たちには敬語になってはしまうのは別にしてもだ。


「すごいんだな『影』って」


徐に零れた感想に、前を歩くナナさんの足が止まった。


「私の存在に口を出すな」


「え?」


「『影』が影であることを表に出すなと言っている」


そう言われた初めて俺は理解した。


確かに、変装している人の本来の姿を明かしてしまっては、変装そのものの意味がなくなってしまう。

だから、今のナナさんの存在はあくまでメイドであり、それ以上でもそれ以下でもないということだ。


「す、すいません」


俺は慌てて、倒れこんでいる三人の姿を確認した。

まだ、疲労回復に専念しているようで、こちらの声は届いている様子はない。


しかし、その行動もナナさんからすれば、呆れたようでため息をつかれてしまった。


それに俺は「しまった」と内心で落ちこむ。

普段ならそういったことに敏感で、得意な方なのに、訓練の疲れから気を張れていないようだ。


「こういった部分も気を付けなきゃいけないな」


反省に浸っていると、ナナさんがじっとこちらを見ていた。


「何?」


普段は見せない何かを聞きたそうな眼差しに思わず尋ねた。


「……別に」


返答は相変わらず素気ないもので返される。


なんだろう、と思いはしたが、それ以上聞いたところで無駄だろう。


すでにナナさんも玄関の方へと歩を進めている。


今は、次の訓練までの少ない休憩時間を大切に、ゆっくりと食事を楽しもう。


そう思い俺もナナさんの後を追い始めた所で、


「あっ! そういえばお前自然源素どうなった?」


メダの疑問に再びナナさんの足が止まった。



今回の話しは長くなってしまったので、分割してUPします。

10時、11時連続投稿です。

よろしくお願いいたします。

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