第16話 ウォータリー・ナナカミラ
2023/4/18
誤字脱字、文章編集、ルビ振りを行いました。
『暗部』、それが聖騎士での『影』と呼ばれるナナカミラの役割だった。
人の目につくことを避け、人の目に入らない為に、日常に溶け込む。
時には教師に、時には旅人に、時には暗殺者に、だから、様々な事が出来なければならない。
そんな完璧ともいえる彼女にもなれなかったモノがあった。
彼女にとっての完璧な存在、ジャンオル・レナン。
嫉妬すら抱かなかった存在に抱いたのは、初めての憧れだった。
それから、なろうとはしなかった。
ただ、その背中を見続けることができれば満足だったから。
しかし、その時間はあっさりと終わりを告げる。
隊の者のほとんどが知らない。
彼女が何を思い、何に呆れ、何に嫌悪を抱き、何を思い立って聖騎士を辞めたのか。
彼女の事を本当に知るものなどいない。
そんな彼女が興味を持った人間がいた。
わけの判らない存在、異世界人ナカムラタダシ。
彼女の事を一つでも多く知る為に、この異世界人を知る必要がある。
その為に、死んでもらっては困る。
理解できるその日までは――。
ウォータリー・ナナカミラは、ナカムラタダシを理解できない。




