第9話 修行の始まり
2023/4/17
誤字脱字、文章編集、ルビ振りを行いました。
「まずは、集中しなさい」
修行が開始されて一番に言われたのは、そんな曖昧なことだった。
だから、俺は座禅をし、手を組みそれっぽい姿勢で取り組むことにした。
それに対してシンは納得してくれたようで、近くに腰掛けるとただただ俺を監視し続ける。
「え?」
まぁ、集中しろと言われそれっぽい姿勢を作っただけの俺は、すぐに疑問に声を上げた。
もちろん、何をしているのかわからなかったからだ。
「自然源素を感じるところからだ」
何やねんそれ。
「お前さんはそれをすでに感じ取ったことがあるのだろう」
そう言われ、思い出してみる。
俺が自然界に存在する源素を始めて感じたのは、索敵をした時だ。
だけど、それは源素を使って集中することでできた。
ところが、現在それはできない。
立派な矛盾である。
「自然源素は常に傍に存在しておる」
俺の少ない脳みそを使って考える。
見えないだけ、もしくは感じるのに意識しなければならないモノ。
近いもので言うなら空気。
そこに存在しているけど、目視することができない。
でも間違いなくそれは存在しているからこそ、生物は生きていける。
そして、それは源素も同じだという。
組んでいた手を解き、両手を上に広げる。
一度感じた源素は粒子の雨、一つ一つ違い色を持ち、流れるままに飛び交っていた。
集中してみると、洞窟内で流れる風が全身で感じる。
つまり、自然源素も同じように流れている。
しかし、源素を直接感じることはできなかった。
でも、そこに存在しているイメージだけは崩さない。
そのまま、今度は源素を使えていたことを思い出してみる。
どうやったっけかな。
なんとなくてやってみた事を、言葉にするのは難しい。
「う~ん」
集中力が途切れた。
それでも行為を辞めたわけではない。
だから、目は瞑ったままに、考え方を俺らしくしてみる。
とりあえずでいい。
俺は物事をできるようになるまで人より時間が掛かる。
だから、才能なんてものはないと思っている。
出来なかったことはできなかったという事実を受け止めるのには慣れていた。
だからだろう、気楽な気持ちだけはなくさない。
解かっている事だけを整理する。
感じることにできない源素はそこにあり、常に触れている。
だとしたら、触れているものをただ掌に――。
「お見事」
シンの声に静かに目を開けると、掌が源素の光で輝いていた。
ぎりぎりになりましたが、今年最後のUpになります。
それでは、皆様良いお年を!
2023/1/31、8話を追加したので、話数がずれました。




