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異世界だろうとのんびりと  作者: ダルマ787
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー第五巻ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
137/243

第8話 メイドの噂

2023/1/31。

9話を追加UPしました。

すでに読んでいただいた方は、以後話数がずれています。


2023/4/17

誤字脱字、文章編集、ルビ振りを行いました。


生活する為には、物資が必要である。

その為にナナカミラは、草カゴ片手に買い物をするために町中にやってきていた。


ナナカミラの現在は任務ではない。

一応は、ナカムラタダシの監視という名目は持っているものの、組織だっての行動ではない為、他に仲間と呼べるような手助けはない。


その為、手持ちがなくなれば、日常必需品の支給は現場で手に入れる他ない。


監視対象であるナカムラタダシにその手のことを、指示することもできなくはないのだが、ナカムラタダシには余計な時間を使わせるわけにもいかない。


なぜなら、ナカムラタダシは、学園での一件以来源素を使えないという非常事態に陥っているからだ。


つまり、自身で身を守る(すべ)はなく、逃げるための防衛すらままならない。


それはナカムラタダシの護衛と言えなくもないが、ナナカミラにはそんな意思はなかった。

ナカムラタダシを隠す理由は二つ。


一つは、世界の混乱を防ぐため。


もう一つは、元聖騎士機関(セントオルガン)聖騎士長(ロイヤルナイト)ジャンオル・レナンが興味を持った少年の品定めをするためだった。


何を考えているのか、何をしようとしているのか、聖騎士時代の頃から解からなかった憧れを超え、敬愛する隊長の興味をさらった存在。

それをこの目で確かめなければならないと、志願したのだ。


その為にも、ナカムラタダシには、本来の力を取り戻してもらう必要がある。


だから、お買い物など自身ですればいい。

その為に、家使いであるメイドに変装することにも抵抗などなかった。


しかし、問題は起きた。


「誰かに見られているな」


元『影』であるナナカミラは不審な気配に気が付いた。


それを相手に悟られるように、普段と変わらないメイドスタイルで町中を歩き続ける。

白昼堂々、人通りもそれなりにある中での強襲はほぼないだろうと結論付けながら、それでいて警戒は怠らない。


「素人だな、しかし……」


簡単に気配を察知される使い手の評価は低い。


それでいて、問題はある。


あまりに気配が多いのだ。


裏道に入り、撒くことは簡単だろう。


しかし、それでは、普通のメイドとしての行動とはかけ離れる。

ここは、普段通りに過ごすべきだろうか。

そう考え、視線を気にしつつも露店が並ぶ通りへと入った。


朝から並ぶ露店は大きな町からすれば、品数もそこまで多くなく小規模なものだ。


だが、日々を過ごすだけならば何ら問題はない。


上級階級の生活は必要がなく、むしろ、この町に溶け込むくらい一般的でなければならない。


そうして、野菜が並ぶ露店の一つに立ち寄る。


普段の口調を声色と共に変え、男性店主に声を掛ける。


「すみません、こちらの食材はどのように調理するのが一般的ですか?」


「へい、らっ――うぉっ、ららっしゃい」


なにやら驚いた店主はナナカミラの姿を一瞥するが、すぐに接客に移る辺りプロだなと感心する。

だが、まだまだ一般人、何に動揺したのかナナカミラは理解できなかったが、それすらも隠すのが『影』である。


「トマムだね、これは煮込んでもいいし、もちろん生のままでも食えるよ」


「そうですか、ではそれを二つほどいただけますか? それと、こちらの緑の野菜と――」


店主に赤い野菜を使ったレシピなども聞き出し、いくつか購入すると、店主が驚いたこと以外は弊害なく終わる。


「ありがとうございます」


「それでは」


「あ、ちょっと」


「なにか?」


急に呼び止められる。


「あんた、この町はずれの屋敷に住んでるのかい?」


あまり、情報を出したくないはなかったが、家を隠すことはできまい。


「そうですが、それが何か?」


警戒すべきかと思案し、


「貴族様でもいるのかい?」


「いえ、このような町に貴族様は来られないと思いますが」


何を探っている?


「そ、そうだよな」


消すべきか?


「じゃあ、その恰好……、いや、なんでもねぇんだ。すまんな、また買いに来てくれや」


恰好?


「家事や掃除、家中のことをするのはメイドの務めだと相場はきまっていますよ」


「へ? あ、ああ」


「では(常識のない店主だ)」


今度こそナナカミラは野菜を売っている露店から離れた。


そんなナナカミラを見送った露店では、


「母ちゃん!」


店主は店の奥にいた奥さんを呼びつけ念の為確認する。


「なんだい?」


「メイド服着たことあっか?」


「あるわけないだろう!」


当たり前に怒鳴られた。


「だ、だよな」


自身の常識を確認し再び仕事に戻っていった。


その後もナナカミラはいくつかの店で同じ反応をされながら買い物をし続けた。


「変わった町だな」


そう感想を述べる。


聖騎士団国家(セントクロス)から遠く離れた地。


貴族が来た過去などない平凡な冒険者町。


だから、ナナカミラは知らない。


メイド服を着た従者は町中から視線をかき集めるという事を。


そして、裏では町の端にメイドがいると噂が広まっていく。



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