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異世界だろうとのんびりと  作者: ダルマ787
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー第五巻ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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第5話 小さな歴史と師

2023/4/17

誤字脱字、文章編集、ルビ振りを行いました。


連れて来るだけ連れてきたナナさんは、本当にすぐに帰っていった。


急に心細くなった理由は二つ。

知らない人が目の前にいる事、急に姿格好が違う生物が目の前にいる事の二つ。


人見知りを発生するにしても、どう接していいのかいろんな意味で分からない。


ひとまず、一応社会人としての適応は見せておく。


「あ、あの、失礼ですが……」


「そうだな、ひとまず事情は聴いているとだけ言っておこうか」


「へ?」


「偶然ここに来るものはおらん。そしてあやつは私の少ない知り合いの一人だ」


言葉を遮られた割に情報が薄い。


「ふむ。どうやらお互いに聞いておいていた方が良さそうなことが多くありそうだ」


なんでだろう、この世界で初めてまともに話せる人に会ったような気がする。


「よかろう、質問があるならば答えよう」


「ええと、じゃあ、ゴブリンでよろしいんでしょうか?」


「正確にはシン・ゴブリンという名の種族だ。ゴブリン族ははるか昔に絶滅しておる」


「え、ゴブリンなのに⁉」


俺の中のゴブリンは繁殖力の高い生物だと認識している。


「では、少し説明するか。おそらくお主が想像しているゴブリンは合っておる。しかし、それは遥か昔の存在だ。そうだな、お主はどれだけの種族と出会った」


そう言われると、見た目の違う種族ってどれだけいただろうか。

知っているだけならアイミのゴーゴン族くらい。その他は、勝手に人族だと思っていた。


「たぶん、ゴーゴン族くらいだと」


「見た目は人族であっただろう」


そうなのだ、この世界に来てから知性のある生き物はファンタジー要素のない人の姿。


「お主はどれくらいこの世界にいる?」


「え、たぶん一年弱……」


「ならば、歴史の話しだ」


歴史……。


「ゴブリンの進化の先にも色々な形はあった。しかし、共通して繁殖先はゴブリンであり、雄しか生まれない。繁殖相手はヒト型の生殖能力のある雌である」


それが昔のゴブリン。


「当然、他種族からは嫌われ、討伐対象であった」


「だから、絶滅……?」


「ゴブリンの繁殖能力は高いと言われてはいるが、寿命で言えば最弱の方だろう。長くても四、五十年、それも稀であろうな」


「それだったら、絶滅までいかないんじゃ」


「問題は世界平和もある」


どうしてその言葉が問題になるのかわからない。


「魔王がいた時代はゴブリンなぞに戦力を割いている余裕がなかった。その為にゴブリンは増えては減りを続けることができていた」


少し、悲しい気持ちにもなるが理解はできる。


「世の中が平和になり他種族間での蟠り(わだかまり)も少なくなれば、繁殖行為などの非難から共通の敵として積極的に狩りの対象になった」


そして、話しは今まで感じることがなかったファンタジーの話になる。


「そして、この時期に人族という存在が大きく勢力を拡大することになった」


「え?」


「異種配合」


「異種配合?」


「例外を除いて、他種族間の間で子は生まれることはない」


「例外はゴブリン、それが嫌われた理由……」


「他に言えば、エルフとダークエルフ、獣族間の類似種族などがある」


エルフや猫耳やらもいたというのか⁉


「そして、例外中の例外」


話しの流れから、


「人族?」


「人族と他種族の間からは子が生まれる」


そこで疑問は生まれる。


「それはどっちの?」


「答えはどちらもだ」


頭の中で整理していく。


「それって長い歴史の中で繰り返したら、」


「最初の頃は、他種族間仲良くで済んだ。だが、次第に姿形が人族の者が多くなり、血が薄まっている事に気が付き始めた」


そうなると、自ずと争いの火種が思いつく。


「魔王がいなくなってから初めての戦争だ」


俺はどんな表情をしていたのか分からない、誰もが争いなど望んでいない、それは誰もが解かっている事なのに、どうして……。


「そんなこと……」


「そんな顔をするな。争いは良くない事だが、それを乗り越えた先に得たものもある」


「命を懸けて得るものがあってもね……」


「それに気が付く為の争いだったのだろう」


「…………」


答えのない迷路に迷い込むほど俺は考えさせられる。


「それもまた昔の話だ」


歴史は俺が思っている以上に長く長く紡がれている。


そうして、今の形が出来上がっていたのだ。


「あれ、ゴブリンは?」


今更、俺が重く考えても仕方がないと気持ちを切り替えると、疑問が残っていた。


「しぶといだろ?」


重くなった空気を壊そうとしてくれたのか、見た目とは違って茶化した様子で老人のゴブ……。


「あ、その前に遅くなりました。異世界人の中村正です」


そう自己紹介をした。


「かっかっか、そうだったな。私はシン・ゴブリン族のシンだ」


突然変異から高い知性と長い寿命を持った最初で最後の種族、それが俺の師匠になった。



11月がほとんどUp出来ませんでしたが、12月は少しはペースを上げられるはずです。

がんばるもす!

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