第4話 ファンタジーッ!
2023/4/17
誤字脱字、文章編集、ルビ振りを行いました。
冒険者のお仕事の後、夕食を食べれば、日は完全に暮れた。
連れてられた先は、絶壁に囲まれた奥の細道。
その狭間から見えるお月さまのような星がとても綺麗に見える。
そんな、意識が明後日の方向に向かっていると、
「着いたぞ」
明らかに場違いな服装のナナさんの足が止まった。
そして、お気づきだろうか。
これは夕食後の話しであり、すでにナナさんが用意したりっぱな一軒家から、徒歩で移動する事数時間が過ぎているのだ。
「キャンプですか?」
きっと、ボーイスカウト的な訓練をしようってことなんだろう……、
「私はここで帰る。後は自身で学べ」
家政婦モードの口調も人里離れれば軍隊モードへ突入する。
だからこそ、違うねこの雰囲気、明らかにナナさんの視線が絶壁の先を捉えている。
「だ、誰かいます?」
おそるおそる尋ねると、たった一言。
「師を用意するといったはずだ」
端的に任務を遂行するよう言われた。
岩壁と岩壁の間は暗闇で先が見えない。
風が通り抜ける音が不気味に鳴り響き、来るものを拒んでいるようにさえ感じる。
これは行ってはいけない。
「では、お疲れさまでした」
俺は、早々にナナさんに別れを告げ、居なくなってから、どうしようか考えることにする。
だって師とは言っているが、それが人とは、この人一度も言っていない。
蟲毒、あるいは獅子が谷からわが子を落とすが如く、荒療治による訓練とは名ばかりの修行だったら俺は死ぬ。
今の俺は源素が使えない、逃げ足だって徒競走レベルの一般人なのだから。
だから、使えない頭でできる限り命を脅かす可能性をつぶさなければならない。
ところが、
「挨拶ぐらいできんのか?」
闇の中から、不気味な老人の声が反響して伝わってきた。
「きたか」
ナナさんの落ち着いた素振りとは裏腹に、俺の喉がごくりと鳴る。
これは純粋な恐怖。
何が来るのか不安の恐怖、人間だったら人間で人見知りが発動する恐怖、どんなパターンであれ、恐怖に変わりはない。
そして、その人ではない者は現れた。
「私を訪ねてくる者は久しいな」
ファンタジーでは定番中の定番の姿をした老人がそこにはいた。
「ご、ゴブリン?」
木でできた杖を持ち、暗闇から表した者は一昔前の竹刀持った体育教師のように身構える。
「ん、なるほど。異世界人か」
色々と突っ込みたいことはある。
「こいつを任せたい」
これは、叫ばずにはいられない。
「私の所にくるものは面倒ごとばかりだな」
この世界に来て一年と数か月。
「任せた」
今更、
「いい暇つぶしにはなりそうだ」
どうして今更、
「ファンタジーッ!」
二つの冷たい視線が俺を捉えていた。
本日もう一話UPします!




