第3話 生活スタイル
2023/4/17
誤字脱字、文章編集、ルビ振りを行いました。
あの頃は良かった、年齢を重ねるたびにそう思う事は多くなった。
それはこの世界に来ても同じだと直近の出来事で強く思い出された。
とある事件の濡れ衣を着せられ、とある学園を離れて早数か月、生活基盤が出来上がるまでの期間で俺の身体に一つの変化が起きていた。
それが俺のチート能力だと思っていた源素が使えなくなったことだ。
原因は明確には分からないが、同行者曰く、無茶な源素の使い方の反動での源素切れとのこと。
どういうわけか、普通の源素切れのような症状は現れない代わりに一切の使用ができない。
一応回復はしているようなのだが、それも俺からは分からず、その同行者から言われて知っている程度。
そうなると、元々のチート農業で生活費を賄っていたこともできず、身体能力の向上もままならない為に、こうなった。
金は冒険者になって稼げ。
同行者の恫喝にも近い提案で一番避けていた世界へと迷い込んだのだった。
もちろん抵抗はした。
『新しい波』であるジオラルと同行していた期間で聞いた冒険者の年齢制度を言い訳に、抵抗したのだが、例外はあると言われ、冒険者内での条件試験を合格できれば年齢を問わず冒険者になることが可能だという。
そんなわけで、強制的に試験を受けさせられたのだが、もちろん結果は不合格。
当然だよね、源素を使えなくなった俺は普通の人間だもの。
むしろ、微妙に体外に放出される源素もなくなっているのだから、それ以下、どうやったっていい意味での例外になどなれるわけがなかった。
そんな中、『風の行方』のメンバーと出会ったのが運の尽き。
冒険者との同行を許され、適正年齢になるまで訓練を積むか、その前に条件クリアの水準まで強くなるかの二択になった。
ま、冒険者ギルド内での出来事で失笑と嘲笑の嵐になったのは言うまでもないだろう。
そんな状況で生活基盤を俺が作れるわけもないので、俺は同行者の命令に忠実に生きていくしかなくなってしまったということだ。
今日も一仕事終えて、疲れ果てた体を引きずるように帰ってきた小さな豪邸。
ある意味でこういった家を山の中に作り、生活するのが俺の夢になっている。
キィと甲高い音で開く門、その豪邸の玄関までの足取りは重い。
ため息一つ、ノックもしないで空けた扉の先にメイドさんが君臨した。
メイド服を着用し、この家を守る守護神として君臨する家主であり、俺の同行者であるウォータリー・ナナカミラこと、ナナさんだ。
元聖騎士団国家、聖騎士機関所属、『影』の役割を担い、現在はフリーの聖騎士と活動していた彼女は、学園での事件をきっかけにどういうわけか、俺の監視者となった。
「今日の成果は?」
一瞬たりとも、にこりとしない表情で毎度聞かれるこの質問。
「ぼちぼちですかね、はは」
毎度誤魔化し、反応はゼロという地獄。
「食事にしましょう」
そういって背中を見ながらバレない様にため息を吐く。
どうしてこうなったか。
理由はどうあれ、冒険者であった勇者の伝説の剣を破壊した者を放置はできないと着いてきた。
まぁ、結果として俺は屋根の下で生活ができているわけだけど。いつまでこんな生活が続くのかも分からない。
源素もいつ使えるのかもわからない。
分からないことだらけで、俺は今日もまたお食事をご相伴になる。
「食後は訓練です」
もう日は落ち始めているのです。
「……はい」
それもまた俺の新しい生活スタイル。
「それと、今日から師を用意した」
師匠の元、源素取り扱いの修行が開始される。
「……はい。ん? はい⁉」
俺の知らないところで事が進んでいく。
それも楽だけど辛い。
ただ、拒否権はまだない‥‥…。
12月は安定する予定




