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異世界だろうとのんびりと  作者: ダルマ787
ーーーーーーーーーーーーーーーーー 第一巻 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
13/243

第13話 ぶつかったのは果たして、胸かお腹か……

2021/1/23 読み直し(一回目)編集しました。

2021/3/17 誤字脱字、ルビ振り追加、文章追加、台詞の言い回し変更など、編集しました。

捜索は地味に難航した。


それらしい服屋に辿り着けばアイミはそこにいると思っていたのだが、何件か服屋を回ってもいない。

雑貨屋も冒険者用の防具店も立ち寄るがそれは変わらなかった。


「どこに……?」


こんな時にモールのような迷子コールが使えればと思うが、異世界ファンタジー満載のこの世界にあるはずもない。


現実逃避もすぐにやめ、すぐに考える。


「そうか……」


よくよく考えても見れば、アイミの能力上目を開けたままの行動は制限される。

だとしたら、店に着く前にそれにアイミ自身が気付いた可能性がある。


「だとしたら、」


きっとまた目を瞑るだろう。

しかし、それは店の中ではない。

そして、街の中でも人通りが少ない場所を選ぶはずだ。


「建物の隙間や、裏路地」


範囲は絞られる。


俺は来た道を振り返り、裏路地へと走り込んだ。


性格上アイミの名前を叫びながら探すのは抵抗があった。

最低限の呼びかけはするにしても、それで見つかると信じ、走り続けるしかない。


すぐに見つかることを願ったが、簡単にアイミを見つけることはできなかった。


この街は大きく分けると、住民の生活区、商業ギルド、冒険者ギルドの三つで分けられる。

人々が普通の暮らしを中心に考えると生活区が多くを占めている。

そうなると、賑わいの多い道以外を視野に入れてしまうと、人一人探すのは街の住民ではない俺には困難だった。


予測できるアイミの行動を考えれば、身を潜めるという行動で人の少ない場所へと移動してしまう可能性があった。


「くそっ」


目を瞑っていればそう行動範囲は広くないはずなのに。


裏路地を一人ぶつぶつ呟きながら、歩みだけはやめず考えながらアイミの捜索を続けていた。

そんな時だった。


「きゃ」


路地から通りへ出た時だった。


誰かとぶつかる柔らかい衝撃にバランスを崩した。

考え事をしていた所為で辺りに注意を払っていなかった。


「ごめんなさい、考え事してて」


咄嗟に謝罪をしようとすると、こちらよりも早く相手側が謝罪をしてきた。

遅れを取ったことに慌てて頭を下げる。


「あ、いえっすいませんっ、こちらこそ人を探してて注意を怠ってました」


そう言いながら下げた頭を上げ、相手の顔を確認した。


すでに薄くなった顔立ちの記憶が、修道服という強烈なインパクトに一瞬で目覚めさせる。


「(Bランク冒険者(ヒーラー)っ⁉)」


山でのひと騒動の中にいた冒険者パーティーの一人の少女。

現状、一番会ってはならないうちの一人だった。


俺は慌てて表情に出さないように冷静を装うが、きっとうまくいっていない。

あまりに突然でその準備も心構えもできていない。

だが、それだけではきっとアイミとの接点は気づかれないと思う。

そもそも冒険者は俺の存在を認知していない。


だから、そのアドヴァンテージを動揺で気付かれるわけにはいかなかった。


俺は必死に心臓の動悸を落ち着かせようとした。


しかし、元々俺はそういうことを考えた時点でテンパる。

よってめあわあわしながら意味は違えど動揺を隠せなかった。


「迷子?」


ところが、修道服の少女は俺の言動と焦った様子から、当然の解釈をしてくれる。

まぁ、残念ながらこれで冷静になれるほど俺の緊張しいは甘くはない。

さらに言えば、与えられた能力によって人との接点を限りなく少なくしている現実。


「(あれ、ダメ人間が加速している?)」


そんな悲しい現実が俺を正気に戻した。


正気に戻った証拠に、服を買うだけで喜びいなくなったアイミを思い出した。


その所為で迂闊にも、


「……あははは、どっちが」


口を滑らせた。


しまったっ! と思うが、修道服の冒険者は理解できずに頭を傾げていた。


思い出される前提条件。

俺と目の前の少女は接点がない。


再び動揺が蘇るが、おそらく目の前の少女が答えを見つけ出すことはないだろう。


「あ、いえ大丈夫です。すぐ見つけられると思うので」


それだけ言い残し、最後に頭を下げさっさと立ち去ってしまおうとした。


だが、その前に呼び止められる。


余計な親切心だけは、頼むから思いつくなよと心の底から願う。


「ごめんね、ちょっと聞きたいんだけど、君くらいの少年で商人をしている子って聞いたことないかな?」


ところが、全く予想外の質問をされた。


「子供の商人ですか……」


よくよく考えてみれば、Bランクの冒険者パーティーはまだアイミを探しているのだろうか。

冒険者とはいえ、偶然出没した害なす者(勘違いだとしても)を報酬なしに探し続けるよりも、別の正式な依頼を受けるのでないのだろうか。


「ふむ」


俺は表情を隠す様に口元を手で覆い考え込む。


考えすぎだったのかもしれない。

俺の知識にある冒険者は自分たちに向かって来る敵に対してと仕事として受け持ったことに剣を振るうが、偶然の害なす者を執拗に追わない。

もちろん、それがあからさまに危険だとかなら話は分かる。


しかし、今回はアイミの禍々しい気配とやらが原因。

言葉は濁していたが悪いこと事態はしていないと、本人から聞いている。


そう考えれば、あの一幕はすでに終幕を迎えているのではないだろうか。


「あ、いいのいいの、知らなかったら、じゃあ、別の事を聞いてもいいかな?」


そこまで考え、次の質問へと移り変わる。


「え、はい。大丈夫です」

「よかった、露店で最近人気の野菜を売っているお店の場所って分かるかな?」


二つ目の質問でそれは確信に近いものを得た。


「ああ、それなら」


あまりにも質問の内容が、アイミから離れている。


「朝市は毎度場所取りから始まるので」


疑いも、警戒も必要ないのなら質問を答えてさっさと済ませてしまおう。


「最近は広場の中央を取れるみたいで、今日も中央付近に出ていました」

「ありがとう。探している人すぐ見つかるといいね」


修道服の少女は眩しいくらいの笑顔で手を振って見送ってくれた。


できることなら、その好感度を保ったまま二度と関わらないことを祈ろう。


「さてと、本題に戻るか」


少し気が楽になったことで、思い出したことがある。


「ああっ、フード被れば移動はできる」


目を瞑るというのはあくまで誤って石化をしないようにするものと、禍々しい気配を隠すという二つの目的がある。

それに禍々しい気配単体での範囲はそこまで大きくない。


そう考えればアイミ自身が行動したいと思えば、その方法は普通にある。

思い込みでアイミが目を瞑ってその場に留まっていると解釈したが、もし、俺の事をアイミ自身が探していたとすれば、お互いにすれ違う可能性は十分にある。


そして、探した結果見つからなければ、どうするか。


「いや、あんな目印のないところに戻れるか……。だとしら、お互いの共通認識は……。結局あそこか」


そう思い、俺は一度行った場所へと引き返した。



そして、俺は思い知らされる。


全てを都合よく考え、考えた先が間違いだったことを。


それは思考の怠慢でしかなかったことを。


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