第30話 種は植えられた
第一回編集(2022/12/4)
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先に声を上げたのはアルだった。
「うぁああああっ!」
体面もなく悲鳴に似た叫びは、ぼろぼろになった体に活を入れる為。
傍に合った石を握りしめ、徐々にその体を起き上がらせる。
立場は違くとも、思いは同じ。
学園一位として、ミヨは立ち上がって見せる。
「背中はもうみせない」
追いかけてくるものを、待つのはもう終わりだ。
なぜなら、世界にはまだまだ、追い付かなければいけない背中がある。
「ふざけるなですわ」
ただの意地。
順位など無意味。アミラの目標は壁を超える。
追いかけていた背中は、身近なものであって、目標にするには小さい。
だとしら、さっさとそこを追い越さなければいけない。
「堕落なんてしてられっかよ」
「停滞は終わりです」
忘れていた競争心、目標を思い出し、小さなエゴも全て壊された。
名ばかりの聖騎士団国家の座は、背負うものであって掲げるものではない。
各々の思いを胸に、立ち上がる。
だって、戦い方も知らず、ただ逃げる事しかできなかった少年が、これだけのことをやって見せたのだ。
その少年に借りを作られた。
あの盤面で殴らなかったのは自身でやって見せろと、代理で殴らせて何の意味があるのかと、俺にできたのだから、お前らだったらできるだろと、そう言われたのだ。
前に進むための負け犬の遠吠えが木霊する。
負けたばかりだというのに、活気ある姿たちにアレクは目を疑いながら、タダシを見た。
「君はいったい……、何者なんだ」




