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異世界だろうとのんびりと  作者: ダルマ787
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー第四巻ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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第28話 ドゥルガー

第一回編集(2022/12/4)

誤字脱字の修正、文章の修正、文章の追加、ふりがなの追加、言い回しなど編集しました。

空間が歪むほどの存在感がそこにはあった。


サイズは本来のものかはわからないそれは、大きな二本の牙を持ち、神々しく着飾ったトラ型の光の精霊。

額には三つの目を持ち、どういうわけか一〇本のさまざまな武器が辺りを浮遊する。


その名を、


「『ドゥルガー』」


「久しい世界だ」


「すまないね」


「かまわない」


二人の簡単な会話の外では、各属性の精霊たちは、ヒトが精霊獣を呼び寄せたことに驚き、精霊ですら簡単に合う事のできない高貴な存在に慄く(おののく)


勝ち負け以前に戦ってはならない。


強さの問題ではない。


シルフィが震えながら、意識絶え絶えのアルに、


「……ごめん、こんなことって」


何もできないことを謝り、跪く(ひざまずく)


それはシルフィの限ったことではない。


中位、上位精霊は各々の敬意を表す形で(こうべ)を下げる。


直後、あいさつ代わりと、『ドゥルガー』の咆哮が木霊した。


がたがたと震えながら、出てきてしまったことを後悔するドリアスは声を発しないまでも、この元凶を睨みつける。


すると、そこには信じられない姿があった。


「………………………………………………zzz」


タダシは睡眠不足の影響と度重なる緊張の連続で、うとうと、と首を上下に揺らし、自分の出番は終わりだろうと言わんばかりに船を漕いでいた。


「どうやら、見誤ったようだぞ」


『ドゥルガー』の声の前には、あたりの超濃度空間が消えかかっていた。


「いったいなに――」


それに気づくのが遅れたアレクの源素が急激に、『ドゥルガー』に吸われていくのを感じた。


「ぐっ、しまった⁉」


「ふむ、必要量まで幾分足りなかったようだな。足りない分は契約者であるお前から供給される。どうする、他の精霊たちももう消えてしまったようだ。私がいる意味もないように思うが?」


ただ、それで帰ってください、ではお互いに面目が立たない。


「く、タダシ君はこれを狙っていたのか……」


過大評価、現在距離をとったタダシの姿をアレクは確認できていない。


それを精霊がゆえ、理由を知っている『ドゥルガー』が正確に伝えた。


「……いや、ただ集中力が切れただけのようだ。半分意識を失って寝ておる」


「そうか、うたた寝をして――うんっ⁈ 寝て、え⁉」


「ぐっははははは! 元の世界で精霊たちも急に戻され(いか)っておるようだ」


実に締まらない光景。


そのタイミングでタダシの首がガクンと落ちた。


「――あ、やべっ、寝てた!」


信じられない台詞に活を入れるように、ドリアスの声が届く。


『行けっ‼』


「え、あ、はい!」


条件反射――、一応寝起きとはいえ直前の状況は記憶に残っていた。


ただ、声に反応した寝起きの脳は正しい判断をしたとは到底言えない。


コントロールのできないレベル3の身体能力向上は、タダシの身体を黒ひげ危機一髪の要領でぶっ飛ばした。


一応、腕を伸ばして向かう方向はアレクのいる先。


急激な源素の消費に動けないアレクは、避けることは叶わない。


屋上でその光景を見ていたミツナとフェノールが素っ頓狂な表情で飛ぶタダシを目で追い、イェールが微笑む。


一人、その姿を過去のカッコいい姿に重ねるアイミ。

何が起きたのか理解できないまでも、度重なる状況の変化を起こせるのは一人だけだと思うアル。

戦うことができないと知るも偶然でもなんでも、何かを起こせと思うアミラとミヨ。

自分たちの弱さを知り、さらなる絶望の中でも戦う意思を見た生徒達。


全ての期待を込め、


「「「「「「「「いけっぇえええええええええええええええええええええええええええ‼」」」」」」」」


願いは託された拳は空を飛ぶ。


しかし、そんな拳の主は、


「ぎゃぁああああああああああああああああああああああああっ‼」


高く飛び立った高さに悲鳴を上げているのだった。


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