第26話 種の発芽
第一回編集(2022/12/4)
誤字脱字の修正、文章の修正、文章の追加、ふりがなの追加、言い回しなど編集しました。
ところが、いくら待ってもその時がやってこない。
きっとアレクの属性は光だ。
それなのに、目の前が眩しくなるどころか、影がある。
「そういえば、あの中にはいなかったか?」
もう俺の手を離れ、これから新しい道へと向かう凛々しい背中があった。
でも、おかしい、しばらくは目を覚まさないはず……。
いや、それは通常の場合であって、回復は俺がした。
だからだろう、通常ではない速度で目を覚ますことができた。
「勝手にタダシの評価を決めつけないでください」
たった、それだけの言葉なのに、俺の心が救われる。
光の小弾を片手で受け止め、英雄のように立ち向かうアイミがそこにいた。
「今更あなたが来ても何も変わりませんよ。例え、原種の力を宿していても」
確かに、これで何かが変わるとは思えない。
「それに――」
ところが、
「それは、あなたがタダシを理解できなかっただけです」
アレクの後方、いくつも立ち上がる影がある。
まだ、動ける状態ではない。
その代わりと言わんばかりに、
「なっ、そうか、今ここは――」
精霊が具現化できる空間。
それぞれが契約している中位以上の精霊が、アレクに敵意を持って現れていた。
炎を纏った鳥形の精霊が舞う。
「一位なんて肩書はいらないですわ。だから、今は、一矢報いるのみですわ!」
小さな図書館。
戦場と化した憩いのスペースを取り囲むように、本棚が立ち並ぶ。
「思い描くだけでは、ダメ」
それぞれが得意とし、契約することができた各属性の精霊たちが立ち並ぶ。
「はは、聖騎士を目指してんだよ。もう二度と折られねぇ」
「命を懸けて、ここに来たんだ」
「頼られる存在に」
風の上位精霊、シルフィ。
幼少期のアルと契約し、これまでずっと一緒にいた。
「……悪い。情けない、ところ、見せた。動けるようになるまで、頼んだ」
初めてのお願い。
それに、
「まったく、強くなるんでしょうね」
「あたり、まえだ」
「そ、じゃあいいわ」
木の上位精霊、ドリアス。
契約者はおらず、精霊から嫌われているタダシが勝手に木を使う事に腹を立て様子を監視し続けていた。
それを、シルフィは気づいている。
「あら、そこで傍観し続けるつもり?」
ふんっ。
「まぁ、いいけど、あの子、精霊と契約するわよ。そしたら、あなた用済みね」
ブチンッ!
「勝手なこと言ってんじゃないわよ!」
タダシが使った枝を媒体にドリアスがタダシの前に具現化する。
「あら、結局来るのね」
「うるさーいっ!」
離れた位置でもしっかり文句を返し、その怒りの矛先はタダシに向けられる。
「それもこれも、全部あんたが悪い! あとで、請求してやる!」
突然の戦力にアレクは驚きを隠せない。
「これが……レナン氏が持った興味の姿」
間違いなく、こうなる種を蒔いたのはタダシだ。
アイミがアレクの前に立ちふさがる。
「これがタダシです!」
アレクは、手で顔を塞ぎながら笑い声をあげる。
「あはははははっ、なるほど、僕が間違っていた。君の能力は、神がかっている! 身をもって確かめさせてもらう!」
そして、こういった状況にタダシが思う事は一つ。
「これは違うでしょ……」
責任を持てない事に関して、拒否を提示したのだった。




