第20話 だよね? そうだよね?
第一回編集(2022/12/4)
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その場の雰囲気は凍り付いていた。
俺は感情むき出しのままアレクに飛び掛かり殴りかかる。
その光景が信じられないと、誰もが唖然と見ていたのだ。
初めての喧嘩腰の拳は、殴るというよりも肩叩きに近いものだった。
力みすぎた拳は、甲ではなく、小指の側面。それをヒトの頬めがけて振りかざしているもんだから、掛け声はきっとうんっ、だったに違いない。
もはやだだった子の台パンに、コレを相手にしていたの?
という情けなさが生徒全体に溢れ出ていた。
当然、それはアレクも同様のようで、残念な子を見るような眼差しで俺の拳をひょいと避けた。
「あ、あっれー」
ここはかっこよくアレクの頬をぶん殴る予定だった俺は感情そっちのけで、勢いに負けて転がりすっ飛んでいった。
「くそっ」
それでも俺からしてみれば、へんてこな拳であっても悔しさが残る。
一応、二人の仕返しのつもりだったのだ。
「喧嘩って難しいのかよっ」
それ以前の問題だったことをこの時の俺は知らなかった。
「ど、どうやら戦闘に準じないのは、慣れとかではないようだね」
憐みの言葉も今の俺には嫌味にも聞こえない。
だって、何を言っているのか俺にはわからなかったからだ。
でも、
「は、恥ずかしですわ」
「拳は突き立てないと」
アミラとミヨに正しい拳の付き方が伝授される。
そこで初めて俺は頭のイメージと現実の差を知らされた。
「ば、ばかな、俺はデンプシーロールだって知っているのに……」
知識と技術は別のものである。
「まぁ、アルとの戦いで期待していたのはそこではなかったからね」
アレクの視線が俺から生徒達に向けられる。
「すまないけど、君たちは邪魔だ」
向けられたのは視線だけではない。
咄嗟に俺は叫んだ。
「逃げろっおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
アレクの周りに浮かび上がった小さな光点が、生徒の数分だけ放たれた。
だが、
「準備はしてきてる」
「これは……珍しい」
光点が文字の壁によって受け止められ、弾けてなくなっていた。
「子供の方は無視して反撃ですわっ!」
アミラの掛け声に生徒全体が呼応する。
でも、一つだけ問いたいんだけど、それって俺と実は裏で取引しているからそう言っただけだよね。
そうだよね?
答えをもらえるわけもなく、アレクVS聖騎士団国家の戦いが始まった。
今回は少し短いです。




