第6話 この世の絶望
第一回編集(2022/12/3)
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誰もいなくなった訓練場の物陰から辺りを伺ってみる。
どうやら、アルが飛び出し、俺も飛び出したことで、訓練場の捜索は頭の片隅にも置かれなかったようだ。
これは俺の思考が勝ったと言っていい。
「ふふ、ふははははははは」
まさかこんな形で昔の遊びが役に立とうとは思わなかった。
この世界で行った鬼ごっこはこの世界には存在しなかった。
それならば、かくれんぼも存在しないだろうと、俺は原点に戻るという賭けにでたのだ。
それが案の定功を奏し、この誰もいないという空間を手に入れた。
ただ、不安材料もある。
それはアルに教えてもらった索敵方法だ。
俺ができたという事は誰かしら同じことをできるという事。
一応源素を利用して周囲に溶け込む方法もあるにはあるが、それを常に行うのは集中力が持たないし、いつ誰がどのタイミングで行うなどわからない。
もちろん、ここに戻る際はやってはいたけど、長時間は無理。
「少なくとも、現時点で見つかっていないから、とうぶんは大丈夫だろうけど」
そんな不安しか残らない結論に至っていても、隠れ続けるということに思考を巡らせ続けることはかなわない。
そもそもこの状況を改善する方法はアレク青年を見つけるという難解でしか解決策が思いついていないからだ。
「まいったなぁ」
堂々巡りにはなるが、索敵方法はあるしかし、あれはこちらの居場所がバレるというリスクを持っている他、アレク青年が回避方法を行っているタイミングだった場合、リスクしか残らない。
「隠れて探すって、アルはどうするつもりなんだ?」
俺のかわいい脳みそちゃんでは出る事のない答えに、
「だぁあああああ」
頭を掻き毟る。
逃げの一手としては、外に貼られたバリアみたいなドームが消えるまで隠れ続けるなんてことも考えたが、あまり現実的ではない。
何度思考を巡らせても出ない答えに、訓練場の舞台に腰を落ち着かせた。
「……疲れた」
精神的にはもちろんだが、なんだかんだ言って昨晩から制服奪取作戦やら、動き回っていたせいで体力的にも疲れがたまっている。
俺の能力の一つでもある回復は傷や源素を回復(他人のみ)できても体力までは戻せない。
「寝たい」
息を短く吐いたところで緊張の糸が切れたのか、考えているふりを誤魔化すように、思考に靄が掛かってきた。
「(……逃げる……、にしても……)」
考えるだけ無駄。
そんな一つの答えが、睡魔を促進する。
「(……あ、……これ寝ちゃう……やつだ……)」
首が頭の重さに耐えきれなくなっては持ちこたえを繰り返し、その時はやがてやって――来なかった。
「信じられませんわ、本当にここに戻ってきているなんて」
聞いたばかりの人を小ばかにした声に、
「うん、それに神経が図太い」
最近聞いた覚えのある声、
「タダシだし」
慣れた親しんだ声が耳に届く。
寝そうな瞬間に邪魔される、この世にこれほど以上の絶望はあるのだろうか。
「ぅう、寝れそうだったのに」
泣きたい。
そうは言っても、それを許してくれるほどこの世界は優しくはないのだった
本当に忙しい一月が終わり、明日からもう五月です。
ゴールデンウィーク、長い人は10連休ですか……ズルイ!!
「俺にも分けてくれよ」なんて台詞のFF7クライシスコアを思い出しました。
はい、そんなことで、更新頻度が激落ちしている「異世界でものんびりと」四月ぎりぎりに更新できました。
本当に、申し訳ございません。
大したことは書けませんが活動報告にも少し書かせていただきまして、今後ともお付き合いのほどよろしくお願いいたします!




