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ルブナイキ -The New Generations-  作者: 藤原(の)コウト
決戦! 砂漠の地下闘技場!
11/14

プロローグ

「……………………」


 亀の甲羅を飛び立って三日。

 少年少女は水不足という深刻な問題に直面していた。


「ひ、干からびる……枯れる……死んじゃう……」

「うるせえ誕弾(たんだん)……喋ったら余計に喉乾くだけだぞ……」

「ははは喉はははははははははははははははははは水はははははははは」

「お兄ちゃんが壊れちゃった……」


 現在地、砂漠の真っ只中。オアシスなんて存在は地平線の彼方にすら見当たらず、持参した水もすでに尽きていた。食料はいくぶんか残っているが、口にすれば余計喉が渇くだけなので誰も手をつけない。というかそもそも食欲がない。

 さんさんと照りつける日光は、ともすればあの巨大猪よりも厄介な敵なのかもしれなかった。パラグライダーを日傘代わりに開いているが、砂に当たって反射した光は避けようもない。上から下から、じりじりと体を焼かれていく。

 こうなると最初にダウンするのは体力のない希稲(きいな)だ。ふらふらと足取りも危うく、千土(せんど)に支えてもらってようやく歩けるくらい。その千土もなんだかふらふらし始めたので、希稲を支える千土を支える刀香(とうか)がいる。


「あちぃ……」

「なんで『雪風(ゆきかぜ)』のクーラーは壊れてるんだよう……」


 『雪風一號(いちごう)』に乗る誕弾も、今だけはコックピットを全開にしている。歩く必要のないぶん楽ではあるが、機体の放熱が尻から伝わって地味に辛い。


「このままじゃ、東京に着く前に、全員熱中症で倒れちまう……」


 額の汗を拭いながら刀香は言う。かく言う彼も、相当無茶をしている現状だ。一番体力があるとは言え、二人を支えて歩くのはキツい。


「あ……トーカごめんなんかボクまでくらくらしてきた……」

「ちょ、誕弾!?」


 ついに『雪風』の歩みすら止まる。まだ誕弾の意識はあるようだが、操縦桿(そうじゅうかん)一本を動かす気力さえなくなったらしい。うつぶせで「あー」と言葉にならない(うめ)き声を上げている。


「……どうすんだよ、これ……」


 刀香一人じゃ三人は抱えられない。それに荷物を大量に積んだ『雪風』を置いてくわけにもいかないし、かと言って刀香では操縦ができない。アレは誕弾の異能があって初めて動かせるものだから、壊すことしか取り柄のない刀香ではどうすることもできなかった。


「おおう……」


 呆然と立ち尽くしていると、くらりと来た。次は刀香の番らしい。よろけた拍子に額に触れて、気づく。

 汗が出ていない。その水分さえもう体に残っていないらしい。膝が笑っている。力を入れているつもりでも、たぶん全く入っていない。体のコントロールが効かなくなっている。 


(親父にしこたまぶん殴られた時の感覚と……ちょっと似てるかもな……)


 なんて走馬灯みたいな思い出を反芻(はんすう)しつつ、ついに刀香も砂漠に倒れてしまった。地平線と溶け合う青空の青さが憎い。

 陽炎の立つ地面の熱に全身を焼かれてなお、立ち上がることができない。ここで旅は終わりなのか。あまりにもあっけなさすぎる結末に、悔しさを感じる心すら焼けたところで――


「お。おお? おお! うん、うん、やっぱりぼくの悪運も捨てたもんじゃないなあ!」


 そんな誰かの声が聞こえた気がした。


「よいしょっと、ん? このロボットは……まあいっか。まとめて運ぼう!」


 聞き覚えのない声の主に体を担がれるが、まるで抵抗できない。どこかに少年少女を運ぼうとしているようだが、それがどんなリスクを(はら)んでいるのか、うまく考えられない。


「よし行こう!」


 やたら元気な声に、ぐわ、と浮遊感を感じて、その正体に思いを馳せる直前。


(あ、もう限界だマジでこれ死)


 刀香は意識を手放した。


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