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囚われのインテリア

 俺を止めようとするやつはもうほとんど残っておらず、城までも労せずに入ることができた。

 だが、お目当ての物が見つからん。

 仕方がないので、適当なメイドを捕まえてアイアンクローしながら道を教えてもらうことにした。


『アンネマリーとやらはどこだ』


『い、言いません! あのお方を失えばこの国は、もう……。だから!』


 メイドが懐から取り出したナイフが俺の胸へと突き刺さる。

 驚いて思わず力を込めてしまったせいで、顔の穴という穴から血を流しながら事切れてしまった。

 かわいい顔が台無しだ。

 まあ、蘇生すれば治るし、やってしまったものはしょうがないよね。

 しかしなるほど、アンネマリー姫はこの国の中ではまともなのか。

 実際俺に逃げ出さずに向かってくる奴の大半はアンネマリー姫に忠義を誓っている奴のようだ。

 とりあえず回収できる死体は全て回収してアイテムボックスに入れてある。

 あ、勿論先ほど適当な奴をアイテムボックスから出して神命珠は使ってみたが、問題なく蘇生できた。

 まあ蘇生したら逃げ出したけど些細な事だ。

 結局、適当に隠れてた忠義とかどうでもよさそうな兵士を捕まえて聞いたところ、地下牢にいることが判明した。

 なんでお姫様が地下牢にいるんだか。

 まあどうせ碌な理由じゃないだろうし、どうでもいいか。

 どうせお姫さまって肩書も今日までだ。

 これからは俺のインテリアに再就職だからな。


『お、おい。もももういいだろ?! は、離してくれよ! なあ!! たた助けてくれよ!!』


 うるせえな、全く。

 どうしてこう俺の考え事を邪魔する奴ばかりなんだ。


『ああ、離してやるとも。ところでここは何階だったかな?』


『ごごご五階だ! なあ、いいから離してくれよ!!』


『ああ、そうだな。いい加減その声も聞き飽きたところだ』


 一番近くの窓を開けて兵士を放り捨てる。

 悲鳴を上げながら落ちたそいつはきっと愉快なことになっただろうが、今はそんなことよりもお姫さまだ。

 楽しみすぎてつい鼻歌を歌いながら俺は地下へと向かうことにした。


 地下牢の前に着くと、見張りの兵士はおらず見張り用だろうテーブルにはトランプらしきカードが散乱している。

 とっくに逃げ出したようだ。

 そして牢屋には美しい少女が怪しげな模様の描かれた床に座っていた。

 なるほど、これがお姫さまか。

 白銀のまるで雪のような髪、大きなルビーの瞳、小さな……全体的に小さいな。

 小学生かそこらの見た目だ。


『鍵はどこだ』


『ここにはありません。見張りの兵士が持って逃げました』


『なるほど、では鍵は無視するとしよう』


 少々スマートではないが、鉄格子をつかんで強引にこじ開ける。

 どうやらこのお姫さまは俺が諦めると思ったらしい。

 たいそう驚いてくれた。


『……化物め、私をどうするつもりです』


『私が君をどうにかするのではない。君が私に懇願するのだよ』


 俺はアイテムボックスから先ほどの女兵士を取り出して床に転がす。


『メアリッ!』


 なるほど、メアリっていうのかこいつ。

 どう見ても死んでいるとはっきりわかるほど血を流したメアリの死体を見て俺を射殺さんばかりに睨んでくるお姫さまは残念ながらサイズのせいで威圧感皆無だ。


『この娘を私は蘇らせることが出来る。この娘だけではない。君のために死んだたくさんの人間を蘇らせてやろう』


『悪魔め……そのような甘言に惑わされは』


 俺の種族、初期設定無視されすぎ問題。

 なに実はデーモンってミノタウロスより馴染み深いのか。

 しかし、こちらの言葉に耳を貸す気はない様だ。

 そうだな、少しアプローチを変えてみるか。


『クィエス領を知っているかね?』


『な! まさかクィエス領に手を出したのですか!』


 驚愕と敵意がどんどん増していくが、手を出したのはお前らの国です。

 まあこの状況では正しい情報は入らないか。

 この敵意に満ちた顔が絶望に染まるさまを想像するだけでご飯三杯いけちゃいそうだぜ。


『この国はクィエス領を切り捨てたぞ。反乱の疑いだそうだ。フィーリナは私が保護しなければ、殺されていたのだよ。君を頼って弁明のために王都を目指していたようだが、無駄足、どころか危うく今度こそ死ぬところだったな? 何か弁明はあるかね? 君のせいでフィーリナは死ぬはずだったぞ? クィエス領は滅ぶところだった……そう、君のせいで』


 先ほどの反応は個人的な交友があると見た。

 ならば年の近いフィーリナとも交友がある可能性は高い。

 そんな相手を俺が保護していると知れば?

 友人だろう相手を自分は守るどころか死なせるところだったと知れば?


『フィーリナが……そんな……わたしの、せいで……』


 折れる。

 そう、人の心ってやつは簡単に折れる。

 そして一度折れてしまえば、後は転がり落ちるだけだ。


『私は君の望みをかなえてやれるかも知れんぞ? 対価はただ、私の目を楽しませるために生きるだけで良い。どうだ? 決して悪い話ではないだろう? 私はただ、私の娯楽のために君に話を持ち掛けている。これほど単純で、裏のない利益を享受できる提案などそうあるものではない。君が頷くだけで君を信じて殉じた者たちが助かる。ほとんど何も失わないし、それどころか得る物の方が多い。だが、私にはこの取引をするメリットはほとんどない。所詮娯楽でしかないのだから、別のもので代用が利く。あくまで、君がどうしてもと懇願するなら、私は喜んで君の願いを聞いてやろうじゃないか』


 俺はなんて親切なんだろうな。

 人間ってのは自分の為よりも他人の為だと思った方が何事においても心の負担が少ない。

 そして対価を払っていればその分更に負担が減る。


『断れば、どうせ殺すつもりでしょう……』


『何を当然のことを言うのかね? 一度殺して別の牢屋で生き返ってもらうことになるな。ああ、安心したまえ、このメアリという女は一緒に生き返らせてやるとも。最も私が飽きるまで牢屋暮らしだがね』


 こちらに従えば全員蘇生してある程度自由を認めるが、従わないなら観賞用のペットとして飼殺す。

 要するに従属か隷属かの二つ以外選択肢などない。

 当たり前だよね、欲しいものはどんな手段を使ってでも手に入れる、それが俺のモットーだからな。


『わかり、ました。従います……。ですが、貴方には必ず神罰が下ることでしょう……! この、悪魔め……!』


 一応、その神様ってやつの先兵アインヘリアルなんだよ、俺。

 残念だったね。

 まあ、悪魔でもあるけどさ。


『そう何度も種族名で呼ばないでくれたまえ。しまいには人間と呼ぶぞ小娘』


『……ほんものの、あくま……』


 なんだよ気づいてなかったのかよ。

 まあ、知ってたけど。

 どうせ比喩表現的意味で言ってるんだろうと思ったけど、やっぱりデーモンって種族はおとぎ話の住人らしいな。

 やったね、レア種族だよ。

 とりあえずお姫さまをひっつかんで地上へと戻った俺はそのまま徒歩でドラゴンまで戻った。



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