ほんとは全部わかってる、なんていったら怒るかな?
「アイしてるってどんな『気持ち』?」
「どうした急に」
「職場の人に突然アイしてるって言われたんだけどー、意味がわからなくて聞き返したら逃げてっちゃった」
「そうか」
「ねえねえどんな『気持ち』?」
「いざ説明するとなると難しいな… その人を守りたい、傷つけたくないって感じかな」
「何それ、ほんとにあるの?」
「俺と付き合っててその言い草は軽くショックだぞ」
「軽くでよかったじゃん」
「そういうわけじゃ…もういい」
「えーなになに、怒ってるの?」
「覚えたての『気持ち』を言いたいだけだってバレバレだぞ」
「てへへ。『俯いて口数少なくなったら怒ってるか聞け』って言ったのあんたじゃん」
「それはそうだが…。いつになったらお前は『気持ち』を取り戻すんだ」
「さあ?あの男と一緒に全部捨てちゃったから、もう戻ってこないかも」
「それじゃこっちが困るんだよな」
「困るって何?」
「ああこれも覚えてないのか…」
「『気持ち』が多すぎるのがわるーい、私わるくなーい」
「はあ…(愛の告白してきたその男に嫉妬してるって言っても、絶対伝わらないんだろうな)」
「でも一個だけ分かるのあるよ」
「なんだ?」
「あんたが大好きだっていう『気持ち』!」
「…そうか」
「お、照れた?照れちゃった?」
「だーかーら、状況だけ見て『気持ち』選ぶのやめろって!」