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×2 少女の秘密  作者: 有栖川優悟
4/8

*拾弐

おうぎ

 まさか、こんなにすぐに駿河するがを見つけられるだなんて、思ってなかった。

「…駿河さーん、あいつって駿河さんの知り合い?」

「いや、少なくとも岸波きしなみ扇ってやつのことは聞いたこともないけど、でも――どこかであった気がする」

 明かしてやりたい、という気持ちはある。自分が圧迫していた奴が、まるっきり違う姿になって復讐しに来たんだ。驚くに決まってる――でも、まだ早すぎる。ここから思いっきり差をつけて、追いつけなくなったところで明かしたほうが、彼女はきっと打撃を受ける。


「扇ちゃん、バイトとかしないの?」

「バイトかー…いいや、してないよ。する暇もないし」

「えー、岸波ちゃんカフェのバイトとかめちゃくちゃ似合いそうなのにー」

「それはない。…私は、やりたいことが別にあるから。その為に、朝葉原に来たの」

 陽菜の発言はスルーして、訳を説明する。

「どんなこと?」

「うーん……結構直球な言い方をしちゃうと…復讐ってところかな」

「そうなんだ…って――え?」

 案の定、私を除いた五人は面食らっていた。

「…あー、無能力者ブランカーだから迫害されてたんだ!私もだよー」

 そういう神楽も、無能力者だ。

「よくあるよねー、自分をいじめた奴に復讐するの。その為に来たんだ?」

「そう、それが私の生きる目的。だから私の戦場は、ここしかない――それ以外は、ない」

「そんなに命懸けなんだねー…私はそんな、相手に強く出れるような性格じゃないし。あーあ、もっと前に岸波ちゃんに出会っていれば、私もやり返すくらいは出来たのかな?」

「やっぱり扇ちゃんって、かっこいいなあ…」

「…復讐なんて、別に言うほどかっこいいものじゃないよ。けどね」

「けど?」

「人生というものは、生きる目的を手に入れたとき、手に入れる前よりも遥かに強い輝きを放つものだと、私は信じてる。それを生きる者が異形であっても、無能力者であっても」

 たまたま私の目的が復讐だっただけであり、本質は他の種族とそう変わらないのだ。

「本当、岸波さん見習いたいよね」

「なんで扇ちゃんって、こういう冷静なものの捉え方ができるんだろ…」

 冷静?――どうなのだろう?私は復讐のことしか考える余裕がないだけだから、厳密には違うのかもしれない。



***



▼パトリシア

 私はパトリシア・ファーレンハイト。忘れていないとは思うが、一応アクロバティックサラサラという種族だ。

「え、礼麻れいまのクラスに転校生が?」

 彼女は瀬田せた礼麻。八尺様はっしゃくさま末裔まつえいで、彼女も中学三年生にしては背が高い。

「そうそう。雪女なんだって。金髪のボブカットで、頭には雪の結晶の髪飾りをつけてたような」

「雪女かー…そいつって強いやつ?」

「わかんない。まだどういう奴だか…あ、いつも日傘持ってたな」

「それは仕方ないんじゃね?体温上がると能力が使いづらくなるだろうから」

 金髪のボブカットに傘――私は、このヒントからある答えを導き出した。

 ――あの日、“通り魔”の側にいた金髪ボブカットの奴は、そいつなんじゃないか。そして、そいつに聞けば“通り魔”のことも聞けるんじゃないか。

「あとA組とC組にも来てたって。A組のやつが無能力者らしいんだけど、能力以外は完璧な優等生だって。C組には妖狐ようこが来たとか」

 無能力者と、妖狐か――

「そいつらは礼麻達のこと、敵視してたか?」

「別に?でも、無能力者の方には一度会ったことがあるかもしれないって、駿河さんが言ってた」

「駿河…?」

「…あー、わかんないか。駿河ってのは、うちの学校の中等部の生徒会長。ハスターなの」

「なるほどな。その、駿河ってのは、“通り魔”のこと、知ってそうか?」

「さあ…」

 ハスターか…黄衣の王か。風の神性の首領とされるくらいだから、強大な力を持っていることが見て取れる。まあ“通り魔”でも、そいつでも、どちらが私の方に向かって来てもいいけれど――頼むから、退屈だけはさせないでくれと願うのだった。

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