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×2 少女の秘密  作者: 有栖川優悟
3/8

*拾壱

おうぎ

「…え、扇ちゃんなの?」

 しのぶは案の定、驚きを隠せないようだ。

「そうだけど…どうしたの?」

「大丈夫。私はただ驚いただけ、だから…」

「で、どうするの?私に殺されようとでもするつもり?」

 肯定されても、今動いてしまえば私の立場が危うくなってしまうので、願い下げる前提で訊く。

「…うん、そのつもり」

「残念だけど、それはできないよ」

「やっぱり、そうなんだ…」

「別に、それを願うのをやめろとは言ってない。説得しようなんて、思ってないよ。…説得したところで、私は忍に対して責任を取れるとでも思うの?」

 そう、中途半端な正義感なんて、かえって他人を苦しめるだけだ。

「じゃあ何で…」

「私に都合が悪いから。編入したばかりの生徒が同級生を殺した、なんてニュースに上がったら取り返しのつかないことになる。結局誰だって自分が一番可愛くて、一番大事なんだよ」

「そう、なんだね…」

「まだ帰らなくていいの?」

「あ…そうだね、帰ろっか。またね」

「うん、また明日」



***



 翌日

岸波きしなみさん、昨日は間宮まみやさんと何話してたの?」

 登校して即、穂香ほのかに声をかけられる。

「…何って、秘密」

「そっかぁ。聞いちゃってごめんね」

「いや、聞きたがるのもよくわかる。そりゃ編入生側が在校生に話しかけてたら驚くよね…でも、勘違いしないで。私はあの子に忠告をしただけ」

「そうなんだ…」

「あ、穂香と岸波ちゃんだ!」

 後ろから陽菜はるな神楽かぐらがやってくる。

「岸波ちゃんおっはよー!もうここには馴染めちゃったりする?」

「…まあね」

「ほんっとに岸波ちゃんって、そのポーカーフェイス崩れないのかな!」

「そんなの、私の知ったことじゃないよ」

 学校が見えてくると、黄色い腕章を巻いた生徒たちに出会う。その中に、私はある人影を見つけた。

 ――駿河するが

 恐らく他の生徒も、私が小学生時代の頃、駿河の周りを囲んでいた異形たちだ。八尺様はっしゃくさま末裔まつえい、皿屋敷を営む家に住む少女、眼鏡めがねを掛けた腐女子のグール、紫ババアの孫。彼女らは異形としての能力も、人間としてのステータスも高い。

「…あいつら」

「扇ちゃん、あの人達は生徒会の役員さんなの。今の生徒会長さんが、駿河東香(とうか)さん」

「駿河さんの種族はハスター、“黄衣の王”とも呼ばれているんだ。だから生徒会の腕章は黄色なんだよ」

「…って、あれ?岸波ちゃんの知り合い?」

 向こう側に知られると厄介なので、ぼかした上で答える。

「まあね。あいつと私は――ただの幼馴染だよ」

 そう、あいつにとって私がどう見えているかなど知ったことではないが、少なくとも私にとっては幼馴染だ。

 ――私が見返すべき、幼馴染だ。

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