*玖
*岸波 扇
この作品の主人公。平凡な無能力者の少女だったが、異形達を見返すためにアヴァロンへ入り、“破壊の狂戦士”ベルセルクとして異形を抹殺する行動に出始める。
*笹部 穂香
無能力者とクタニドのクォーターで、嶋村の従姉妹でもある。ちなみに目が金色なのは遺伝である。また、怒ると怖い。
*吉野 陽菜
サバサバした性格のクトゥグアの少女。炎を操ることができる。いちごミルクをこよなく愛する。
*間宮 忍
穂香と扇の間の席の少女。イモータルであるためか、異常なまでの自殺願望を持っている。紅茶に飴玉と練乳を入れて飲むくらいには甘党である。
*時坂 神楽
このクラスには数える程しかいない無能力者。不幸体質で、スクールバッグにいつもお守りをつけている。
*駿河 東香
三年B組の、ハスターの少女。生徒会長を務めている。基本的に何でもできるので、扇に劣等感を持たれている。
*日笠 しきみ
三年B組の、雪女の少女。コードネームは「エンジェル」。
*能前 菊里
三年C組の、妖狐の少女。コードネームは「エクスカリバー」。
*皇 昏羽
アヴァロン本部長(長官)を務める、死神の女性。
私立銀庭学園。
朝葉原にある併設型の女子中高一貫校だが、高校の募集も行っている数少ない学校となっている。全日制課程の学年制で、設置学科は普通科。学期は二期制である。指定のブレザーがあるが、私服も認められている。
今日は始業式。岸波扇ら編入生も、大抵はここからのスタートとなる。
「編入生を紹介する。…岸波!」
がらりと開いた扉の向こう側から、一人の少女が歩み出す。
ウエストくらいまで届く、長い黒髪。青と紫の間の色を映した瞳。中学三年生が着ると明らかに編入したてだろうと思わせる、まだ着古されていない制服。
「わあ、すっごい美人!」
「どんな人だろー…」
「ものっ凄い力を持ってる子かなあ!」
クラス中から歓声が上がる。
「それでは、自己紹介を」
「岸波扇です。よろしくお願いします」
まるで堕ちた天使のような、月夜の似合う魅惑的な少女――岸波扇は、そう言った。
***
「岸波さんって、前はどこの学校いたの?」
青い髪に黄色いヘアピンをつけた、セミロングの少女が聞いた。
「静岡に、二年くらい。その前はずっと朝葉原」
「じゃあどこかで会ってたかもね!忘れちゃってるだけみたい!」
「…そう」
「ねえ、編入生ちゃんってどんな種族?」
「ちょっと陽菜ちゃん、それいきなり聞いちゃう?」
ミルクティー色の髪をツーサイドアップにした少女が、赤髪ポニーテールの少女にツッコミを入れる。
「…無能力者だよ」
「えっ…?」
「だから、私はただの無能力者。つまり、凡人だっての」
「もしかして私の仲間?」
金髪を耳の後ろで二つに結わえた少女が歓喜する。
「…君も?」
「そう!無能力者だし、おまけに不幸体質なの!私、時坂神楽!よろしくー!」
「神楽、か…」
「私はクトゥグア、吉野陽菜!陽菜って呼んでいいよー。よろしく、岸波ちゃん!」
「陽菜ね、よろしく」
「そんで私が笹部穂香。一応クタニドっていう種族なんだけどね、嶋村先生の親戚ってこと以外は普通なんだよね」
そう語るクタニドの少女は、慈愛に満ちた黄金色の目をしている。
「穂香ちゃんは皆を守りたいと願ってる、強く優しい女の子なんだよ!」
「あはは、私は願うことしかできないんだけどね」
「…穂香っていうんだ。そっちは?」
「間宮忍、です…イモータルなんだけど、わかる?」
「ああ、この子ね。イモータルって言って、要するに不死身なの。この子も結構凄いんだよー!死なないどころか、病気にならないし、怪我の一つもしないの!凄くない?」
「え、いや、私そんな凄くないし…私からはどうすることもできないもん。私を救済してくれる人がいればいいのになあ…」
「もう、間宮ちゃんってば!」
「間宮さん…忍でいいかな?」
「いいよ、いいけど…そっちは?」
「扇で構わないよ。皆も」
「じゃあ私は扇ちゃんって呼ぶー」
「岸波さん、でいいのかな」
「私らは岸波ちゃん呼びを続けよ?」
「あ、じゃあ私も岸波ちゃんって呼ぶわ。扇なんて気安く呼べないよ~」
特に何も変わらない、昼休みだった。ただ、話している少女たちの――いや、この学級の大半が異形であること、それ以外は。