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念話で知る、事の顛末(竜兵の箱)

※この話はあくまで作者のもうs・・・失礼しました、何でもありません。

作者の想像です。


 精霊王国からこんにちは。

 わしは『古龍』バイアという者じゃ。名前からわかるじゃろうが、種族はドラゴンでの。うむ、何故話せるか、との? わしはこう見えて二万年生きたもんでの。ちょいとばかり「念話(テレパシー)」が使えるのじゃ。なに、年の功というやつじゃよ。

 わしの話はこれくらいにしておこうかの。今日は一人、紹介したい者がおるんじゃ。

 お竜ちゃんといってだな、『地球』という異世界からこの『リ・アルカナ』の世界へやってきた少年じゃ。

 わしのいた『竜の都』に突然現れたお竜ちゃんと、色々とあってわしは今、行動をともにしておる。

 ちと話が長くなるから省くが、精霊王国フローリアにやってきたお竜ちゃんは今、困ったことになっておるようでの。

 ただそれがわしには少し──微笑ましい出来事だったんじゃ。


 ◆◆◆


 お竜ちゃんは十五のまだまだ子供と言える少年じゃが、魔導師として、とんでもない力を持っている。

 そんな彼が、魔導師としての力を発揮するための『魔導書(グリモア)』を開いて、困り果てていた。

「アニキー」

 眉根を寄せ、口をへの字に曲げたお竜ちゃんは、隣にいた黒い法衣の少年に呼び掛けた。

 呼び掛けられた少年は鋭くも感じられる眼差しをお竜ちゃんに向け、何だ? と応じた。

 彼はお竜ちゃんと同じく異世界からやってきた魔導師のセイ。お竜ちゃんが「アニキ」と呼んで慕っておることからわしも兄者くんと呼んでおる。

「おいら、盟友(ユニット)ドラゴン外せないんだけどー」

 『魔導書(グリモア)』のカードを弄っていた手を止め、兄者くんが目を細める。

「我が儘言うな。二枚分開けろ」

「いあ、そうじゃなくてー・・・」

 お竜ちゃんは言うと、自分の『魔導書(グリモア)』からドラゴンの盟友(ユニット)カードを取り出す。

 それを控え(サイド)に回すカードの束へと持って行こうとする。ところが、びんっ、とそのカードは真っ直ぐお竜ちゃんの『魔導書(グリモア)』へと戻ってしまった。

(ほぅ・・・)

 わしはそのとき、『念話(テレパシー)』で聞こえてきた声に笑みをこぼした。


「あんちゃん、やだやだやだ! おいらを置いてかないでよぉっ!!」


 聞こえてきたのはお竜ちゃんが先程抜こうとした盟友(ユニット)火鱗竜(ファイアドレイク)』のものじゃった。

 自分を"おいら"と言う辺りはお竜ちゃんを真似てのことなんじゃろう。

 微笑ましく思っておると、『火鱗竜(ファイアドレイク)』はこう続けた。


「おいら、ひとりぼっちはやだよ! 置いてくんなら、『水竜(アクアドラゴン)』にしてよ!!」

「な・・・なんてこと言うんだ、『火鱗竜(ファイアドレイク)』・・・僕、君のこと友達だって信じてたのに、信じてたのにぃっ!!」


 『火鱗竜(ファイアドレイク)』に身代わりにされた『水竜(アクアドラゴン)』が泣きべそをかきはじめた。

 そんなことなぞ全く知らないお竜ちゃんが、『水竜(アクアドラゴン)』を外そうと再び試している姿を見、なんとも言えない心地になる。


「しくしく。竜兄ちゃんまで僕をいらないっていうんだ・・・」


 再び『魔導書(グリモア)』に戻ってしまうカードにお竜ちゃんは心底困った顔で兄者くんを見つめる。

 兄者くんも目の前で起きたことに思うところあってか、自分の『魔導書(グリモア)』で試し始めた。

 そんな中、尚もお竜ちゃんの金箱の中、同胞たちの騒ぎは続く。


「わかってるよ、わかってるよ・・・どうせ、僕なんて水のあるところでしか動けない、水なしじゃ役立たずの駄目な竜だもん・・・」

「『水竜(アクアドラゴン)』、そんなに落ち込んでいてはいけませんよ? 『火鱗竜(ファイアドレイク)』、さっきのは言い過ぎです」


 一連の騒ぎを見ていたらしい『翼竜(ワイバーン)』の一頭が静かに『水竜(アクアドラゴン)』の隣に降り立ち、言う。

 視界の隅でお竜ちゃんが変わらずカードを引き抜こうと試しておるのじゃが・・・


「だって、だって、お竜あんちゃんが! おいらを置いてこうとするから! 『翼竜(ワイバーン)』だって、あんちゃんと離れるのはやだろ!?」

「それは・・・」


「あり? 『翼竜(ワイバーン)』も? さっきは外れたのに」

 またしても失敗したお竜ちゃんが頭を抱える。

 ちなみに、『聖水竜帝(アクエリアスドラゴンロード)』や『黄昏竜帝(ダスクドラゴンロード)』といった『竜帝』の名を冠する彼らはお竜ちゃんが困っているのを感じ取ってか、素直に外れておった。

 いつまでも傍観を決め込んでおるわけにもいかんじゃろう、わしはいつの間にやら顔を蒼白にした兄者くんに困惑状態で話すお竜ちゃんを横目に、静かに『念話(テレパシー)』を箱の中へと送った。


「これこれ、お竜ちゃんが困っておる」

「「「長様!!」」」


 三頭がわしの声に反応したのを聞き、「ちと、待っておれ」と『念話』して、お竜ちゃんを見た。

「ほっほっ、お竜ちゃんはよっぽど、ドラゴンに好かれておるようじゃの。皆から離れとうないという意思が伝わってきよるわ」

「じっちゃん、外れないのはそれが理由?」

 お竜ちゃんの言葉にわしは深く頷く。

 どうやら兄者くんにも同じ現象が起こっていたようで、兄者くんが外れないカードを見せてくる。お竜ちゃんと大体の理由は同じようじゃが、これはちと厄介な。

 兄者くんに見立てを告げ、もう一度、お竜ちゃんを見た。

「お竜ちゃん、お別れでないことを念じながら、もう一度やってごらん」

「ふぇ? ・・・うん」

 提案に頷いたお竜ちゃんが今一度『火鱗竜(ファイアドレイク)』のカードを手にする。


「安心して、ここでお別れじゃないよ。おいらたちみんな、ずっと一緒だ!!」


 『念話(テレパシー)』を通して、確かに届くお竜ちゃんの温かい声。


「ドラゴンはみーんな、おいらの友達さ! これからもずっと一緒だ!!」

「お竜あんちゃん・・・」


 今度は素直に外れる『火鱗竜(ファイアドレイク)』のカード。

 同じように、『水竜(アクアドラゴン)』や『翼竜(ワイバーン)』も外れる。

 やはりお竜ちゃんはすごいの。

 外したカードはもちろん、そのまま放置することはなく、ちゃんと大切にしまった。

「ありがとう! じっちゃん」

「なんの」

 礼を言うのはこちらの方じゃよ。

 お竜ちゃんについて行くことを選んで、よかったよ。


 さて、『魔導書(グリモア)』を手に彫像と化してしまった兄者くんの話も聞かなくてはの。


 ◆◆◆


 この日、バイアは改めてこの少年を守ろうと誓うのだった。



竜兵の方はいい感じに纏まりましたが、エデュッサが外せないセイは涙目です。


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