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トランプクラス

作者: 矢光翼

ツイッターお題シリーズです!

お題「トランプゲーム」

このクラスは五十三人で構成されている。


あき 一心いっしん

二葉ふたば 智気ともき

楽江らくえ 三花みつか

幅富はばとみ 陽四ようし

加五かご けい

重根かさね 射六いろく

七動しちどう 理流りる

怠沼たいぬま 八次やつぎ

九熱くねつ 意太郎おきたろう

平田ひらた 十野とおや

じま 綺乃きの

蔵栄くらえい 快間かいま

佳時かとき 元気げんき

麻薪あさまき 一結かずき

伊田いだ 二麗にれい

眩三くらみ さずさ

四戸しど 太陽たいよう

焼林しょうばやし 京五けいご

黒義くろぎ 魅六みろく

怖七田ふなだ 来健らいけん

八幽はちゅう ころも

触谷ふれたに 九地きゅうじ

空廼そらの 十朗じろう

蛇旅じゃのたび 量歌りょうか

玖亜くあ 数雅かずまさ

弧不壊こふえ ひかる

えい 一夢いつむ

痛枝いたえだ 葉真二はまに

三杖みつえ 覚悟かくご

敏滝としたき 詩四しよん

秀五すいつ 優左ゆうさ

六析ろくせき 脳理のうり

転灯ころび 七地しち

八目はちもく 回琉かいる

九歩くぼ ゆう

十縛とばく 紡木つむぎ

序銀児じょぎんじ 紐手ひもで

久宇栄くうえい 長李ながり

家棚けだな 刀之助とうのすけ

阿一あいち こう

嬉類うれたぐい 二波じんば

広坂こうさか 絵三えみ

再四さいし うわさ

質台たちだい 五憂ごうき

欺六威ぎむい 卯恵うえ

上我うわが 士七しなな

器八うつわち 堵貴斗どきと

作九さきゅう 生菱なりひし

十要とうよう ざい

軸張じくばり 自然しぜん

狗衛途くえいと 凛人りんと

樫舵機かしだき 由兵ゆうへい

浜崎はまさき じょう


彼らは知る由も無い。これからの運命を。


………→キリトリセン→………


転校してきてそんな長い時間が経ってないのにクラスを語るのは気が引けるけど、俺のクラスで起こる奇妙な出来事と言えば、ある日突然クラスメイトが消えることだ。

欠席のマーク以外は、どこからも。


少子高齢化が嘆かれた時代から数十年後、「少子」の時代に生まれた子供達は高齢化し高齢者の数は今までで最低ラインを割り続けた。

しかし若年の時代に解された性への興味、経験から子供は望んでか望まずか子供は多く生まれ、今では「子老ピラミッド社会」と題されるほどになった。その影響で多くの学校の開発が追いつかず、徐々にクラスの最大人数を増やすという方向へシフトチェンジし始めた。

その結果俺のクラスは五十三人と大所帯なんだけど、それは大して問題じゃない。

最初に言ったように、俺のクラスからは突如クラスメイトが消える。

今までは二葉ふたば伊田いだが消えて数日後に戻ってきたり、敏滝としたき秀五すいつ六析ろくせきが同時に消えて、あるときには何事もなかったように戻っていたり。

俺自身はこのクラスに入って日が浅いものの、クラスメイトは気にしておらず、むしろ知らないという体裁ぶりだった。

「浜崎くん」

背中から声がしたから振り向くとクラス委員の七動しちどうが立っていた。

「七動さん。どうしたの?」

実を言うと、俺はもうこのクラスの名前を全部把握している。日数にしては一ヶ月経っていない。

「名前覚えててくれたんだ。えっとこれなんだけど」

七動は俺の机の上に紙を広げて俺に見せた。

「これ、は・・・?」

途端に声を潜める七動。おかげで最初の言葉を聞き逃した。

「・・・えたクラスメイトを表にしてみたの」

よく見ると所々でクラスメイトの名前が見える。

名前から伸びた線がいつの間にか途切れ、その次からはまた違うクラスメイトの名前から線が伸びている。

「これはね、ここ数ヶ月の消失期間をグラフにしたものよ」

消失期間・・・つまりは学校に来ていなかった期間。

他のクラスメイトには完全に知らん顔・・・というかむしろ俺のほうに困り顔を向けられたけれど、七動は話せるようだ。

俺はこのクラスで初めて対等を手に入れた気がして、七動に合わせて声を潜めた。

「もしかしてだけど、このクラスって全員集まる機会、少ない?」

コクリとうなずく七動。それと同時に険しい表情になった。

「浜崎くんさ・・・」

「なに?」

潜めた声に手を添えて、一際注意深く俺に話しかける。

「その質問、他の人にした?」

俺は訳がわからなかったが、質問自体は初めてなので素直に「いいや」と首を振る。

すると七動はほっとした様子で俺から顔を離した。と同時に紙を丸めて席を離れていった。

なんだったんだ・・・?

ふと七動が去った机を見ると一枚のメモが置かれていた。俺はそれを取ろうとドスッ。

背中に鈍痛。それと同時に俺はその原因を察する。

九熱くねつぅ・・・」

背中をさすりながら目を向けると満面の笑みを浮かべた九熱の姿。

「なぁに理流と話してたんだ?」

俺は適当な嘘を吐く。

「いや、クラスには慣れたかーって。まぁ一ヶ月も居れば慣れちゃうんだけどね」

そんな俺の嘘に九熱は笑顔で答えた。

「そうだったか!俺てっきり二人がゴールインしてんのかと」

八十九度の坂道を下るレベルの間違いをされていた。

ここでふと気付く。今日もこのクラスは全員出席じゃない。

HRを思い出すと、玖亜くあが何の連絡も無く消えている。

俺はそのことについて訊くことにした。

「そういや今日玖亜さんはどうしたんだろうね」

「・・・知らないぞ?」

まぁそうだよね、って感じで玖亜の出番は早くも終了。

本当ならそこで終わるはずの会話は、俺によって続けられた。

先ほど七動から聞かれた質問に対する質問。それをこいつにしてみたらどうなるんだろう?

俺は一呼吸入れて九熱にたずねた。

「なぁ九熱」

「なんだ?」

「このクラスさ、全員集まることってあんまないの?」

途端、九熱持ち前の笑顔が困惑顔になった。なんだ?どうした九熱?なんで困った顔をしているんだ?

そんな俺の疑問は九熱によって解明され、それによって七動が俺に質問を返した意味の手がかりを知ることになる。


「いや、いつもこのクラス全員いるじゃん」


………→キリトリセン→………


「・・・て、ことがあった」

あの後九熱は呆れながら自分の机に戻り、そのまま授業に入った。

俺は動揺が隠せなくてろくに集中できず、昼になって七動を昼飯に誘って今二人で屋上に居る。

俺の話を聞いた七動はやっちまったな、とでも言うように俺に言ってきた。

「メモ、読んでなかった?」

俺はここで、九熱が来る前にメモに気付いたのを思い出した。

あの時は咄嗟にポケットの中にしまって・・・今の今まで忘れていた。

「あ」

ふぅ、と息を吐いて七動は続けた。

「まぁ今読んでも仕方ない内容よ。その質問他の人にはしないでねっていう」

なるほど、そういうことだったのか。

七動は、こうなることを知っていたのか・・・。

「九熱くんの答え、異常でしょ?」

俺はうなずく。うなずくことしか出来ないほどだった。

「結論から言うなら」

七動はポケットから携帯を取り出し、屋上の地面に向かってプロジェクターを起動させた。

七動が俺に見せてくれたそのままの図が地面に写る。

「このクラスの人間は不規則に消えては戻ってきて、そこから少しの間を空けてまた誰かが消える」

そこまでは自分でも理解している領域だ。しかしそこから先が理解できない。

「しかし消失期間がある間、私と浜崎くんを除くクラス全員がその消失している誰かを完全に忘れている。HRではっきりと休みだといわれているというのに」

そう、今日で言えば玖亜は担任が欠席だと告げているのにもかかわらず、九熱は玖亜を排除してクラスは皆勤だなどと言っていた。普通に考えればおかしすぎる。

「私はこう考えたわ」

七動の言った仮説はこうだ。

彼女と俺を除くクラス全員にはなんらかの仕掛けがあって、それが作動することによって消失期間が生まれる。その間クラスメイトには作動の影響で記憶洗脳が生じ、消失期間を経ているクラスメイトを忘れるのだと。

「あまりに突飛過ぎる・・・けどな・・・」

しかし、案外しっくり来る感じもある。

俺らはそのまま話しているうちに昼休みが終わりに近づいてることに気付き、急いで教室に帰った。

それから三日後。


教室には何事も無かったように玖亜が居座っていた。


………→キリトリセン→………


「今まで一部としか喋ってなかったから気付かなかった」

俺らは再び屋上で昼飯を食べながら話をしている。

「消失期間明けの様子?」

「そう。最初は欠席が多めのクラスなんだなって納得してたから」

なるほどね、と七動は弁当箱からサンドイッチをつまみ出して口に含んだ。


そんな彼女がいきなり突然、次の日に消えることなんて俺は微塵も想像していなかった。


………→キリトリセン→………


そういうことだ・・・?

俺はHRが始まってから冷や汗が止まらなかった。

七動の表を信じるならば、今日から消失期間が始まるのは予想できていたしその通り消失が始まった。しかも四人。

怖七田ふなだ転灯ころび上我うわが。そして・・・七動。

俺はクラスメイトに聞き倒した。他の三人より七動のことを。

しかし全員答えは「知らない」だった。

そしてここで気付く。彼らの言う「知らない」は、何故学校に居ないのかを知らないのではなく、消失した人間そのものを知らない、という意味だということを。

あまりにもおかしすぎる。クラス委員の存在を忘れるか普通?

俺はその日から数日、消失期間が終わるまでろくに何もすることなく過ごした。焦りは隠せないままに。

七動の残した表に七動の名前を書き入れ、今までの線と同じぐらいの線を引き終えた頃。

今日、七動が帰ってくるはずだった。


しかし次の日、教室から佳時かとき弧不壊こふえ家棚けだな樫舵機かしだきの四人が教室から姿を消した。


………→キリトリセン→………


俺以外居ない屋上。七動の姿は消えたまま。

俺は表に四人の名前を書き入れた。

これまで、消失期間が重なることなど無かった。これは、異例。

なんでだ、何で四人ずつ消えていく・・・?今までは多くて三人・・・なぜこの四人が?そしてなぜ今日あの四人が消えた・・・?

俺の頭は今日一番で回転していた。クラスメイトを頼れない。忘れているのだから。

俺はこの異例、表に書かれた二つの直線を見つめた。

これには何か、共通点があるはずだと。


俺は一旦、消失期間中の記憶については触れないことにした。

第一に、消える人間が選ばれる条件。

俺が知っている中で消えたのは二葉と伊田と敏滝と秀五と六析と玖亜と怖七田と転灯と上我と七動と佳時と弧不壊と家棚と樫舵機。その共通点を探す。

性別は言わずもがな違う。じゃあ年齢?これも考えにくい。秀五はすでに誕生日が来ているが佳時は早生まれだと言っていた。違う。出身・・・?いや、この中には電車通学もいるし自転車もいる。違う。テストの高得点者?俺自身彼らの学力は知らないけど六析と樫舵機の授業態度は天と地の差。違うと思う。じゃあ何だ・・・?

俺はどうにか共通点を見つけたくて挙げた名前を消失期間が始まったごとに区分けした。


二葉と伊田と/敏滝と秀五と六析と/玖亜と/怖七田と転灯と上我と七動と/佳時と弧不壊と家棚と樫舵機。


そこで今日消失期間を迎えた四人の名前に引っかかりを感じる。

佳時と弧不壊と家棚と樫舵機。

かときとこふえとけだなとかじだき。

カトキとコフエとケダナとカジダキ。

・・・?

頭文字が、K?


俺はもしやと思い七動のグループを調べた・・・しかし。

怖七田と七動では明らかに頭文字が違うことに気がついた。

俺は頭に浮かんだKを掻き消し、一から考え直した。


怖七田と転灯と上我と七動。

ふなだところびとうわがとしちどう・・・

フナダとコロビとウワガとシチドウ・・・

ダメだ。共通点が見あたらな・・・・・・!?


俺はこの一ヶ月を思い出す。

待て、待てよ?この四人の苗字、いや名前!なにか、後一つでもわかれば・・・!

なぜ俺はこんなに引っかかりを感じている・・・?

転灯が、なぜこんなに気に・・・?

そして、思い出した。

転灯の名前が、転灯七地しちだということに。


フルネーム!!!!


俺は即座に上我のフルネームを思い出す。

上我・・・うわが・・・上我士七しなな

そういう、ことだったか。


俺は七動を含む四人の共通点を見つけたと同時に、先ほど見つけたKの共通点も間違いではないということを確信する。

怖七田と転灯と上我と七動。この四人の姓名いずれかには、七が入っている。

それが何を示すか?

俺は走り出した頭脳を活用し、クラス全員の名前を並べる。

このクラスに七が付くフルネームはこの四人だけ。

五十三という数字の中で共通点を持つ四つ。

これは、トランプだ。


Kの頭文字を持つ人はこのクラスに大勢居る。じゃあなぜあの四人だけの共通点と言えるのか?

あの四人はフルネームに数字が入っていない。それが最大の理由。

トランプの中で数字を持たないのは絵札のジャック、クイーン、キング。この中でKを頭文字に持つのはキングのみ。

佳時と弧不壊と家棚と樫舵機の四人は、このクラスでキングの役割を担っているということになる。


その後、二葉と伊田には二があることに気付いた。

問題は敏滝と秀五と六析、そして玖亜。

これらは今までの消失を『あるトランプゲーム』に当てはめると合点がいく。

敏滝のフルネームは敏滝詩四しよんで四、秀五は苗字で五、六析も苗字で六。

この三人は『あるトランプゲーム』において、【階段】と呼ばれる役だ。

玖亜に板っては、くあをクァとすると頭文字はQ。クイーンだ。このクイーンはソロで出され、【捨て札】とされた。

七の四人とKの四人は数こそ違うものの四枚で構成されるという役は同じ。その名も、


―【革命】―


「大、富、豪!!!!!」

俺はペンで表に大きくそう書いた。

広く知られたトランプゲームで大きな知名度を誇るゲーム。大富豪。

このクラスは消失期間という【ターン】で、場に出ていたのだ。

とすると今までの消失期間の間、今回の間髪入れずの消失期間の重複も説明できる。

カードを出して、他のプレーヤーに出せる役が無かった場合、この場は一旦【流れ】となる。

そうすると場は一新され新しく始める事になる。

今までの消失期間の間は、【流れ】の時間だった。

そして今回、前回と同じ四人が消え、消失期間が訪れた。これは、七で【革命】を起こした人の他に、Kで【革命】を起こしたプレーヤーが居るということ。【流れ】にならなかったから、間は訪れなかった、ということだ。


しかしここで大きな違和感が俺を襲う。

俺は何かを忘れている気がする。圧倒的なルール違反をしている気がする。

【革命】は・・・数の代償を入れ替える。

つまり、その時点まで二が最強を誇っていた大富豪の数が逆転し、最強が三になるということ。

だとしたら、おかしくないか?

なんで七の【革命】の後に、Kで【革命】が出来たんだ・・・?

いや、できるはずはない、できるはずが無いんだ。

出来るとしても、一旦【流れ】にするしか方法は無い。その場合消失期間に間が生まれて七動たちは帰ってくるはず・・・

まさか、まさか・・・!


プレーヤーが、ルール違反を犯した・・・!?


俺はすぐさま友人達と大富豪をしたときのことを思い出す。

あの時一度だけ、俺はルールを間違えて違うカードを出していたことがあった。その時俺はどうした!?

手札を明かしたからって、ゲーム自体を【流し】てしまわなかったか・・・!!?

拙い、だとしたらとても拙い!!!!

俺はクラスがトランプであるということに気付いた。

つまり俺らの生きている世界は、大富豪の上に成り立っている。大富豪が終われば世界も終わり。大富豪が【流れ】れば世界も【流れ】る。


「待て!!!!!!待ってくれ!!!!!!!!!!!!まだ全てを解明していないんだ!!!!!!なぜ消失期間にクラスメイトはその人の記憶を失うのか!!!!!!!なぜこのクラスがトランプと重なって存在しているのか!!!!!!!!!!!このまま消えてしまったら!!!!!!!!!【流れ】てしまったら!!!!!!!!!!俺の、ジョーカーとしての人生はどうな―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


手違いで手札が露呈しちゃったし一回仕切りなおしてもう一回やろうぜ。じゃあルールちゃんと確認してな~・・・

如何でしたか?滑り込みセーフで投稿です。

とても面白かったはずです・・・!

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